断腸亭料理日記2007

久しぶりの、路麺、考察。

7月7日(土)第一食




土曜、で、ある。
毎週土曜、第一食は、路麺の日、なのであるが、

人形町のそば好へいこうと思ったのだが、自転車が、ない。

木曜に蔵前の駅まで乗っていき、忘れていたのであった。

蔵前まで歩く。

この界隈、蔵前から浅草橋、新しい路麺がないか、と、少し見てまわる。

と、さほど新しくはなさそうだが、知らない店があった。
昼は路麺(立ち喰いそばや)で、夜は立ち呑み、
というような業態のよう。

入ってみる。

冷しのそばで、かき揚げをのせてもらう。

メニューには、そばは生で、国内産そば粉を使っている、
というようなことが、書かれている。

生そば、茹で立て、のようである。

結論からいうと、かき揚げが、いけなかった。

ここで、ちょっと考えた。

そこそこ、こだわっている路麺のようなのだが、
これはなんであろうか、なので、ある。

夜は、立ち呑みになる、という。
酒も、考えたものを揃えているよう。
当然ながら、値段も安い。

そもそも、路麺とは、なんであろうか、なのである。
それも、よい路麺とは、で、ある。

東京の路麺(立ち喰いそばや)の特徴はまずは
天ぷらの種類が多いこと。そして、それがうまいこと。
こういうことになるかと思う。

断腸亭路麺ページ

うまいといっても、色々ある。
揚げ立て、揚げ冷まし、ふっくら衣、さっくり衣、
どれでなくてはいけない、と、いうことはない。
どのタイプでも、うまいところは、うまい。

路麺に入って、天ぷらを入れない人は、ほとんどあるまい。
おそらく95%以上のお客は、なんらかの天ぷらを
入れてもらっているであろう。

少し、話がずれるが、そもそも、路麺(立ち喰いそばや)、
と、いうのは、そばや、なのであろうか。この疑問である。

そばを出しているから、そばやには間違いはないのだが、
いわゆるそばや、とはやはり、本質的に、
違っているのではなかろうか。

今の東京の、そばやのタイプを挙げてみよう。

わかりやすいのは、毎度書いている、趣味そば。

趣味そばの説明は長くなるので、下記を参照されたい。

趣味そばのこと

その2、2006

それから、藪や、更級、砂場、など、老舗系。
(神田まつや、などもここに入れられよう。)

それから、フツーの町のそばや。
(藪、などの老舗系の暖簾分けのところもあるが、老舗系との違いは、
価格、と思えばよいだろう。)

こんなところだろう。

それぞれ、そばも、天ぷらも違っている。
そば粉がどうの、打ち方がどうの、というのは、
趣味そば系、が多いだろう。
また、趣味そばには、いわゆる天ぷらを入れた(のせた)
天ぷらそば、と、いうのは、あまりない、というのも
特徴かもしれない。
あっても、別の皿で出てくるところも多いかもしれない。
そばというものは、盛り、にしても、かけ、にしても、
そばを食うもので、天ぷらなんぞを入れてしまっては、
せっかくのそば粉の風味、出汁の味が壊れてしまう、
と、でもいいたい、かのようである。
(ちと、筆が滑った。)

老舗系は、むろんそんなことはいわない。
安くはないが、それぞれにこだわりがあったであろう、
なん十年も練り上げ、形として定着している、麺やつゆ、出汁、
天ぷらそばや、せいろ、を、今は、まあ、淡々と、
といったらよかろうか、作って出してくれる。

東京のよい路麺(立ち喰いそばや)はどうか。

先ほどは、天ぷらについて触れたが、そばの麺のことを見てみよう。

タイプ分けすると、生そば茹で立てなのか、生そばだが茹で置き
(客の回転によって結果としてそうなるものも含めて)なのか、
茹で麺なのか、というようなことになろう。

生そば茹で立て、で、なくてはならないか、という問題である。
結論は、うまい路麺は、必ずしも、生そば茹で立て、に限らない、
と、いうこと。

水道橋三崎町とんがらし、神田和泉町二葉、三ノ輪長寿庵、、
うまい路麺でも、茹で麺を使っているところは、少なくない。
拙亭近所の、小島町アズマも、茹で麺だが、十分にうまい。
茹で麺でも路麺のそば、としては、立派に成立する。

(余談だが、よく、生そばなのに、上記のように、客が立て込んでくると
あらかじめ茹でておいたたものを出す、ということを
評価の対象にしている人がいる。路麺の場合、この批判は、あたらない。
立て込んでいるのだから、しかたがないであろう。
路麺(立ち喰いそばや)の場合、早さは命である。
どうしても、茹で立てが食べたければ、すいた時間にいけばよい。)

路麺は、茹で麺でもよい。
このあたりが路麺のポイント、で、ある。

先も書いたが、路麺の場合、ほとんどの人が、天ぷらを入れる。
天ぷらのタイプは、述べたように、硬い、柔らかい、揚げ立て、
揚げ冷まし、色々あるが、基本的には、
衣が厚く(小麦粉の量が多いと、いった方がよいかもしれぬ。)、
汁に馴染んで柔らかくなったのが、うまい。
これは誰しも異論はないところなのではなかろうか。
(そして、路麺における天ぷらで、もう一点指摘しておきたいのは、
食べ応え、という意味でも、重要な使命を担っている、
ということである。)

ここなのである。
路麺(立ち喰いそばや)のそばの一杯は、趣味そばともむろん違うし、
老舗系とも違う。
この“天ぷらの衣が汁に馴染んで”、、、という、料理、なのである。

よって、この“天ぷらの衣が汁に馴染んで”うまいかどうか、が
路麺を評価する際の、大きなポイントになるのである。
さっくり、でも、ふんわりでも、揚げ立てでも、揚げ冷ましでも
どちらにしても、“天ぷらの衣が汁に馴染んで”うまいことが
大切なのである。
(そういう意味では路麺の天ぷらは、衣は厚くなければいけない、
ということであろう。)
また、これだけ大切な天ぷらであるから、路麺では、
種類も多くなってきた、のであろう。

そして、次に、そばがくる。
順番としては、そばの方が、後、なのである。
もっというと、“天ぷらの衣が汁に馴染んで”を、そばは邪魔をしては
いけない、ともいえよう。
(むろん邪魔をしない範囲で、そばも、よりうまいに越したことはない。)

いくら、国内産のそば粉100%で、しゃっきり、
喉越し良好、であっても、天ぷらがだめ
(例えば、堅すぎて汁に馴染まなかったり)では、路麺としては、
及第点は得られない。そういうことなのである。

なんとなく、そば、あるいは、そばや、の、本質が
少しわかってきたようである。

路麺は、趣味そばとも、老舗系のそばやとも違っている。
その違いの本質は、そばよりも、汁に馴染んだ天ぷらを食わす、
ということにある。
路麺は、そばやでありながら、そばがメインではない、という
不思議なそばや、ということになろう。

これが今日の結論である。


(そんなこと、あたりめぇじゃねーか、と、いう気もするが、
意外に、このあたりは、勘違いをしている人が多いように思う。
そば、及び、そばや、の本質を解明するために、
ここは、ひとまず、はっきりさせておいた方がよかろう。

さて、そばやの考察、続くかどうか、、。)



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