断腸亭料理日記2007

焼蛤

3月28日(水)夜

桜もほぼ、満開、で、あろうか。
気温も上がり、一気に、春を飛び越して、初夏のようである。
東京の最高気温は21℃であったそうな。

今日はなにを食べようか。

この季節で、あれば、、。

蛤、などはどうか?

焼いてみようか。焼蛤。

つゆ、もいいが、暖かくなると、焼き物の季節だろう。

焼蛤といえば、どこなのであろうか。
そういえば、筆者、外で食べた記憶はあまりないかもしれぬ。

「その手は桑名の焼蛤」、と、いうのはあまりにも有名である。
あのへんは、貝がよく獲れる。

名古屋時代には、蛤よりは、大浅蜊といって、
貝殻の横幅が10cmほどもあろうかという、大きな、
三重県産の浅蜊が、名古屋市内でもよく売られていたので、
焼いて食べていた。
うまいものであった

桑名へは、いったことがあったが、焼蛤は食べたことはなかった。
今は、特段、名物、ということもないのであろうか。
あまり見なかったように思う。

焼蛤といって思い出すのは、桑名のものがそういうものだったのかは
よくわからないが、炭火などに網をのせて、そのまま焼いたもの。
貝が開いたときに、貝の身が、跳ね上がった側の貝殻に付いているため、
貝のつゆが、下に落ち、これが飲めなくて、悔しい、
という、アレである。

そして、もう一つ。
焼蛤というと、千葉の海辺の名物でもある。

特に浦安などでは、昔は盛んに作られていたようである。
作られていた、と、書いたが、これはただ焼いて出すのではなく、
串に指して焼き、甘いタレをつけてあるもので、
佃煮、まではいかないが、お惣菜、のような位置付けで
売られていたのである。

今でも、千葉駅の駅弁に、やきはま弁当と、いうのがある。

串に刺した、やきはま、が3本、ご飯の上にのっている。

ともあれ、今日は、焼蛤に決めよう。

帰宅途中、スーパーで蛤を買う。
むろん、スーパーなどでは、中国産、で、ある。
焼くのであるから、少し多目がよかろう。
3パックほど買う。

帰宅。

炭で、七輪。

今日は夜になっても暖かい。
ベランダに七輪と、扇風機を用意する。
扇風機は、煙が部屋に入らないようにするためと、
炭自体を熾すため、で、ある。

まずは、炭をガスで熾す。
この炭は、火鉢の暖房用に買ったものであるが、
きちんと炭になっていない粗悪品で、匂いがひどいので
使っていなかったもの。
七輪で使う分には、問題なかろう。

熾きた炭を、七輪へ移し、さらに炭を足し、
扇風機をあてる。
むろん、渋団扇でパタパタやると気分が出るのだが、
炭をキンキンに熾すのは、どうしてどうして、
たいへんな作業であり、時間もかかる。
扇風機をあてれば、あっという間。
このあたりは、合理性を優先する。

網をのせ、小皿やら、しょうゆやらを用意する。
千葉の、やきはま、に習い、甘辛のタレ(焼鳥用)も用意。
それから、ねぎ、でも焼こうか。

蛤とねぎをのせ、焼く。

ビールなんぞも、呑み始める。

しばらくすると、貝が口を開け始める。

この時点、完全に開ききる前、で、ある。

例の、おつゆ、が、落ちてしまう問題。

よいことを考えた。
この、少しだけ口をあけた段階で、
おつゆ、飲んでしまえばよいのである。
そのまま口を付けるのは、熱いので、小皿に取り、
飲む。

うまい、うまい。

よく、口が開く直前に、ひっくり返せばよい、
というようなこともいうが、そんな難しいことをしなくとも、
なんのことはない、これでよいではないか。

いくつか、これで、おつゆを、飲む、、が、
この作業、段々面倒に、なってくる。

蛤の、つゆが飲みたければ、最初っから、おつゆにすればよい。
そんなにまでして、焼蛤の、つゆを飲みたいのか?
いや、それほどのものでも、ない、と、まあ、
そんなことを考えつつ、そろそろ完全に口を開け始める。


一先ず、この時点、半生くらいで、食べてみる。
ふむふむ、これはこれで、うまい。

しょうゆをたらしてもよいが、
もともと、塩気があるものであるから、そのままの方が、
むしろ、うまいかも知れぬ。

もう少し焼き、普通に熱が通ったものも、食べてみる。

蛤は、やはり、熱が通った方が、よいかも知れぬ。
また、半生だと、貝柱が、離れにくいが、熱が入ると、
貝殻から、自然とはずれてくる。

焼いたねぎは、塩で、食う。

そしてさらに、今日は、よく焼いて、
甘辛のタレを付けたものも。

ふむふむ、よく焼いたものは、これはまたこれで、
別物。なるほど、うまいものである。
これも、タレを付けなくとも、そのままでもうまい。

3パックで、小さなものだが、12〜3個はあっただろうか。
全部食べてしまった。

うまかった。




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