断腸亭料理日記2007

神田祭、下谷祭。

祭の季節と、そば・神田まつや

5月12日(土)夜

さて、土曜日。

昨日は食べ過ぎた、か。

午前、なんとなくグズグズし、12過ぎ、コーンフレークなぞを食べて、
昨夜やりのこした仕事を片付けに、オフィスに向かって自転車で出る。

今日は、お祭りである。
まずは、下谷。下谷神社。
佐竹商店街に近付くと、もう、お囃子が聞こえる。
神酒所(みきしょ)もできている。

昭和通りを渡ると、今度は、神田。
神田明神の神田祭。
神田の明神様も今週がお祭りである。

やはり、秋葉原の通りにも神輿が運び出されている。

今日は、神保町方面はまわらず、一番ゆるそなう坂、と思い、
湯島の聖堂脇、昌平坂を登る。
案の定、比較的楽に登れる。

登って、水道橋へ降る。
天気もいいが、この坂をスーーー、っと、
風を切って、こがずに降りるのは、気持ちがいい。
後は、外濠を一直線。

ほとんど人のいないオフィスで、仕事。

片付けて、16時前、出る。
さすがに、腹が減った。
なにがよかろう。

路麺は?
水道橋、三崎町、とんがらし、は、やっていなかろうか?

飯田橋へ出て、エドモントの脇を抜け、歩行者用の橋で、
日本橋川を渡り、とんがらし前に、、。
あれ。閉まっている。(土曜は14:30まで、のよう。)

どうしたものか。
この近くでは、、ラーメン屋、、まだ一度も入ったことはないが、
斑鳩。有名である。

すごい列。

こりゃだめだ。

どうしたものか、、?

とりあえず、神保町方向へ。
なんとなく、すずらん通りに入ってみる。
『餃子(スヰートポーズ)?、、じゃ、ねぇよなぁ〜。』

ぐるなび

(餃子の気分ではない、ということ。スヰートポーズに、他意はない。)

ここも、お祭り。
お囃子が、流れている。

靖国通りに戻り、小川町から、淡路町、、。

まつや、だ。列は列だが、さほどでもない

ちょっと、路地を入ってみる。
ここは、須田町。

この路地にも、神酒所ができている。

松栄亭も、お祭りモード。

営業はしていないが、店のドアを開けて、中は、宴会状態。

このあたりが、東京下町の祭りの雰囲気である。
この神田あたりは、もう珍しいことになっていようが、
拙亭のある浅草、鳥越祭りなどでは、ペンキやさんだったり、
いわゆる客商売をしていなくとも、道路に面した土間やガレージに
店を広げ、家族親戚、知り合いなどなどが集まって
呑んだり食ったり、が、普通の祭り風景である。

再び、まつや、前。

自転車をとめ、前が二組ほど。列に並ぶ。


まつやにも、提灯が下がっている。

ほどなく入れ、むろん相席で、座る。

お酒、冷(ひや)と、もり二枚。

そば味噌と、お酒、白い形のいい徳利が、お盆に載せられて
運ばれる。

相席をしたテーブルでは、双方は知り合いではなさそうだが、
二組のグループが、既に、できあがり、わいわいと居酒屋状態。

一組は、年配の男性と三十凸凹(でこぼこ)の女性。
もう一組は筆者と同年輩の男性一人。

いや、居酒屋状態以上、で、あろう。
地方の方なのだろうか

「いやー、ここはいいねー」

「この雰囲気がいいよー。酒もいいよねー。菊正宗だけど

ここのは特注なんだよー、、」

なにか、盛り上がっている。

それぞれが、たまたま、仲良くなりやすいキャラクターだったのだろう。
普段の、まつやは、居酒屋に近い雰囲気だが、冷静に考えれば
それ以上でも以下でもない。

なんとなく、そのテーブルの雰囲気に追い付けず、
手酌で酒を呑み、そばを待つ。

菊正宗であったのは知っていたが、特注であるのは知らなかった。
一升瓶から徳利に入れているのを見たので、瓶ではあると思われるが、
樽酒の香りを付けてあるような感じはする。
菊正には、確か、杉の木の香りを付けたものがあったはずである。
その類かもしれない。

そばがきた。
むろん、うまい。
二枚、ぺろっと、食べ。

勘定をして、出る。

店でもらった、団扇。


鬼のような顔が書かれており、連雀町「熊坂」、と、してある。


裏は、丸になにか図案が書かれており、
まつや、をはじめ、神田藪、松栄亭、いせ源などなど、町内の店の
名前が入っている。

これは、ずばり、神田祭のこの町内の団扇。
ご存知かどうかわからぬが、今の神田祭は神輿の祭りであるが
元来は、山車祭りで、明治頃までは、それが続いていた。
(最近も一部復活させてもいるようである。)

山車は番号が付き、町内ごとに出され、そのキャラクターというのか、
山車にのせる人形が決まっていたのである。
そして、ここ、まつやのある町会、今は須田町某町会かと思われるが、
古くは、連雀町という名前で、そのキャラクターがこの鬼のような
熊坂、というものであった。
裏面の図案は、他の町内の人形、で、ある。

ちなみに、熊坂とは、熊坂長範(くまさかのちょうはん)という
昔は石川五右衛門と並び称された、平安時代末の大泥棒。
(多くは、義経とセットの伝説で、義経が元服をして、奥州へ向かう際
義経に成敗された、という。江戸の頃、歌舞伎にもなり、
大人気、誰でも知っているキャラクターであったようである。)

さらに、この人形は、現存しているようである

ともあれ、表へ出て、自転車で戻る。
(途中、吉池で鯵を買う。これは明日の話題。)

竹町あたりまで戻ってくると、朝同様、こちらも、祭り。


下町では、あたりまえ、の情景であるが、

「神社神輿の渡御がありますので」駐禁。

場合によっては、路面に直にこの紙をテープで貼っていることもある。

神輿がくれば、普段は交通量の多い、
春日通りも、浅草通りも、みな止める。
四車線も、六車線もある広い道も、大手を振って歩ける。
都バスも、タクシーも自家用車もみんな、止める。
神輿は、すべてに優先する。

住んでいる者にとっては、なんとなく、うれしい季節である。



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