断腸亭料理日記2008

断腸亭、中東ドバイへ行く その7

引き続き、『断腸亭、中東ドバイへ行く』その7。

さて、そんなわけで、ダイビングからドバイのホテルにもどり、
夕飯。

昨日は、ホテル内のスペインレストランへいったが、
今日は、ホテル内だが、別棟になっている、

タイレストランへ。

夕飯にしても、昼飯にしても、ここには
タイの食い物が随分入ってきているようである。

そういえば、余談であるが、今日行ったダイビングサービスの
従業員は、ガイドも皆、ほとんどがフィリピン人であった。
こちらには、インドなど南アジア以外にも、インドネシア、
フィリピンなど東南アジアの人々も多く、
働きにきているようである。

別棟なので、前に紹介した、バギーでいく。

開店が19時なので、19時を目がけていくと、
まだ、店では開店前の従業員のミーティング中であった。

特に、予約もしていなかったが、快く入れてくれる。
(むろん店には、客は誰もいないが。)

テーブルに着くと、えびせんが出てくる。


ちょっと辛いソースをつけて、食う。

頼んだのは、サテ。

サテ、とは、ピーナッツのソースを付けて食べる、
というのが特徴なのだが、
見た目には、串に刺した日本と同じ焼き鳥のこと。
しかし、サテは、インドネシアの名物料理ではなかったろうか。
一度、バリ島へいったことがあるが、あそこでは、
さんざん食べた。

実をいうと、私は、いま一つ、タイ料理は得意ではなかった。
なぜかというと、生のコリアンダー(香菜、パクチー)が
ご多分にもれず、だめであった。
また、タイ料理に多用するココナッツミルク。
これ自体は、よいのだが、お菓子やデザートでない
普通の料理に甘めのココナッツミルクが入るのに
どうしても違和感があったのである。

それで、東京でも、すすんでタイ料理を
食べたりもせず、また、過去、ダイビングでもタイ国へは
いったことがなかったのである。
(ただし、これも、今はだいぶ慣れてきてはいる。
そこで、今回もタイ料理や、きてみたのである。)

ともあれ、まあ、いいか。
きっと、タイにもサテがあるのであろう。

それから、せっかくタイ料理や、にきたのだから、
トムヤンクン、と、思ったのだが、内儀(かみ)さんは、
同じスープなら、トムカーガイがいい、というので、
トムカーガイ。
(トムヤムクンはココナッツミルクが入らないので、
以前から好物であった。)

それから、グリーンカレー。

サテ。


ご飯。


なんのことはないご飯のようだが、これは香ばしい、
タイの香り米、で、ある。
竹の葉で作った包みに包んで、出されてきた。

グリーンカレー。


ココナッツクリームの入ったご存じのタイカレー。
なかでも、緑色のものを、広く英語ではグリーンカレーというようである。

トムカーガイ。


トム、とは煮る、カーは、タイの生姜のこと、
ガイは、鶏のことだそうな。
これもココナッツミルクがたっぷり。

どちらも、生のコリアンダーは入っておらず、
また、ココナッツミルクも慣れてきており、
十分にうまかった。腹一杯。

さて、次は、翌、朝飯。
例によって、バッフェ。


前回の朝飯と大きな違いはない。麺の太さは違うのだが、
焼きそばがあり、蒸し餃子、の点心がある。
それから、ソーセージ。左上がサーモン。
(サーモンはスモークサーモンとして、ディナーバッフェなどにも
そのままで、あるいは、にぎり鮨などにも使われ、よく出ていた。
ひょっとすると、この再利用かもしれない。
これは、マヨネーズ風のソースで焼いてあるものである。)

そして、右上、これは野菜が入ったスクランブルエッグ。
綴りを忘れてしまったが、ショクシェーカ、あるいはショクシェク
と呼ばれる、アラブ風のスクランブルエッグのよう。
この味は、野菜が入っているだけで、普通のスクランブルエッグと
大きなかわりはない。
(アラブでも地域によっては、ニンニクなどが入ったり、
もっと野菜が多い、というのもあるようである。)

もう一つ。
右下の魚のこと。Smoked Mackerel、と、書いてあった。
毎日出ていたように思う。スモークと多少、酢の味がしたような、、。
味は、鰊、鯵、鯖、、のような、青魚系のもの。
こちらでよく獲れる魚かも知れぬ。

問題は、Mackerel、とはなにか、で、ある。
英語のようだが、調べてもよくわからない。

訳として、鯖の類、鯵の類、鰆(さわら)、果ては、ほっけ、、。
(みんな○○ mackerel のようである。)

なんとなく、青魚であることはわかるが、日本人には
これらは、まったく違う魚ではないか!、で、ある。

毎度海外旅行をすると思うのだが、日本人からすれば、
英語で魚介類を表す言葉ほど、大雑把なものはない。
ロブスターの件も然り。

大きな海老は、伊勢海老だろうが、ザリガニだろうが、
どれも、ロブスター。芝海老のような、ごく小さいエビが
シュリンプ(shrinp)、その中間の大きさは、大正海老も車海老も、
ひょっとすると、甘海老も、みんなプローン(prawn)。
大きさで決めているだけである。

結局、四方を海に囲まれて、古来から魚を食べてきた
我々日本人と日本語。
英語を操る英米人、アングロサクソンは、ドイツ人など、
ゲルマン民族に源がある。
彼らは大陸の民族で魚よりは肉だったから、魚介類は
区別する必要もなく、文化として興味の外、なのであろうか。

いやいや、大陸の民族だから、というのは、いささか飛躍している。
そうでない民族もいるような気もする。
例えば、中国人(漢民族)はどうなのであろうか。
後日もう少し、考えてみることにするが、とにもかくにも、
アングロサクソンにとって、魚介類は、興味の外である、
ということは確かであろう。

そうすると、そもそも、魚介類について英語を通して考えること自体、
ナンセンスなのであろう。

いや、それ以上というのか、それ以前というのか、
いわれ尽くされているが、魚介類だけではなく、
英米、アングロサクソン人は、我々日本人だけではなく、
フランス人、イタリア人、中国人などと比べても、
明らかに、違っている。彼らは、食いものそのもの、
そのうまいまずい、ということに、そもそも興味がないのであろう。

有名な林望先生などは、彼らは食いものの味よりも、
そこでの会話の方に興味がある、というように書かれている。
むろんどちらが優っている、ということではなく、
これこそ、とりもなおさず、文化の違い、ということなのである。

妙な比較であるが、かの断腸亭、永井荷風先生などもそう。
浅草の尾張屋などで、いつも、にこりともせず、同じものを頼み、
食べていた、という。これは、断腸亭先生が、食べ物について、
うまいまずいを言ってはいけない、という武士の家の“文化”のなかで
育ったから、という。日本にもそうした文化はあった、のである。

(となると、先の魚介類の件にも関連するが、やはり、
どうして、そうなったのか、ということが今度は疑問になってくる。

アングロサクソンは言語を使ったロジカルなコミュニケーション文化であり、
日本のコミュニケーション文化は、あうんの呼吸、察する、などというが、
非言語コミュニケーションであると、一般には、いわれている。
しかし、日本でも武士階級は、やはり、言語を使った
コミュニケーション文化を持っていた、ともいわれる。
(つまり、今の日本人にはどちらも理解できる。)
この共通点。(ロジカルだと食いものに興味がなくなる?)
このあたりが鍵になるかもしれぬ。これも課題にしよう。)

相当な余談になってしまった。

ともあれ、そんなわけで、正体不明の、Mackerel、で、ある。

といった、ゴタクを並べているうちに、
長くなってしまった。

『断腸亭、中東ドバイへ行く』7回目、今日はここで終了。
まだ続く。



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