断腸亭料理日記2008

箱根・塔ノ沢・福住楼 その1

12月27日(土)夜

年賀状のコピーをして、3時前、予定通り、箱根に向かって出る。

毎年恒例の暮れの年賀状書き。
箱根の老舗温泉旅館、福住楼行き、で、ある。

スタンドに寄って、給油。

ハイオクで120円。
(都心のため多少相場よりも高いのか。)

しかし、それにしても今年は、ガソリンの値段も乱高下した。
私の場合、ほとんど車に乗らないので最後に入れたのは、
税金が安くなった4月だったと思われる。

首都高は箱崎からのる。

銀座から環状線外回り、多少、車の数は多いが、
よく流れている。

渋谷、三茶、用賀から東名。
天気もよい。西に向かって走ると、富士山がきれいに見える。

厚木で降りて、小田原厚木道路。
こちらもすいている。

終点の箱根口。
国道一号に出て、箱根湯本をすぎて、
橋を一つ、二つ。塔ノ沢は、すぐである。
中でも福住楼は、その二つ目を渡ったところ。

やはり、二時間で着いた。

駐車場に入れて、荷物を持って、旅館へ。


玄関は門松、注連縄など、既に年越しの準備が整っている。

名前をいって、挨拶をし、部屋へ案内される。
桜の五番。
この部屋は初めてかもしれない。

早川沿い、三階。

ここの建物は、国登録の登録有形文化財。
古い日本旅館の三階建てというのは今では珍しいそうな。

しっかりした木の、磨きこまれた階段を上がり、部屋に着く。

なかなかよい部屋である。

六畳の次の間付き。

三階で、福住楼では最も見晴らしのよい部屋という。
主の部屋は二方が窓。

主室、正面の窓の硝子がまた、よい。
むろん和風なのだが、くもり硝子に、
雲型に丸みのついた、透明の硝子。
日本建築にガラス窓が取り入れられた
初期の硝子障子(がらすしょうじ)という。


手前に早川の渓谷が見え、屋根越しに
国道、橋、向こう側に山。



もう一方の窓は、縁側風のスペースがあり、
籐の椅子が置かれている。


こちらは全部透明の硝子。面積も大きい。
窓枠やら手前の手すりのデザインが、
なんということはないが、またよい。
(この部分、福住楼のHPの説明では、
『手摺りの肘木受けは宝厳院のすだれ吊りと同意匠で見事な細工』
という説明が書かれている。宝厳院というのは京都嵯峨嵐山の
天龍寺の塔頭、だそうである。)

主部屋の床の間。
二畳もある。


掛け軸は絵。
飛んでいるつがいの鴛鴦(おしどり)が描かれている。
手前に木の根っこを彫刻した鷲の置きもの。
奥の棚に、青い香炉。


その左側が内側に向いた、障子窓。

ここは、脇床、と、いうようである。
細かい模様の入った格子、上側が丸くカーブしており、
さらに上に、欄間。

次の間。


入口は上と下が襖で、真ん中が障子。
この襖の柄も障子との取り合わせがよい。
白と赤の大きめの市松模様。

赤、と、書いたが、正確には赤ではない。
紫と桃色の中間で、ちょっと濁りが入った感じであろうか。

なんというのだろうか。
紅の系統というのだろうか。
きっと名前があるのだろう。

和の襖などには、微妙に違った色味のこの系統の色があるが、
私は好きである。
なんとも色気がある。


次の間の隣の部屋側には屏風。
これもちょっと薄い同系の色と白のツートン。

次の間には、着物を掛ける、衣桁(いこう)と鏡台。

床の間を背にして座る。
仲居さんの挨拶もそこそこに、ビール。

毎度毎度、ここにくるたびに思うのだが、
今の時代、これだけの和の部屋に手足を伸ばして
居られる、と、いう機会はなかなかないだろう。

一泊なん万という高級旅館でも新築では、いくら凝っていようが
こういう趣(おもむき)はない。

そして、ただ古い、だけではない。
デザインが粋、だと思うのである。

建築史的にいうと、やはり京都の桂離宮にさかのぼる、
数寄屋造りだそうである。
それも京都の職人を呼び寄せ、木や竹の材料も
金銭に糸目をつけずに、そうとうに珍しいものを取寄せ、
吟味してあるという。

この建物は大正から昭和初期か。
箱根、というのは、東京からの湯治場、避暑地。
古き良き時代、というのであろうか。

文字通り文化財に泊れるのである。
それだけでも、ここにくる価値はあるだろう。

ビールを呑み終わって、風呂。

この時間の男湯は、こちらの丸い風呂。


時間でもう一つある大きな岩風呂と、
この丸い風呂が、男湯と女湯が入れ替わる。

手足を伸ばして、気持ちがいい。





今日はここまで、続きは明日。



福住楼


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