断腸亭料理日記2008

かんだ・やぶそば

2月17日(日)第二食

神田藪蕎麦、または神田藪そば。

正しい店名は、カナで、かんだやぶそば。

「ぶ」はひらがなの「め」に濁点を打ったような文字。

(これは変体仮名、と、いうが、この「め」、に
濁点を打ったようなもの、字のもとは、婦という字。
この他にも、うなぎや、などで見ることがあるが、奈からできた、
志をくずした、、など、多くの変体仮名がある。
戦前は一般にも広く使われていたようである。)

ともあれ、かんだやぶそば。

なんで、かんだやぶそば、にいくことになったのか。

いや、その前に、この日記を長く読んでいただいている方は
お気付きかもしれないが、この日記でここを書いたのは
断腸亭料理日記初期版、99年の一度だけ

並木、池の端と並んで、三藪(さんやぶ)と呼ばれているのに
なぜ書かないのか、と思われている方もあったかもしれない。

池の端

並木

99年以来、書いていないのは、
行っていないのではなくて、書いていない。
その後、なん回か、行ったのだが、
あまり気分のいい思いをしなかったから、
行かないようになった。まあ、そんなところである。

それがなぜ、突然、かんだやぶに行ったのか。

たまたま仕方なく、入ることになった、というのが
本当のところである。

午前中、TVを見ていると、なにかで、
池袋の大勝軒のことをやっていた。
これをみて、ああ、久しぶりに、大勝軒のもりそばを
食べたいな、と、思い立ち、日曜日に営業をしている
最寄の大勝軒を調べると、お茶の水、というのが出てきた。

よし、今日も、徒歩でいってみようと、思い、
稽古をしながら、てくてくと、出かけてみた。

場所は、神田小川町、靖国通り沿い、ちょうど、ビクトリアの前。
ビルの二階。拙亭から、30分。
来てみると、なんと、休み。(定休日としてあった。)
(ここは、06年開店で、さほど時間が経っていない。
Webなどに載っているのは、定休日が定まっていなかった
というような事情なのであろう。)

あ〜あ。

ということで、善後策を考える。
この界隈、他のラーメンやも少なくないが、飛び込みで入って、
はずすのも、おもしろくない。
来る道すがら、須田町、そばのまつや、の前を通りかかったが
休みであった。(まつやは日曜は休み)

と、いうわけで、、、かんだやぶそば、に入ってみるか、
と、いうことになったのである。

15時頃。
昼時ではない、よい時間であろうというのもあった。
並ぶこともなかろうし、混んでいる時は、
入ってもろくなことはない。
以前の気分の悪い思いとは、明確には覚えていないが、
大方、そんなことであったと思われる。

神田須田町のこの一画も以前に比べると、
戦災で焼け残った、古い建物もだいぶ少なくなったが、
あんこうのいせ源やら、老舗はまだある。

やぶそば、は、いせ源などよりも、奥、というのか、
秋葉原側。

板塀に門。庭があり、敷石を経て店がある。
これだけで、並木、池の端ともまた違う趣である。
格式がありそうな、かなり、かまえてしまう。

硝子戸を開けて入ると、待っている人もなく、
テーブル席に座れる。

ここは並木、池の端と比べても広い。
なん席ぐらいあるのであろうか。
わからぬが、庭に面して、入れ込みの座敷もある。
庭側二方は、すべて、硝子窓。
眺めも悪くない。

お酒お燗と、、、なにしようか。

せいろ、ではなく、温かいのがいい。
歩いてきたので、身体は随分温まっているが、
やはり、温かいものにしよう。

季節もので、蛎(かき)そば、があった。
上野藪や、池の端でもよく食べているので、
これでいってみよう。

待っていると、帳場に座った女将さんの、
注文を通す声が聞こえる。
この声は、有名である。
よく通る声で、独特の抑揚を付けて、
「せいろう〜、にま〜〜い、、、」。
池の端も、近い声を出すが、多少違っている。

酒がくる。


お盆はなしで、お銚子は、真白でずんぐり。
形は並木に近いかもしれないが、袴は、丸い塗りのもの。
そば味噌。

酒は、ここも菊正、香りから並木同様、樽酒であろう。

そば味噌は、ちょっとピリッとしている。

ちょうど、一本呑み終わるタイミングで、
蛎そばがきた。


わかめがのっている。
小ぶりな蛎が数個。

上野は蛎を炒めていたり、池の端は、つゆに蛎の味を出していたり、
だが、ここは、そのどちらでもないのかもしれない。

つゆは、濃くも薄くもない、よい塩梅の普通のつゆ。

今日気が付いたのだが、ここのそばは色が、
緑がかっているように見える。
これはなんであろうか。いつもこうであったか。
よくわからぬが、うまい。

熱いつゆと、蛎で、温まる。

うまかった。

帳場で、勘定をして、硝子戸の外へ出る。
店内は禁煙だったので、ここに置いてある灰皿の前に立って、
庭と門を眺めながら、一服。


吸っていると、店の中から、呼ばれた。
勘定が間違っていたらしい。

他の人と間違われ、少し多くとられていた。
「まことに、あいすみません、以後十分に気を付けます。」
と、女将が丁寧に謝る。

別段、怒ることでもないので「はいはい」と
払いすぎた分のお金を受け取り、もう一度店を出る。

ここは、店が大きい分、客のさばきもたいへん
なのかもしれない。

好みとすれば、池の端や、並木程度の、小ぢんまり、
が、よいが、ここも、そばはうまいし、声もよい。
わるい店ではなかろう。



かんだやぶそば




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