断腸亭料理日記2008

合羽橋・太助寿司

3月27日(木)夜

さて、数え間違いも多々ありながらも、
一応のところの、記念すべき、断腸亭料理日記再開の
2004年3月から、週5号、号を重ねてメルマガ通算1000号が、
太助寿司、で、あるのは、偶然ではあるが、
縁、が、あるのであろう。

19時、少し早目に終わったので、太助寿司に行ってみようか。

一応、電話を入れてみる。

稲荷町で降りて、歩く。

19時半頃、到着。

カウンターに。

ビールをもらい、まずは刺身、から。
白身は、鯛、たこに、鰹。

鰹がうまい。
引き続き、初鰹、房州。
あたりまえの話であるが、先日自分でおろしたものとは
段違い、で、ある。
焼き物、金目のカマ。

後で、握りでも出るようだが、銚子のもの。
ここから、握り。
予告通り、金目。

いつものように、焼いた霜降りのもの。
時期としては、まだ少し早いのか。
脂はさほどでもないが、これはこれでよい。
すみいか。

これは江戸前。
プチッと、歯が入るときの、感覚と、
あまみと、すみいか独特の香り。
やはり、うまい。
うに。

今日は、函館の、むらさきうに。
みる貝。

まぐろ。
壱岐もあるが、中トロと、大トロとどっちがいい?
と、聞くので、たまには、大トロ!、と、いうと、
勝浦。
勝浦といっても、那智ではなく、房州勝浦。


なかなか、上品な脂、で、ある。

まぐろで、勝浦といえば、紀州の那智勝浦が頭に浮かぶが、
安房勝浦でも多少は、あがるようである。


次は、さより。

これも、先日自分でおろしたが、
まあ、大きさが違う。

小肌。



これは、三河湾。
今の時期、小肌はだいぶ大きくなっているが、
これは、なかなか、うまい。

最後は、いつものように、穴子。

なんだかんだいっても、やはり、
太助は、この穴子、で、ある。
熊笹で炙り、香りを付け、ぷっくりと、肉厚。
口の中で、とろける。

今日も、うまかった、のだが、
親方と、少し話をしていて、考えたことがあった。

まあ、前から、考えていたことではあるのだが
鮨や、というのは、技なのか、ねた(素材)なのか、
という問題。

両方である、というのが結論なのだが、
そうそう、簡単なことではない。

ご存じのように、江戸前鮨、というのは、
穴子やら、小肌やら、ヅケまぐろ、だの、
煮たり、〆たり、漬けたり、いわゆる“仕事をしたもの”を握る、
というのが元々の姿であった。
(今でも、完全にこの形を続けているのが、
浅草弁天山美家古寿司である。)
これは、江戸前鮨の始まった、江戸、文化文政期から、
戦後、昭和30〜40年代、で、あろうか、
冷蔵設備が普及するまで、百数十年かかって、
完成されたもの、で、ある。

そして、その後、現代まで、たかだか30〜40年程度。
今日、太助寿司の親方もいっていたが、親方が修業をした頃は、
まだ、基本的には、以前の“仕事をした”ものを、習っている。

つまり、いまの生魚を握るような形になってからの期間は
圧倒的に短いのである。

従って、以前の江戸前の技とは違う、生魚を握ってうまい、
という技、は、まだまだ、未完成。
それぞれ、工夫の途上なのである。
築地でなん枚しかない、というような、最高のねたを
使っても、刺身で、食うのであれば、別段、
鮨やである必要はない。割烹でもなんでもよい。

(ただし、鮨やを、そういう存在にする、と、いうのも
客としての選択肢であり、店の選択肢でもあろうが。)

しかし、前に、NHK「ためしてガッテン」でやっていたが、
鮨、というのは、まったく短時間の作業であるが、
職人が、握る、ということで、アミノ酸の量が増える、
ということが科学的に確認されているようである。


これが、技、であろう。

すきやばし次郎の小野二郎氏も、握ってうまい、ということを
追及している、というようなことを、いっていたように思う。
生魚であっても素材の鮮度、品質、拵え方、お客の口に入る時の
温度、に至るまで、すべてが、握ってうまい、を目指す。

生魚を握ってうまいものにする技。

むろん、生魚と同様に、昔の“仕事をした”ねたも
うまい鮨を握る職人の選択肢の一つ、で、あろう。
(穴子や小肌のように、以前の技の方が、
うまい、のであれば、それを選ぶ。)

高価なねた、希少なねたであればよいのではないし、
また、昔の方法だけがすべて、というのでもない。

最良の(もしくは、リーズナブルな)素材を、
どう拵えて、どんな状態で、客の口に
入れさせるのか、を、磨くのが、本来、
現代の江戸前鮨職人というものなのであろう。





合羽橋・太助寿司
電話番号:03-3841-4811
住所: 東京都台東区松が谷2丁目26−6



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