断腸亭料理日記2008

京都先斗町・炭火割烹・いふき・その4

先斗町の炭火割烹・いふき。
昨日は、青豆の豆腐から造り、など四品。
今日は、焼きもの、から。

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さて、次。
今度は、焼きもの。


さっきから、炭で若い衆が、焼いているのが
見えていたので、気になっていた。
パタパタと団扇で煽いで、灰なども舞っていたのが
どうにも、うまそうであった。

これは稚鮎の一夜干しと、ホワイトアスパラ。
シンプルな皿に、むしろ、そっけなく盛られているのが
また、よい。

稚鮎は、湖産(こさん)だという。
鮎、という魚は、ご存じの通り、川で生まれた後、
一度、海に出て育ち、再び川に遡上する。

しかし、湖産の鮎というのは、
生まれるのは琵琶湖に流れ込む川で、
琵琶湖に出て育ち、そのままあまり大きくならないという。
そして、この湖産の鮎は、はらわたが食べられないので、
開いて、一夜干しにする、と、教えてくれた。

なかなか、乙なもの、で、ある。

ホワイトアスパラは、九州産という。
国内では北海道産が有名だが、これは、まだで、
最近は、九州などでも作っているらしい。

炭で焼いているので、とてもほっこり。
中は、ちょうど、蒸されているようなことになるのであろう。
焼き方にしても、細かい仕事をしているのであろう。

次に、また、焼きものなのだが、
牛肉か、魚、どちらがいいですか?と、いうことで、
魚、のどぐろ、を頼んだ。
(魚はもう一種、選択肢があったのだが、
なんであったか、忘れてしまった。)


この状態で並べられ、
思わず、え、しょうゆは?
と、聞きそうになって、言葉を呑みこんだ。

京都で、そんなことをいってはいけない、のだろう。

焼き魚、と、いえば、無条件にしょうゆを掛ける習慣を
持っていることを、改めて、思い知らされた。

スダチと、茗荷が添えられ、小皿には、脂の口直しに、
ということで、大葉を刻み込んだ、酢味の大根おろし。

スダチを絞って、食べてみる。
むろん塩味はきちんと付いており、
このままでよい。
しかし、この、のどぐろの、脂のあること。
うまい、うまい。

酢のおろしも、よい塩梅である。
こういうのが、行き届いている、と、いうのであろう。
いう通り、脂の多い、のどぐろの口直しには
絶妙、で、ある。

次。


酢の物、と、いっていいのであろうか。

上には、西京味噌。
薄い、酢味噌、かもしれない。

真白な大きめの鉢に、小さく盛られ、美しい。

青いのは、こごみ、と、その下に、あぶらめ、
さらに下の、白いのは、山芋。
下のつゆは、出汁の入った酢、で、あろうか。

山菜というのは、やはり、私には、馴染みが少ない。
こごみは、わらびに似たもの。
あぶらめは、こしあぶら、とも呼ばれ、
たらの芽に、似たもの、程度の知識。

ここで一通り、おしまい。

後は、牛肉の焼き物など、ご希望でしたら?
ということ。

うまいので、いくらでも食べられそうだが、
いじきたなく、食べすぎるのはいけなかろう。

やめにして、ご飯。


この写真で、ご飯の表面がおわかりになるだろうか。
艶がある。

昨年、某京都の料亭のご飯の炊き方、
と、いうのをやってみた。
やはり、あれに近い。

東京の硬めの飯、からすると、柔らかめ。
蒸らさないで、飯の表面が艶々と濡れているような
状態。

味噌汁は、赤だしだが、実(み)は豆腐。
くみ上げ豆腐のように、柔らかい。
見てわかるように、切り方も、無造作、というのか、
不定形で、大きい。

それから、漬物。

京漬物のようなものではなく、意外なことに、
これは、なすと、きゅうりと(なにかの)葉っぱの古漬け。

そして、右上の小さな皿にちょこんとあるのが、
筍の炊いたもの。

(脱線するが、煮物、の、こと。
東京では、煮る、というが、関西では、
なぜ炊く、なのだろうか。
東京で、炊く、は、米を炊く場合にしか使わない。)

ご飯も含めて、古漬け、赤だし、と、

どれもうまい、の、だが、特に、筍。

上に、緑色の小さなものが見える。
これがポイント。
聞いてみると、これは、山椒の花、
花山椒(はなざんしょ)、と、いう。

実の、きつい香りではなく、同じ山椒でも
ほんのりと、上品なもの。

説明してくれたのは、焼きものを担当していた、
若い衆で、市場に出回るのは、ほんの一瞬であると話す。

ついでに、若い衆は、ご飯も担当しているのか、
是非おかわりを、と、勧めてくれた。
言葉に甘えて、一膳、おかわり。

ひゃー、うまかった、うまかった。

抑えたつもりが、やはり、食べすぎてしまったか。

番茶を飲みながら、水菓子。


残念ながら、橙色のものが、なんであるか、は、
むろん、聞いたのであるが、忘れてしまった。
確か、かかっている、ゼリーのようなものは、
はちみつの、なにか、であったのだが、、。

お勘定は、酒も入れて、¥12000、ほど。

これは、私は、安い、と、思うのであるが、
どうであろうか。
東京であれば、酒も入れて、¥20000
もしくは、それ以上でも、成立するのではなかろうか。
東京が、高い、ということか。

ともあれ、うまかった。
店を出る。

と、最後に、またびっくり。

なんとしたことか、ご主人が、店の外まで出てきて、
ありがとうございます、と、頭を下げて、
見送ってくれる。

こちらは、一人の、それも、ふっときた、お客である。
ここまでするとは。
この店だからなのか、これが京都らしいのか、わからぬが、
驚き、で、ある。

はあ、こんなこともあるのか、で、ある。

いずれにしても、いい気分で、先斗町の路地へ出る。

帰りは、、。

四条の通、まで出て、タクシーで、ホテルまで。




炭火割烹 いふき
〒604-8015
京都市中京区先斗町四条上がる21番路地
075-211-3263




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