断腸亭料理日記2008


11月2日(日)夜

さて、江戸東京博物館から、御徒町へ。

御徒町は、むろん、魚を見に行くため、で、ある。
両国から、御徒町へは自転車で15分程度。
厩橋を渡って、春日通りではなく、車の少ない
一本北へ上がった道を通り、一度、元浅草のマンションまで戻る。
さらにそこから東へ向かい、清洲橋通りを渡り、真っ直ぐに、
キムチ横丁の横を抜けて、ドトールのある昭和通りの信号までくる。

昭和通りを渡って、AM/PMの路地を入る。
アメ横の、いつもきている、魚や。

と、ひと渡りみるが、目ぼしいものはない。
しかたがない、吉池にまわる。

再度、自転車に戻り、吉池。

なんとなく、こちらも、ものが少ない。
時間が遅いせいか、ひょっとして、今日は、河岸が休み?

すると、タイムサービス、といって、鯵の安売りをしているのに
目がとまる。
山口の鯵、という。
ちょっと大きいものだが、一本150円。
これはよさそうだ。
4本買う。

帰宅。

こんな感じである。


30cm弱で肉付きもいい。

まずは、おろしてみよう。
二匹、三枚までおろし、皮も引く。
なかなか、脂もありそうである。
鮮度もまあまあ。
たたきや、なめろう、ではなく、刺身でよいだろう。

いつも買う程度の大きさの鯵だと、
(頭から尻尾に向かって)縦に
長く切ってしまうが、今日の大きさならば、
普通に切ってもよいだろう。

しょうがもおろす。


予想した通り、うまい。
鯵というのは、ここまで味が違うのか、というくらいである。
鮨やなどで食うレベル、と、いってもよいだろう。

基本的に、鯵にしても鯖にしても、鰯にしても
いわゆる光もの、というのは子供の頃から好物である。

しかし、漁師でもなく、海辺に住んでいるわけでもなく、
釣りをするわけでもなく、そうそう
高いものを食べてきたわけでもない。
したがって、いつも食べてきたのは、刺身で食える、
と、魚やにいわれたレベルの、まあ、最低に近いところのもの、
であったのであろう。
そういう意味で、ある程度、生ぐさいものも食べてきたし、
そんなもの、とも思ってもきた。
もう少しいうと、多少生ぐさいくらいが、光ものらしい、
とも思ったりもする。

しかし、ある程度、自分も歳を取り、色々なものを
食べてくるうちに、そう、生ぐさいものだけでもない、
というのも、段々にわかってきた、つもりではある。

そんな背景で、今日の山口の鯵は、なかなかのレベル、
と思われる。

この一匹分を、一人で全部食ってしまう。
(内儀(かみ)さんも一匹分。)

さて。
あと二匹、残っているわけだが、
もう一匹、食べたのは、この夜中。

今度は、たたきにしてみよう。
ということで、三枚におろして、皮を引き、
細かく切って、ねぎのみじん切りと、合わせる。
やはり、おろししょうがと。


食べてみる。

と。

うーん。
あっという間、に、なのか、この一本だけが、なのか、
わからないが、先ほどのものと、随分と違う。
むろん、食べられぬことはないが、やはり、生ぐさい。

光もの、というものはやはり、相当に、
むずかしいものである。

なん回か自分でもさばいてみた、松輪の鯖。
鮨種として、東京ではブランドである。
これは、あがった時から扱いが違うという。
その後、セリ、流通過程と、いたまぬように、
味が落ちぬように管理をしている。
また、もとがよくとも、その後の管理で大きく変わってしまう。
そういうこともあろう。
それだけ、光もの、というのはデリケートな
存在なのである。

すきやばし次郎の小野二郎さんも、鯵はよいものがないと、
出さない、というようなことをいっていたような
記憶がある。(もともとよいものの上に、よい管理、
よいさばき方をしたもの、でなければ、出せない、
ということであろう。)

しかし、その割に、安い。
鮨やでも、漁師さんも、であろうが、
値段はなかなか取れない。

光ものなど大衆魚と、軽く見られがちであるが、
よりよいものを求めると、高級魚以上に
たいへんなもの、なのであろう。

さてさて、最後の一匹。
月曜日に開いて、塩をし、ベランダに干して、干物にした。


大きいので、見栄えもする。

食べたのは、さらに翌日。
むろん、焼いて食ったが、なかなか、うまかった。







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