断腸亭料理日記2008

秋刀魚飯

9月1日(月)夜

今日はいきなりだが、引用から。

***

 秋刀魚は塩焼きにかぎるが、戦前に浅草・千束町の小料理屋で、

「ちょっと、旨いもんですよ」

 と、秋刀魚飯を出されたことがある。

 いま、よくおぼえていないが、秋刀魚を蒲焼のようにしておいて、

釜飯用の小さな釜の飯がふきあがったところへ入れて炊く。

 そして、私たちの前へ出すとき、手早くまぜ合わせ、もみ海苔を

かけて出してくれた・・・ようにおもう。

 うまかったおぼえがあるが、これはちょいと家庭ではできない。

できぬことはないが、うまくはあがるまい。

***「味と映画の歳時記」池波正太郎著 新潮文庫


と、先生は書かれているが、
私のは、家庭であるが、うまい、秋刀魚飯、で、ある。

初めて、秋刀魚飯を作ってみたのは3年前である。

秋刀魚というのは、いうまでもなく、日本の秋を代表する、
魚、で、あろう。安いし、うまい。
しかし、秋刀魚といえば、先生も書かれているとおり、
『塩焼きにかぎる』。まあ、これは誰が考えても
そうであろう。

しかし、塩焼ばかりでは、おもしろくない。
そこで、エッセイも含めて、池波作品の中に秋刀魚が
登場しないかと、探したら、冒頭の文章に行き当たったのであった。

秋刀魚飯は、ありそうで、ない、メニューであろう。
まあ、魚のご飯自体が少ないのだが、
まだ、鮎飯(これも池波レシピだが)などというのは、ある。

しかし、秋刀魚を飯に入れるのは、脂っこすぎるか、
あるいは、どうも小骨が邪魔になりそう、など、
あまりイメージではないかもしれない。

しかし、とりあえず、やってみたら、かなりうまかった、
のである。

甘くない方がよいかと、
エッセーにある、「蒲焼のようにしておいて」は、やめて、
しょうゆ味。

鮎飯のように、はらわたを抜き、素焼にした秋刀魚を、
酒としょうゆで水加減をした米に入れ、炊き込む。


味付けは濃い目。
しょうゆも、酒も多目
(もちろん、限度はあるが)がうまい。
そして、もう一つの注意点は、酒を入れて炊き込むご飯は皆そうだが、
浸水は十二分にするのも、鉄則。
(二時間以上、余裕があれば、三時間。)

炊き上がったら、秋刀魚を取り出し、
中骨を取り、身をほぐし、混ぜ込む。
小骨は、なんら問題ない。

もみ海苔をかけて、食う。


これは、かなりうまい、のである。
秋刀魚の脂が、飯に染み込み、まさに、堪えられないうまさ。

塩焼きに飽きたら、
是非是非、皆さま、お試しあれ!。

断腸亭作、秋刀魚飯、うまいぞ。





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