断腸亭料理日記2009

断腸亭、モロッコへ行く その8

断腸亭の夏休み、モロッコへ行く、その8。

やっと、おしまいが近づいてきた。
お付き合いをいただいた方には、御礼を申し上げたい。

普段、書いている内容と、随分と違うので、
おそらく、あー、まだ続いているか、と、毎日
思われた方も少なくなかったのではなかろうか。

今日は、まずは、前日、休みで入れなかった
日本料理のレストラン。

今日は、ホテルから予約を入れてもらい、
かつ、ホテルから、ダイレクトにタクシーでいく。
前にも書いたが、カスバという地域。

レストランの名前は、TATCHIBANA(橘)と、いう。

TATCHIBANA
Restaurant Japonais a Marrakech

38 derb Bab Ksiba,
Kasbah, Marrakech-Maroc
Tel:05-24-38-71-71
http://www.tatchibana.com


日本人の料理人がやっているらしい。

8時に予約。


店に入ると、フランス人なのか、わからぬが、
白人のマネージャーらしき男性がにこやかに、
英語で迎える。

やっぱり我々が一番乗りのよう。

明るめの照明で、提灯やら、広重の版画やら、
日本ぽいもので演出されている。


アラカルトもあるが、鮨の入った、
セットをもらってみることにする。
(300ディルハム=4000円程度)

ビールをもらう。

前菜。


野菜の煮もの+マリネ、のようなもの。

メイン(と、いうのか、定食。)


鮨に焼鳥、天ぷら、豆腐、味噌汁。
豆腐には、胡麻のたれをかける。

こんなところで、鮨の刺身、あるいは、豆腐などは、
どうやって調達しているのだろうか。
魚は、なんだかわからないが、白身、の、ようである。
今は、魚は冷凍もあるのだろう、フランスからでも入ってくるのか。

そもそも、こんなところに、なぜ日本料理やを開こうと思われたのか。
食べてみると、鮨にしても天ぷらにしても、修業をされた
板前さんのようである。やっぱり、フランス経由であろうか。

食べている間にも、お客さんはどんどん入ってくる。
みな、フランス人。家族連れでバカンスにきている人達のようである。
やっぱり、彼らにも日本食は人気、なのであろう。

セットの最後のアイスクリーム。


勘定をして、今日はすんなりタクシーをつかまえて、ホテルまで。

翌朝。


内容は、まったく同じ。
日本人は、違ったものを、とっかえひっかえ食べる、という
食生活をしている。
これに対して、モロッコ人にしてもフランス人にしても
同じものを毎日食べるということに、日本人ほど
抵抗感が、ないのであろうか。

おそらく、そうなのだと思う。
抵抗感がないという以上に、好んでそうしている、
ということもあるのではなかろうか。
日本でも流行りのスローライフは、イタリアから、始まった
のではなかったろうか。

こんな話を聞いたことがある。

今の、日本の農作物というのはおそろしいくらいに、
品種改良がされている。米国の遺伝子組み換え、
というのではなく、味、で、ある。
トマトだったり、リンゴだったり、イチゴなどもそうだが、
ひと昔では考えられないくらい、甘くなっている。
おそらくこの品種改良の技術は世界でも有数なのであろう。
実際に、リンゴにしても中国をはじめ、お金のある、中東でも
日本のものが高値で売れている。

しかし、こういう甘くなったりしている農作物は欧州では
あまり受け入れられないというのである。
彼らは、トマトにしても、自分達が先祖代々作ってきた作物の味を
とても大事にしており、それでなければ、認めない、と。
おそらく、そういう考えがスローライフ運動につながっているの
ではなかろうか。
つまり、彼らのスローライフ運動は、単なるうわべの
ファッションではなく、自分達のアイデンティティーを守ること、
そのものなのであろう。
日本でやるなら、イタリア人と同じものを作ってたべることではなく、
我々の先祖が江戸の頃に食べていたものを作って食べることに
なるはずである。(私は、そういう生活をできるだけ送りたい、
と、思ってはいるのだが。)

話が、飛んでしまった。

いろんなものをあれこれと、つまみ食いしたいというのも
ある種、我々日本人の文化で、それがよい、こともある。
しかし、本来自分達がどこからきたのか、拠(よ)って立つ
ところもしっかり踏まえなくては、世界から
馬鹿にされるということも忘れてはいけない。


ともあれ。

翌日。
またまた、午前中は、プールサイドで、のんびり。
内儀(かみ)さんはSPA。

午後2時頃、昼飯に出る。

昼飯の前に、銀行に寄り、両替。
(こちらの銀行の営業時間は、店によって違っていたり、
昼休みが、あったり、さらに、その休みが長かったり、、、。
注意が必要である。)

昼飯、というほど、ちゃんとしていないが、屋台ではなく、
一応店の体裁は取っている、ドネルケバブ。


モロッコパンに入れてくれる。


日本に入ってきているものは、独特のソースが
かかっているが、こちらのものは、そういうソースはなく、
塩胡椒だけ?、いたってさっぱりしている。

(関係ないが、マラケシュでは荷物用の馬車も活躍している。)


(ロバの場合もある。)

さて、夜。
今日が最後の晩。

やっぱり、屋台は食べておかないと、と、
ジャマエル・フナ広場に出る。

例の、羊の脳味噌の置いてある屋台。


これらは、一応、木の長椅子があり、座れる。
呼び込みはうるさいのだが、一度座ると、けっこう放っておかれる。
いや、勝手にすればよい、と、いうことか。

地元の家族連れ、観光客などさまざまな人々が、
ワサワサと、飲みかつ、食っている。
(イスラムだからか、屋台には、酒は置いていない。)

座ると、まず、モロッコパンが無造作置かれる。

この羊の屋台は、その脳味噌の他に、いろんなところの
煮込みがあるようである。脳味噌もしかり、だが、頭がそのまま
置いてあるのは、なかなかなもの、で、ある。


これをくれ、と、なかで、
最もノーマルそうな煮込みものを指差し、頼む。

それから、飲み物は、やっぱり、ミントティー。


屋台のミントティーはグラスに直にミントの葉が入れられている。

食べてみる。

ん?味がない。
先の、ドネルケバブもそうだが、マラケシュの屋台系は、
薄味が基本なのであろうか。

見回すと、クミン塩が置かれているので、それを
もらう。
(むろん言葉がわからないので、人の前のものを指差すと、
その人が、気を利かせて、取ってくれた。
地元の人のようであったが、やっぱり、基本はフレンドリー
なのであろう。)

塩とクミンをかけながら、食べる。
味は、びっくりすることはない。
まあ、いわゆる煮込み、で、うまい。
(別段、くさくもないし、柔らかく煮込まれた羊肉。)

もう一軒、ハシゴ。

屋台には、他にケバブのような、いろんなものを
串焼きにするところもあるが、これはまあ、想像ができるので、
もう一つ、よくある屋台。


玉子が並べられている。
これは、ゆで玉子と、ゆでたじゃがいも。
やっぱり、パンにはさんで食う。


じゃがいもと、ゆで玉子をフォークでつぶしただけ。
オリーブオイルが多少はかかっているのか。
わからないが、やっぱり、ほとんど薄味。

素朴、と、いおうか、なんといおうか、
そのものの味しかしない。
なぜ、こんなものが定番なのか?と、いぶかしくなるほど
簡単な食いもの、で、ある。

さて、もう一軒、書いておきたい業態。


スイーツや。
モロッコには、ローカルのスイーツが豊富にある。
(昨年のドバイにはなかったと、思われる。)
どんなものかというと、材料は小麦粉だと思われるが、
いろんな形にして、揚げたり、焼いたりし、
甘めの蜜をかけたもの。


まあ、クッキーのようなもの、で、ある。
上の写真は、店、で、あるが、屋台でもスイーツやは、ある。

こんなこともあった。

カサブランカのメディナを歩いてときのこと。
おそらく、スイーツを作っている家、だったのだと思うのだが、
このような菓子が一種だけ、大量にドラム缶のような容器に
広げてあるものを見つけ、見たことのないものだったので、
なんであろうかと、近寄って見ていた。
すると、その家の人ではなく、通りがかりの人が、
自分のものでもないのに、取って、渡してくれて、
食べろ、と、いう。
形がまったく見たことのない、ちょうど、動物の内臓のような
ものであったので、恐る恐る食べてみると、甘い菓子であった、、。
まあ、そんなこともあった。

デーツや。


(別段、これはデーツだけ売っているわけではない。
ドライフルーツや、スパイスなどなど、まあ、乾物や、で、あろう。)
デーツは、なん度か書いているが、ナツメヤシの実を干したもの。


天秤で、量り売り。

自家の土産用、で、ある。
ご近所、アメ横にも実は、売っているのは知っているのだが、
大きくて、より半生な、よさそうなものを買ってみた、
のである。


さてさて。

こんなところで、「断腸亭、モロッコへ行く」も、
一巻の読み切り。

いろいろ、書いているように、私にとっても
得るところが多かった。

長々の、お付き合い、感謝、で、ある。

さて、来年はどこへ行こうか?







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