断腸亭料理日記2009

煮凝り、火鉢で燗酒

12月1日(火)夜

12月になった。

天気はよかったが、最高気温は14℃。
日が落ちると、やっぱり寒い。

今日は、なにを食べようか。

寒いし、火鉢。
燗酒と、、、、お。
そうだ、冷蔵庫に、この前煮た、鰤(ぶり)がまだあった。

鰤、というよりは、少し小さく、イナダか、
ハマチ、程度のものであったが、刺身などにして食べた

この半身は一度冷凍しておいたのだが、
思い付いて、甘辛く煮ておいた。

冷蔵庫に入っているので、煮凝りになっている。
煮凝りで、燗酒、というのは、よさそうだ。

8時前、オフィスを出て、帰る。

帰宅し、スーツを脱いで、
丹前に着替える。

火興しで、炭を熾す。
同時に、鉄瓶も熱くする。

熾きた炭を火鉢にいけ、鉄瓶もかける。

鰤の鍋を冷蔵庫から出し、煮凝りになっている部分と
鰤の身の部分も取り、盛り付け。

冷蔵庫には、もう一つ、鍋があった。
これは、牡蠣の赤味噌煮。
たいして残っていないが、これも温め直し、皿に取る。

あとは、京都の柴漬けも小皿に出す。

卓袱台に移動。

一合の徳利、猪口、菊正宗の一升瓶も用意。
これで、完璧。

あとは、まったく立たずに、呑める、と、いうもの。

酒を徳利に入れ、火鉢の鉄瓶に、入れる。


燗がついたら、徳利を出し、一杯。


煮凝りも食う。

甘辛の濃い味で、鰤の味が出た、
ぷるぷるの食感が、うまい。

一度煮た、鰤の身も、冷たかったら、冷たいで、
また、うまいもの、で、ある。

煮凝りは、冷たいが、酒は温かい。
この取り合わせが、予想通り、また、よい。

一合呑んで、もう一本、鉄瓶のふたを取り、
徳利を突っ込む。

燗がついたら、また、呑む。
煮凝りを、つまむ。

味が濃いので、酒が進む。

煮凝りは、だんだん、柔らかくなり、
箸でつまみにくくなってくるので、途中から、
スプーンに持ち替える。

だんだん、身体も温まってくる。

しかし、煮凝り、と、いうのは、不思議な食い物、
ではなかろうか。

結局、煮凝りは、煮魚の汁が冷めて、
自然に固まった、ゼリー状のもの、で、ある。
これを温かい飯にのせて、溶けてきたのを食べる。
あるは、そのまま、酒の肴にする。

この食い物は、全国的にあるのだろうか。
まあ、少なくとも、東京には昔からあった。

今、煮凝り、というのは、煮凝りとして
ゼラチンなどで固めたものであろうが、
四角い長いものが、魚やなどでも売っている。

または、居酒屋でも置いているところもある。
わざわざ、ゼラチンを入れて、作ったもの、
ではなく、文字通り、魚を煮たのが自然に固まったものを
出す、ところもある。
つまみとしては、ある程度定番のもの、と、
いってよかろう。

私の親爺は、この煮凝りが好き、で、あった。

爺さんは大酒呑みであったが、親爺はまったく呑めなかったので、
親爺の煮凝りは、温かい飯の、おかず、で、あった。
また、子供の頃から好きだった、というようなことも
いっていたと思う。

私はというと、この魚の煮汁の固まったものが
子供の頃は好物ではなく、いや、どちらかといえば、
冷たい残り物、としてのイメージしかなく、
食べることはなかった。

食べるようになったのは、酒を呑むようになってから、
いや、それも、40を越えてからかもしれない。
外で、門仲の魚三のようなところ、であろうか、酒の肴として食べて、
うまい、と思うようになった。

しかし、どうなのであろう、うまいもの、なのだが、
やはり、本来残り物で、見せようによっては、ちょいと乙、
な、ものにはなるが、そうそう上品なもの、では、
今でもなかろう。

上品でないからこそ、よい、というのも、むろんある。

だが、やはり私には、なにがしか今でも不思議なもの。

ともあれ。

煮凝りは、俳句では冬の季語、と、いう。
寒くなり、煮凝りに火鉢で燗酒、これは、よい。






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