断腸亭料理日記2009

小島町・うなぎ・やしま

2月21日(土)夜

さて、夜。

風邪は、だいぶよくなった、のだけれど
なにがよかろうか。

元気を付ける?

久々に、うなぎ。

ご近所の、小島町交番隣の、やしま。
私の家は、元浅草なのだが、春日通りを渡った南側は、
小島町という。

最近、壁の塗り直し、なのか、
建物のまわりに足場が組まれていたが、
ちゃんと営業はしている様子、で、あった。

6時半過ぎ、内儀(かみ)さんと、出る。

マンションの外へ出て、100m、も、ない。

信号を渡って、店の前にくると、むろんやっている。
戸を開けて入ると、土曜日なのに、なのか、
土曜日、だからか、座敷も、テーブルも八割方埋まっている。

座敷の方のあいている一つに、座る。

先日の香味屋、でも書いたような気もするが、
土曜日のご近所の食い物や、と、いうのは、よいものである。

ウイークデーのこのあたり、元浅草界隈も、
まあ、オフィス街、と、いってよいだろう。
この、やしまも、春日通りをはさんで向こう側の
蕎麦や、砂場も、お客は基本的にはこの界隈のビルで
働いている人々がほとんど、なのではなかろうか。

しかし、土曜日のお客はご近所の人々。
なにが違うのかといえば、服装、で、ある。
皆、普段着。

もちろん、休みであろうから、男性であればスーツではなく
カジュアルな服装なのだが、遠くから、食べにくれば、
当然、ある程度、よそいきの出かける服装に、なるはずである。

土曜日でも、例えば、銀座、などであれば、
食い物やは、よそいきの服装になる。

しかし、ここのお客は、普段着。
私も、内儀さんも、むろん、いい加減な普段着。
(今日は、着物、ではない。)

そして、まあ小さな子供はいないが、
基本的には、皆、家族できている。
ご近所に住んでいる方々、であろう。

ウイークデーは、家で商売もしくは作業で忙しく
週に一度、土曜日は近所の少しいいところで、
家族で食事。
(まだまだ、この界隈も家業を持ち、家で仕事をしている
『居職』のご家庭が少なくないのであろう。)

これが“正しい”下町の土曜日夜の、飲食店。
そんな気がしているのである。

下町なら、どんな飲食店でもそうなのか、と、いうと
必ずしもそうともいえないが、ご近所率の高いところ。

そう、例えば、本所石原の、洋食レストラン、クインベル

あそこもご近所率は高い、だろう。

まあ、ご近所率が高いと、同じご近所の者は、
むろん、知っている人ではなくとも、
別段、気取ることもなく、寛いで呑めて、飯が食える。

よいものである。

(これ、もう少し正確にいうと、ご近所率もさることながら、
普段着率、ということになる。
山手との比較でいえば、同じようにご近所率が高くとも、
山手の人間は、近所の飲食店にいくにも、ある程度
よそいきの服装をする人が多いのではなかろうか。
結婚してすぐ、私も世田谷に住んだことがあるが、
そんな印象であった。
やはり、下町の土日の飲食店の雰囲気は、山手のそれとは
随分と違う。)

ともあれ。

ビールを頼み。

白焼きと、うな重を頼む。


やしま、定番の味噌豆、も、きた。
なん度も書いているが、落語(小噺)にもある、
昔から定番のおかず、で、あろう。
味噌を仕込む前の大豆、という意味で味噌豆。
青海苔がかかり、からしじょうゆで、つまむ。

ビールから、燗酒に代える。

白焼きもきた。


わさびじょうゆで、食べる白焼き。

夕涼みよくぞ男に生まれけり

なんという川柳があるが、
これを口に入れると、
よくぞ、東京に生まれけり、と、思える瞬間かも知れぬ。

これこそ、粋、乙。
江戸風味の肴。

うな重。


これも、もう、なにもいわなくともよい。

・・のだが、それでは、断腸亭料理日記にならないので
書いてみる。

ここ、小島町やしまのご主人は、浅草雷門の老舗、
初小川で修業をされた。

従って、初小川譲りの味、で、ある。
東京の蒲焼というのは、基本は甘辛の濃いたれ、
なのだが、ここのものは、さっぱり。
だたさっぱりしているのではなく、濃い味好みの
東京人、下町人の舌でも満足のできる、味。
この味は、他ではお目にかかれない。

浅草らしい粋な味、と、表現するのが最も適切であろう。

うまい、うまい。

ひとしきり食って、お勘定とともに、
旧知のご主人に、挨拶をする。

と、落語会はしないの?と聞かれてしまった。

過去、2回ほど、ご近所で恐れも知らず、
素人のくせに、私の拙い落語を聞いていただき、
うまいものを食う会を催していたのであった。
数えてみたら、もう三年も前。

やっぱりそうであったか。

仕事の忙しさにかまけて、断腸亭としての活動は、
この日記だけになっているが、やっぱり、
期待していただいている方もいる、ということ。
いや、落語もやって、断腸亭、ということであると
思わされた。

それにしても、そんな風にいっていただけるのは
ありがたいこと。


やります。

そう、夏前くらいには、、、やりたいですね。

(今度はどこがよかろうか、、そば屋の二階、なんかどうだろう、、。
並木か、池の端か、、。高そう、、。)


やしま
TEL 03-3851-2108
東京都台東区小島2丁目18−19


断腸亭料理日記トップ | 2004リスト1 | 2004リスト2 | 2004リスト3 | 2004リスト4 |2004 リスト5 |

2004 リスト6 |2004 リスト7 | 2004 リスト8 | 2004 リスト9 |2004 リスト10 |

2004 リスト11 | 2004 リスト12 |2005 リスト13 |2005 リスト14 | 2005 リスト15

2005 リスト16 | 2005 リスト17 |2005 リスト18 | 2005 リスト19 | 2005 リスト20 |

2005 リスト21 | 2006 1月 | 2006 2月| 2006 3月 | 2006 4月| 2006 5月| 2006 6月

2006 7月 | 2006 8月 | 2006 9月 | 2006 10月 | 2006 11月 | 2006 12月

2007 1月 | 2007 2月 | 2007 3月 | 2007 4月 | 2007 5月 | 2007 6月 | 2007 7月

2007 8月 | 2007 9月 | 2007 10月 | 2007 11月 | 2007 12月 | 2008 1月 | 2008 2月

2008 3月 | 2008 4月 | 2008 5月 | 2008 6月 | 2008 7月 | 2008 8月 | 2008 9月

2008 10月 | 2008 11月 | 2008 12月 | 2009 1月 | 2009 2月




BACK | NEXT |

(C)DANCHOUTEI 2009