断腸亭料理日記2011

箱根・塔ノ沢・福住楼 その3

5月6日(金)

暁庵で蕎麦を食べて、再び、塔ノ沢の
福住楼に戻ってきた。

今日は、連休の間だが、一応、世の中は、
休みではない。

昨日よりも、福住楼もお客は少なそう。

またまた、だ〜れもいない、明るい風呂に、どぼ〜ん、と、
つかる。

手足を伸ばし、気持ちがよい。

池波ファンの方、であれば、もしかしたら、
ご記憶の向きも、あるかもしれぬ。

新緑の頃の、昼間の温泉につかる、というのを
先生は、いくつかの作品に書かれている。

私が思い出すのは、真田太平記。
これは、若き日の幸村が、一人でむせ返るような、
緑の中の、温泉に入る、というような
シーンではなかったかと思う。

あるいは、エッセイにもそんな体験を書かれていた
ような記憶もあり、池波先生自らの実体験なのであろう。

むせ返るような、新緑の山の中の温泉。

作品を読んだときから、気になってはいたのである。
酔うような、山の緑。

山の木々の精気を身体に取り込むというのか、
山の緑に同化していくような、、、、そんな感じなのかもしれぬ。

そんな湯船の中で、いつしかまどろむ、、。


いや、いや、塔ノ沢の温泉の湯は基本は熱く、
とても、まどろむような、温度ではない。

ともあれ。

湯からあがり、夕飯まで、ごろごろ。

こんな時間もまた、よいもの、で、ある。


さて。

夕飯。


かにと、刺身は、まぐろなど。それから右側は、鰹。
土佐造りというのであろか、ぽん酢しょうゆをかけて食べる。
鰹は、初鰹、といってよいのだろう。
うまい。


小女子に、小さなつぶ貝。
鍋は、昨日はすき焼風であったが、今日は、しゃぶしゃぶ。


焼き物。

見た目にはよくわからないが、桜鱒。
脂ものって、うまい。


揚げ物。
桜海老のかき揚げ。

やはり季節のもの。


煮ものと、ご飯。

この煮物は、見た通り鰈なのだが、
かわいい大きさ。

和食のコース、会席料理のような場合、おうおうにして、
最後の方は、腹が一杯、ということがよくある。

そこへいくと、このくらいの大きさの煮付けは、
ちょいと、気が利いているではないか。

うまかった。

ご馳走様でした。



翌朝、帰る日の朝。

昨日同様、朝飯前に、一っ風呂浴びる。

朝飯。


二日目は、いつも、オムレツがつく。
干物は、えぼだい。


まぐろブツ、わさび漬け、葉唐辛子の佃煮もうまい。

十二分にうまい、品数豊富の朝飯、で、ある。

しかし、考えてみると、箱根というのは、昔から、
東京からのお客が、ほとんどの、観光地、温泉場、
ということになろう。

山でありながら、小田原は目と鼻の先で、
相模湾の魚に恵まれている。

別段、目新しいものが、なくてもまったくよい。

東京人の口に合う、うまい魚と、わさび漬け、そして、
葉唐辛子の佃煮。
私なんぞには、もうこれだけで、大満足。

まさに、東京人のための温泉宿。

これがよい、のである。


お世話になりました。

会計をして、お見送りを受けて、出立。


箱根、塔ノ沢、福住楼、
よい宿、で、ある。




福住楼




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