断腸亭料理日記2012

浅草寿町・とんかつ・すぎ田

7月16日(月)海の日 夜

引き続き、海の日、夜。
(江戸博の『日本橋』へ行った日。)

内儀(かみ)さんの希望で、寿のとんかつ・すぎ田

ちょっと、久しぶり、で、ある。

ここは、拙亭に最も近い、有名とんかつや、
で、あろう。

毎度書いているが、上野というのはとんかつ発祥の地、
といわれてもおり、上野にはとんかつやは多いし、
その関係か、浅草にも数多くある。

上野のぽん多蓬莱屋井泉、の老舗三軒に双葉を加えた四軒。

すぎ田は、この四軒に勝るともおとらない、
と、いってよかろう。

すぎ田は、歩いて10分もかからぬので、
土日、内儀さんと行くことが多い。

7時に内儀さんが予約し、10分前に
下駄を突っかけて、出る。

この浅草寿のすぎ田、名物ご店主といってもよい
親爺さんが昨年亡くなって、今は若い二代目が継いでいる。

私達としたら、亡くなってから初めていくということではある。

真っ直ぐ東へいって、国際通りを渡って右、
春日通りの交差点手前。

店前はいつものようにやたらと明るく
ライトアップされている。

入ったところに大きな花が飾られている。
これも以前通り。

白木のカウンターが奥に続き、中には座敷もある。

名前をいって、座る。

カウンターの向こう側には、二代目と先代の女将(おかみ)さん。
それから若い衆一人。
ここ数年は先代と若主人の二人で厨房に立っていた。
一人減ると、やはり、さびしく感じられる。

先代は身体が大きく、鼻の下に髭をたくわえ、
声も太く、強い押し出し、で、あった。

江戸っ子なのかどうなのか、わからぬが、
うるさ型というのであろう。女将さんなどの
ご飯を出すタイミングが遅れたりすると、
よく切れて、その太い声で怒鳴っていたのは、
なかなかの、迫力。
いろんな意味で、個性のある親爺さんの
とんかつや、であった。

座って、ビール。


二代目は、細くはないが背丈は先代ほど高くなく、
比べれば、ちょっとおとなしい感じ。

あ、そうである。

思い出したが、先代がまだ健在だった頃、
二代目が、先代とまったく同じように同じようなシチュエーションで、
先代の女将さん(お母さん)に怒鳴っていたことがあり、
あ〜、やっぱり、親子は似てくるもんなんだな〜、などと
思った記憶がある。

そんな時も、女将さんは黙って、はい、すみません、
と、先代へと同じように、詫びていたように思う。

さて。

注文は、いつものように、ロースのとんかつと、
海老フライ(時価)と、ロースソテー。
(もちろん、二人で。)

二人で、ビール二本目の半分を呑んだ頃に
出てきた。

ロース。


切り方が先代よりも薄くなっている。
理由はよくわからないが、まあ、意識して
薄く切っているのではあろう。

味自体は、大きくは変わっていないと思われる。

ここは温度の違う二つの油鍋があり、二度揚げしている。
肉厚のうまいロース、で、ある。

海老フライ。


これもここの看板だと思うが、特大、プリプリ。

そして、ロースソテー。


これはこの前のアド街(田原町)で取り上げていた。

内儀さんはこれが食べたくなると、
ここに行こうという。

たっぷりのウイスキーでフランベ。
こくのある味付けで、うまい。

ご飯ととん汁。


とん汁も下町らしい濃いめの味付けで、よい。


ご馳走様でした。

かわらず、うまかった。

居合わせたお客さんから、先代の噂話なども
出ていた。
亡くなったのは、ちょうど昨年の八月で
もうじき一周忌、という。

あれだけ存在感があった親爺さんだったから、
客としても、ポッカリ穴が開いた感覚は
致し方のないところ。

二代目も、やっと最近、亡くなったことの実感が
わいてきた、と、いっていた。

二代目はまだ四十には間がある年齢、で、あろうか。

代替わりをすると、いろいろいわれることも
多いと思われる。

味は大きく変わっていない、と、思われる。
月並みだが頑張ってほしい。

時間をかけて、二代目らしい店ができてくる
ので、あろう。

温かく見守ろうではないか。



すぎ田
TEL 03-3844-5529
台東区寿3丁目8−3






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