断腸亭料理日記2013

蕎麦・日本ばし やぶ久

6月4日(火)夜

17時30分、八重洲で仕事終了。

さて。

なにを食べようか。
久しぶりに、やぶ久いってみるのもよいな。

いや、まだ少し早いから、買い物でもするか。
扇子を少し見たいと思っていたところ。

日本橋の袂(たもと)に小さいが老舗の扇子屋があったはず。
が、きてみるが、休みなのか、やっていないのか、
人気(ひとけ)もない。

ま、いいか。

扇子なら、浅草にいくらもある。

ここまできたら、高島屋裏の吉野鮨へいってみるか。

まだ早いから、入れるかもしれぬ。

しかし、この界隈、再開発ラッシュが続いている。
日本橋交差点の北西の一画も更地になっているし、
南東側の永代通り沿いも更地で見通しがきく。

こんな一等地が、ガラガラと工事中だと、
なんだか田舎町のよう。

高島屋の裏通りへ入って真っ直ぐ。

店の硝子戸の前に立ち、暖簾の脇から店の中をのぞいてみると、
あれま。

カウンターは一杯。

こんなものか。

仕方ない。

やぶ久だ。

やぶ久は日本橋交差点の南西側の一画。

中央通りを渡って、路地を入って右に曲がる。

自動ドアを開けて入ると、こちらはまだ座れる。

最近ここも人気なのか、ちょっと遅くなると、1階は
座れないことがある。

ビールをもらう。

肴と蕎麦はなににしようか。

品書きを見ると、季節がら白魚、桜海老といったところが

目に飛び込んでくる。

桜海老は刺身もあるぞ。

よし。
桜海老は刺身でもらって、白魚の天ぷらそばにしようか。

ここは季節の天ぷらが充実しており、
それを天ぬきにしてもらって、肴に呑むのがよいのだが、
天ぬきの季節でもなかろう。

(天ぬきというのは、天ぷらそばのそば抜きのことで、
熱いそばつゆにかき揚げの天ぷらが浮いているというもの。
寒い冬には格別である。
特に、浅草並木藪の濃いつゆのものがよい。))

桜海老。



右側の小皿はお通しのなめ味噌。

入っているのは、少しほろ苦く、ふきのとうかと思ったが、
柚子のよう。塩梅がよい。

刺身で食べられる桜海老なんというのは東京には出回らなかったが
最近は富山の白海老も、静岡由比の桜海老、あるいは、生しらすなども
見かけるようになった。

べら棒にうまいのか、といわれれば、さほどのものでもないが、
まあ、旬の味覚、ということであろう。

呑み終り、食べ終わり、蕎麦ももらう。


なかなかきれいな盛り付けである。

白髪ねぎをうず高くのせ、白魚の天ぷらはかき揚げではなく、
一匹ずつ揚げてある。
その下に、大きな海苔。
(つまり、白魚天は海苔の上にのせて、蕎麦の上にのっている。)

手前の緑色のものは、柚子。
その下の桃色のものは、麩。

そばもうまいのだが、
ここにはいつも感心させられる。

気の配り方が、細かい。
この盛り付けもそうだし、先のお通しにしてもそうである。

やっつけで作っていない。
昔のままでもないし、新たな工夫を毎度している。

箸袋の裏に“店主小心につき”うまかったかどうか、
教えてくれ、というようなことが書いてある。
こういうことなのであろう。

創業111年、当代で四代目という。

1902年、明治35年ということか。

こういう蕎麦やを、よい蕎麦やというのであろう。


ご馳走様でした。

うまかった。




中央区日本橋2−1−9
050-5779-0045









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