断腸亭料理日記2014

ジャーマンポテト・

カレーケチャップ味

12月13日(土)深夜

土曜日、深夜。

なにか食べたくなった。

ちょっと、お腹にたまるもの。

前に、一度くらいは書いたことがあると思うのだが、
簡単なのでよく作る、カレーソーセージ、という食い物がある。

ソーセージにケチャップとカレー粉をかけただけ。
言ってしまえばそれだけのものなのだが、これが
ドイツ、特にベルリンの名物ファストフード、だという。
ベルリンの街にはいたるところにこの屋台があるらしい。

私はベルリンはおろかドイツにすらいったことがないので、
現地のものがどんな味なのかは、残念ながら知らない。

写真などで見真似で作ったものは、味はカレーとケチャップだけなので、
変わった味ではないのだが、そうとうにうまい。
今は私も、時たま無性に食べたくなるものになっている。

だが、このカレーソーセージ、考えてみると
いい加減な食い物ではある。

なにがといって、カレーにしてもケチャップにしても
本場(?)へ行くと、実際にはそういうものはない。

例えば、カレー粉。

カレー粉というのは、今日作ったが、いわばスパイスの
ミックス、で、ある。もう少しいうと、プレミックス。
つまりあらかじめ混ぜたもの。

インドでカレー粉、なるものが売られているのか、
といえば、おそらくNO、で、あろう。

百歩譲ると、ガラムマサラと呼ばれるものが、
プレミックスにあたると思われるが、これは
元来は、家庭ごとに味を決めて、各種スパイスを
あらかじめ混ぜたものと聞く。(販売もされていると思われる。)

なんでもかんでも、カレー粉をかければカレー味になる
というような使われ方、ではないとは思われる。

ケチャップはどうか。
アメリカなどでは、コーヒーショップや、ハンバーガーのファストフード
その他どこでも、ハインツのケチャップが置かれている。
これ、ご存知だとも思うが、欧米でもイタリア、フランスなどでは
置いていないのが普通だと思われる。
(パリ、ローマ、シシリア、それからイタリアあるいは
フランス系のリゾートへ行った私のそう多くもない経験から
ではあるのだが。)

ケチャップの本場がどこなのか、よくわからぬが、
イタリア人、あるいはフランス人はほとんど使わない。
(ついでだが、彼らはなんでもかんでも野菜にかける、
ドレッシングというものもあまり使わないと思われる。
また、マヨネーズも同様であろう。)

なんでもかんでもかけちゃう、という
調味料は、あまり薦められたものではないのだろう。

簡単なのはよいのだが、結局、みんな同じ味になってしまう。

フランスやイタリアの料理人にとっては、
なんでもかんでもケチャップをかけられるのは
たまらないことなのであろう。

ともあれ。

ケチャップは、フランス、イタリアでは食卓では
あまり使われないが、ドイツ、アメリカでは多用されている。
(イギリスは私は行ったことがないのでわからない。)

最初に“いい加減”と書いたが
どうもこれは彼らゲルマン、アングロサクソンの
味(ひいては食事をすること)に対する文化といって
よいように思うのである。

まあ“いい加減”でなければ、こだわりがない、
といえばよいのか。
(アングロサクソン、ゲルマンの人々はこういうことに
興味がないのであろう。)

しかしカレーソーセージは“いい加減”なものだが、うまい。
これは間違いない。

まあ、日本にはB級グルメなるジャンルも最近はある。
(それで、日本人はどちらもわかる、のかもしれない。)

さて。

今日は、ドイツにこういう食い物があるのかどうか
わからぬが、このカレーソーセージをちょっとアレンジし、
ジャーマンポテトというのか、じゃがいもと
玉ねぎに、細かく切ったソーセージを炒めて、
カレー粉とケチャップをかけたものを、作ってみた。

じゃがいもは火がすぐに通るように、できるだけ細く
千切り、玉ねぎもテキトウにスライス。

あとは油で炒めて、じゃがいもに火が通ればOK。
仕上げにカレー粉を全体に行き渡らせるようにまぶす。

軽く塩をし、皿に盛ってもう一度カレー粉をたっぷりとかけ、
その上からケチャップをかければ出来上がり。

カレー粉もケチャップもかけすぎは食べられなくなるが、
このくらいたっぷりめがよさそうである。

見た目はやっぱり、ジャンク。味は想像の通り。
だがやはり、じゃがいもを入れてもうまいものができた。

カレーソーセージもよいが、簡単なのでお試しを!。


P.S.
「ベルリン名物カレーソーセージのこと」
今回試みに「カレーソーセージ」で検索をしてみた。

するとドイツ大使館・総領事館のブログのようなページがすぐに見つかった。

なにか妙な感じがずっとしていたのである。
こんな“いい加減なものが”ベルリンの名物とは。

この記事によれば、間違いなくベルリンの名物で。戦後生まれたベルリン市民の
“生き抜くための”ソウルフードであるという。

記事には直接触れられていないが、戦後のベルリンということは、
あの米ソ東西冷戦期、ドイツにとっては他ならぬ
東西分断の頃ということになるのではなかろうか。
ベルリンは東ドイツ内にあって、同じ都市でありながら東は東ドイツ、
西は西ドイツ(正確には米・英・仏の統治領)で、その境界にはかの、
ベルリンの壁があった。不幸な歴史である。

“生き抜くための”というが、これが生まれたのは東ベルリンであろうか
西ベルリンであろうか、記事には書かれてはいないが、おそらく分断当時の
世相、市民の生活が反映されたところの産物なのであろう。
カレーソーセージ、おろそかにはできまい。


 

 


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