断腸亭料理日記2015

浅草・足袋・永澤屋〜

鮨・新ばし・しみづ その1

5月31日(日)夜

さて。

日曜日夜、久しぶりの鮨、新橋[しみづ]、で、ある。

去年の10月以来か。

鮨やの季節としては、今頃はどうであろうか。

春が終わり、夏前、初夏。
鰹などになるのか。

昼すぎにTELを入れ、6時に予約。

もう暑いが[しみづ]には着物を着ていくことに
なんとなく決めてしまっているので、着物だ。

むろんもう夏物でよいであろう。
一重と、真夏ではないが紗の羽織。

羽織は正式には真夏以外は、通常の袷(あわせ)のものを着ると
聞いたことがあるが、この気候では、裏のある袷は着られない。

そして、足袋だ。
基本私は白足袋なのだが、白足袋というのはむろん汚れが目立つ。
履いているうちに漂白をしても段々に落ちなくなってきている。

今日は時間があるので、新しいのを買いに出ようか。
足袋は、特に決めておらず百貨店などで買うことが多かった。
また、一時は、新富町の[大野屋]で買っていたこともあった。
[大野屋]は場所柄、歌舞伎役者のものなどを誂えている家である。

地元浅草でよいところがないか、ちょっと調べてみると、
明治三年創業[永澤屋]というところが見つかった。

[釜めし春]のそば。

きてみると、店の前はよく通っていたところ。
「足袋、肌着」とある。

店に入って、声を掛けてみると、かなりご高齢と見える
お婆さんが出てきた。

男物の白足袋を。サイズは26.5cmで、と、いうと。

26.5というのはないんですよ、とのこと。

見本がありますから、というので、27cmのを試してみて、
二足購入。

この店は、足袋と肌着と看板にあって、
襦袢(じゅばん)なども扱っている。

昔、着物を売っている呉服屋というのは、足袋と襦袢を扱わず、
こうして別の業態であったのだと思われる。

今度ここに襦袢を誂えにこようか。

帰宅し、開けてみる。

27cmと、十一文半と書いてある。

自分の足が、十一文半であるのは知らなかった。

この店の品はここの職人さんが作っているよう。
そして、基本、メートル法ではなく尺貫法なのであろう。
これも約27cmなのか。

26.5cmという足袋は先の[大野屋]などにはあるのだが、
今日の[永澤屋]では尺貫法では26.5cmにあたるものがない
ということなのであろう。

祖父母などは尺貫法で足の大きさを言っていた。
祖父か祖母か、誰のかわわからぬが、十文半(トモンハン)なんという言葉も
耳に残っている。尺貫法で自分の足の大きさを言えるのはちょっとよいかもしれぬ。

さて。

新しい足袋を履いて、青い小紋の一重もの、深緑の紗の羽織を着て、
下ろしたての白足袋、いつもの雪駄を履いて、5時半頃家を出る。

内儀(かみ)さんとは、現地待ち合わせ。

稲荷町から銀座線に乗って新橋まで。

SL広場から烏森神社の横丁に入る。
と、内儀さんは、神社の鳥居のところにいた。

鳥居の前を左に曲がって、次の路地を右。

[しみづ]は左側。

表の格子は既に夏向きに葭簀(よしず)になっている。

開けて入り、親方に挨拶。

先客は奥に一組、手前に一組。

奥寄りに座る。

ビールをもらう。

つまみから、おまかせで頼む。

お通しは、しらすおろし。

しょうゆをたらしてつまむ。
見たところ、なんということはないのだが、これがうまい。

大根おろしは、粗くおろしてあり、細かく刻んだ茗荷を
混ぜている。

つまみ。

厚めに切られた、白身。

この季節なので、まこがれいである。

夏の白身の大定番。

塩も出されているの、塩で。
シコシコとした歯応えと、あまみがなんともいえない。

白身というのはにぎりよりもつまみ向き
かもしれぬ。

次はたこ。

いわゆる、ただ茹でただけのたこ茹蛸ではなく、
江戸前の仕事のしてあるたこ。

なにが違うのかといえば、皮の質感と身の食感、
そしてうまみ、で、あろう。

皮はちょっと黒っぽく、ホロっとしている。
身もただ茹でただけよりはサックリした感じ。
そしてうまみが増している。

こうしてつまみでもよいし、にぎって甘いたれを塗るのもうまい。

詳しいこしらえ方は店によって違うこともあるようで、
よくわからないのだが、おおかた正しい江戸前の鮨やでは
こういうたこを出す。

来週に、つづく。


今週末は、私の住む町のお祭「鳥越祭」。
時期が若干ずれますが「鳥越祭」の模様はその後に。


 

 


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