断腸亭料理日記2015

秋刀魚塩焼き

10月8日(木)夜

さて。

秋刀魚の塩焼き、で、ある。

昨日、10/7のNHK「ためしてガッテン」

ご覧になった方もあるかもしれない。

秋刀魚であった。

私は今シーズン、鮨やなどで初物として刺身で食べたりはしているが、
魚やで安いものを買い塩焼きで家で食べるということは
まだしていない。

TVでもやっていたが、10月に入って安くなってきてもいる
とのこと。

皆様も耳に入っておられるであろう。
秋刀魚を取り巻く環境は大きく変わってきているようである。

まずは温暖化などもあるのであろう。
もともとは、秋刀魚といえば銚子であったと思うが、三陸から
段々に獲れる場所が北へ上がり、今は北海道釧路沖あたりか。

そして、ここ数年喧(かまびす)しいのは台湾。

我が国の秋刀魚漁船よりも格段に大きな船で船団を組み、
釧路沖よりもさらに沖、で根こそぎ獲っている、ともいう。

秋刀魚といえば、落語「目黒の秋刀魚」でも描写されるが、
脂がのって焼けばジュウジュウを音を立て、
煙が上がる、というものであった。

ガスのレンジで焼いて換気扇を回しても
家じゅうに煙が充満していた。
ベランダで炭で焼こうものなら、火事かと思われて
通報されはしないか心配するほどであった。

べら棒に脂があって、その上大量に獲れるので
一本数十円と、べら棒に安い。

まさに庶民の秋の食卓をにぎわせる風物詩であり、
皆、たのしみに待っていた。

獲れているのが北へ上がった北海道沖だからか、台湾船の
大量漁獲の影響なのか、はたまた別の要因なのか。わからぬが、この数年、
不漁だったり、脂があるにはあるが、従前程ではなかったり。

以前の安くて脂がべら棒にある姿ではなくなっていると
私は思っている。
同意をしていただける方も少なくはないのではなかろうか。

なぜ不漁なのか。
なぜ、以前ほどの脂ののりがないのか。

実際のところは原因はわかっていないのかもしれず、
台湾漁船のせいではないのかもしれぬ。

科学的に原因を究明し、それに基づき台湾とは
持続可能な秋刀魚漁を続けるために話し合う必要が
あろう。

いくら風物詩だからといって、一本数百円の
秋刀魚によろこんで金を出すというのは、私は
やはり本末転倒であると思っている。
安いから秋刀魚なのである。

毎度いってる通り、鰯でも鯖でも他に安くてうまい魚が必ずある。
それを食べればよいのである。

ともあれ。
「ためしてガッテン」であった。

秋刀魚の上手な焼き方。

簡単なことなのだが、これは、目から鱗。

結局、焼きすぎないこと。これに尽きている。
と、いうことは、我々は普段、焼きすぎていたということなのである。

メカニズムは、皮がふくらみ、めくれて脂が落ちる、ということらしい。
脂が落ちる前に、既に焼けており、これで焼き上がりとする。
こういうことであった。

ただ焦げ目がついていないと、うまそうでないので、
10倍に薄めた味醂を両面塗っておく。
そうすれば、味醂の糖分で早く焦げる。
こんな技である。

片面グリルであれば、最初5分、ひっくり返して4分、予熱で2分。
これが、「ガッテン」のレシピだが、やってみたらうちのグリルでは
もう少し短くで最初4分にあと3分程度でよさそうであった。

なるほど。

これで十分。
火は通っている。

この秋刀魚は、今日、吉池で買った、一本150円のもの。
このくらいならばまだ許容できる値段と思い、買った。

脂を落としていないので、今日の脂ののりが、従前通りなのか
そうでもないのかは、わからないが、べら棒にとはいかぬが、
十分に脂があってうまいものであった。
(結局、脂を落とさず普通なのは、少ない、ということに
なるのかもしれぬが。)

また、焼きすぎない効果としてもう一つ、身がふっくらしているという
評価もあったが、これは今一つわからなかった。

しかし、今回の「ガッテン」の結論、かなり示唆に富んでいるのではないか。

焦げ目が入るほど焼いてはいけない。
私達の焼くおおかたの焼魚が、焼きすぎであったということになる。

煮魚も最近は煮すぎないが鉄則になっているが、
焼魚もそうであったということである。

結局、熱のかけすぎは脂も落とすし、煮魚の場合は身のコラーゲンが
煮汁に出てしまいパサパサになる。焼魚の場合は、分解して?
落ちてしまい?、やはりパサパサになる。

それでも秋刀魚がうまいのは、やっぱりそうとうに脂があったということに
なろう。

これから、すべての焼魚をこの考えで、短時間焼きにしてみようか。

ただ、で、ある。

脂を落とさない工夫をしないといけないくらいの
秋刀魚というのは、淋しい気もするのだが、いかがであろうか。

 

 


 



断腸亭料理日記トップ | 2004リスト1 | 2004リスト2 | 2004リスト3 | 2004リスト4 |2004 リスト5 |

2004 リスト6 |2004 リスト7 | 2004 リスト8 | 2004 リスト9 |2004 リスト10 |

2004 リスト11 | 2004 リスト12 |2005 リスト13 |2005 リスト14 | 2005 リスト15

2005 リスト16 | 2005 リスト17 |2005 リスト18 | 2005 リスト19 | 2005 リスト20 |

2005 リスト21 | 2006 1月 | 2006 2月| 2006 3月 | 2006 4月| 2006 5月| 2006 6月

2006 7月 | 2006 8月 | 2006 9月 | 2006 10月 | 2006 11月 | 2006 12月

2007 1月 | 2007 2月 | 2007 3月 | 2007 4月 | 2007 5月 | 2007 6月 | 2007 7月 |

2007 8月 | 2007 9月 | 2007 10月 | 2007 11月 | 2007 12月 | 2008 1月 | 2008 2月

2008 3月 | 2008 4月 | 2008 5月 | 2008 6月 | 2008 7月 | 2008 8月 | 2008 9月

2008 10月 | 2008 11月 | 2008 12月 | 2009 1月 | 2009 2月 | 2009 3月 | 2009 4月 |

2009 5月 | 2009 6月 | 2009 7月 | 2009 8月 | 2009 9月 | 2009 10月 | 2009 11月 | 2009 12月 |

2010 1月 | 2010 2月 | 2010 3月 | 2010 4月 | 2010 5月 | 2010 6月 | 2010 7月 |

2010 8月 | 2010 9月 | 2010 10月 | 2010 11月 | 2011 12月 | 2011 1月 | 2011 2月 |

2011 3月 | 2011 4月 | 2011 5月 | 2011 6月 | 2011 7月 | 2011 8月 | 2011 9月 |

2011 10月 | 2011 11月 | 2011 12月 | 2012 1月 | 2012 2月 | 2012 3月 | 2012 4月 |

2012 5月 | 2012 6月 | 2012 7月 | 2012 8月 | 2012 9月 | 2012 10月 | 2012 11月 |

2012 12月 | 2013 1月 | 2013 2月 | 2013 3月 | 2013 4月 | 2013 5月 | 2013 6月 |

2013 7月 | 2013 8月 | 2013 9月 | 2013 10月 | 2013 11月 | 2013 12月 | 2014 1月

2014 2月 | 2014 3月| 2014 4月| 2014 5月| 2014 6月| 2014 7月 | 2014 8月 | 2014 9月 |

2014 10月 | 2014 11月 | 2014 12月 | 2015 1月 |2015 2月 | 2015 3月 | 2015 4月 |

2015 5月 | 2015 6月 | 2015 7月 | 2015 8月 | 2015 9月 | 2015 10月 |




BACK | NEXT |

(C)DANCHOUTEI 2015