断腸亭料理日記2015

日本橋・吉野鮨

9月15日(火)夜

5時、日本橋で仕事終了。

さて。

なにを食べようか。

“江戸前”が続くが[吉野鮨]に行ってみようか。

東京の鮨やも上から下まで、回転寿司まで入れれば
数も知れず、また、質もいろいろ、で、ある。

その中で、基本私が贔屓にさせていただいているのは、
ここと新橋の[しみづ]

6時をすぎると、カウンターでは座れないということになるので
早めの時刻に行きたいもの。

室町側にいたので、日本橋を渡り、コレドの裏を抜けて、
永代橋通りを渡る。
このあたりの再開発も今や佳境というところか。
[山本山]やらが仮店舗で営業をしている。

高島屋の裏を抜けて[吉野鮨]。

暖簾を分け、硝子格子を開けて入る。

さすがにこの時刻、カウンターには高島屋の買い物帰りという趣の
マダム一人。

親方に一人、といって、前に座る。

ビールはエビス中瓶をもらう。

やっぱりつまみを少しもらおう。
光物から、鰯と鯵。

鯵は酢洗いをしたもの。

鰯はやっぱり今年は大アタリ、で、ある。
脂ののりが、抜群。

鯵は不漁で値段が高騰なんというが、鰯を食べればよいのである。
秋刀魚も然り、かもしれぬ。

にぎり。

光物を聞いておいたので、まずは小肌から。

一匹を開いたものをにぎっている。
この大きさになれば、さすがに新子とはいわないだろうが、
まだまだよい大きさ、で、ある。
新子というのは、なにがうまいのかというと、キレ、のように
思われる。

キレ、というのもヘンな言い方かもしれぬが、
小肌というのは大きくなればなるほど、むろん身が厚くなるし、
もっさりした食感と味になる。
反対にメダカのような、生まれたばかりの新子ともいえないような
小さいものは、もはや酢の味しかしない。

皮とほんの少しの身しかない。もっさり感が限りなくなく、
小肌らしい新鮮な皮の香りと酢。そんな感じであろうか。
これがキレ。

小肌を食べて、小鯛の酢〆、春子。

白身で、鯛昆布〆、鱸(すずき)。

鱸は池波先生もお好きで、白身とすれば江戸前の
代名詞のような種であったはずだが、今は
あまり人気は高い方ではないかもしれない。
独特の香りが、うまい。

そして、今日の大きな目玉、と決めてきた。
いか。

天ぷらや[みやこし]でも出てきたが、生まれたばかりの
すみいか、新いか、で、ある。

ここのにぎりは小さめ、5cmくらい、なのだが、
それですみいか一杯分のよう。

すみいかも大きくなると最初にかみ切る時の
歯あたりが強くなるのだが、このくらいであれば、とてもとても
やわらか。身も薄く、繊細。口の中で溶けていくよう。

すみいかというのは、東京の呼び名で、全国的には
コウイカ、なのであろう。
東京の鮨やでも天ぷらやでも江戸前を標榜するところは
基本すみいか以外使わない。

いろいろな魚が人気が出て、値が上がり、獲りすぎになり、
数が減り、、、ということを多くの魚で日本人はしでかしてしまっている。
すみいか、新いかはまだ、それほど全国的には人気がある
ものではないのであろう。このまま人気が出ないことを
密かに願う。

鰹。

たこ。
穴子。

この二品は、どちらも、たれ付き。

ここのたこは、是非食べたい。

普通、たこはお湯で茹でただけの茹でだこ。
江戸前の技とすれば、店によって異なってもいるようだが、
番茶で霜降りにするなどの拵え方があるという。

見た目には赤味が濃い。
皮がちょっとホロっとしていたりもする。

これには、にぎりの場合、甘いたれをかけてもらうのが、うまい。
つまみにも、よい。

穴子はここも炙ってにぎる。

柔らかく煮られ、ホカホカで、うまい。

このあたりで、巻物。

小肌でも巻いてもらうというのもあるが、今の時期の
小肌を無駄に使わせてはわるかろう。

ひもきゅう巻。

以前は凝って、ひもきゅう巻ばかり頼んでいた頃も
あったが、これ、やっぱりうまい。
さっぱりとして、乙というのか、粋というのか。

以上。

勘定は7,000円ほど。

これだけちゃんとした技が施された江戸前にぎり鮨、
極上の大トロなどは、ないかもしれぬが、十二分にうまい鮨、
である。この値段は決して高くない。


ご馳走様でした。
おいしかったです。

 

中央区日本橋3-8-11
03-3274-3001


 


 


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