断腸亭料理日記2016

名古屋・味噌煮込みうどん・

山本屋本店

10月20日(木)夜

名古屋出張。

17時すぎ、名駅付近で終了。

名古屋付近にお住まい、あるいは土地勘のある方は
ご存知であろうが、名古屋駅のことを名駅(めいえき)と略す。
ここまでは、まあ、そういうこともあろうと思うのだが、、
さらにこれが駅東側の実際の町名になっている。
私も、名古屋には30代前半、数年転勤で住んでいたのだが、
最初は随分と驚いたものである。

名古屋の人にとっては不思議でもなんでもない
のかもしれない。
名古屋城のことを名城(めいじょう)と略し、城址は名城公園という
名前の公園である。

しかし、他の地方でも駅名、またはその略称を
町名にしてしまっているところはあろうか。
そうすると、意外、名古屋だけかと思ったら、
軽く調べたのだが、けっこうある。
例えば、岡山駅。
東口北側には駅前町という町名があった。
あるいは福岡の博多駅。
天神方面の駅前には博多駅前町という町名がある。

東京出身の私の方がむしろ、知らなかったのが迂闊、
というべきであろう。
例えば、東京駅の駅前は大手町と八重洲であるし、駅前、
あるいは東京駅という町名はどこにもない。
メインとなるターミナル駅が東京には新宿だったり、
上野だったりいくつもあって「駅前」だけでは地名にならない
ということもあるかもしれぬ。

他の大都市ではどうか。
京都は、もちろんない。
京都人がそんな色気のない町名を新たにつけるわけがない。
大阪もない。大阪駅は梅田である。
神戸もない。
ちなみに、あってもよさそうなのに、ないのが、
仙台駅。

その都市の大きさとメインの駅の重みの兼ね合いというのであろうか、
そういうものも影響しているのか。
なんらかその地方、都市に住む人々の個性が反映されているような
気もするので、もう少し分析してもおもしろそうなのだが、
どうせいつもの与太話、このあたりでやめておこうか。

さて。

名古屋でこの時刻。
ただ、早めに帰りたい、と、なると、
やっぱり味噌煮込みうどん、で、ある。
ひつまぶしもよいがもっとゆっくり食べたい。

幸い、新幹線の改札がある太閤口側の
地下街にうまい方の味噌煮込みや[山本屋本店]がある。

歩きながら携帯で、新幹線のEX予約をして、地下街に入る。

ここはお昼などは行列になったりするが、幸い今はOK。

大きなテーブルに座る。

ビール、エビスの生をもらって、

味噌煮込みはコーチン入りにご飯つきを頼む。

実のところ、ご飯をつけるかどうか、かなり迷った。
毎度書いている通り、最近はとんかつやでもご飯は
炭水化物を減らそうと、食べないことにしている。

しかし、味噌煮込みにはどうしても白いご飯は欠かせない。
その上、ここはうまいお漬物をつけてくれる。
これらを含めてこの店の味噌煮込みうどんであろう。
(お漬物はご飯につくのではなく、味噌煮込みにつくので
最初に頼むと、ビールと一緒に出してくれる。)

きた。

ふたに取って食べる。

お行儀がわるいのではない。
味噌煮込みはふたに取って食べるのが、お約束。
この土鍋には空気抜きの穴は開いていないのである。

見た目でもお分かりかもしれぬが、ここのうどんは
名古屋でもかなり堅い方。
名古屋人でも好き嫌いがあるくらいである。
私は、大好き、で、ある。

また、この濃い味噌煮込みのつゆ。
これも名古屋のどこのうどんやでもそうかといえば、
やはり、ここのものが特筆して濃厚。
白飯に合うことこの上ない。

また、この濃さは、十二分に酒が呑める。

お漬物は、少し食べると、お姐さんがいかがですか、
とお替りを勧めてくれる。
このお漬物、おそらく自家製。うまい。

また、私が名古屋にいた15年前にも既にお漬物の
お替りサービスはしていたので、もっと以前から
この店ではそうしていたのであろう。
これもこの店が好きなところ。声の掛け方がよいのである。

ちなみに、東京では漬物よりも、お新香、という方が
普通であるが、京都もそうであったと思うが、名古屋でも
お漬物。
名古屋でお新香というと、以前、直されたことがある。
ちゃんと漬かっているので“新”香とは言ってほしくない
という。

うまかった。

ご馳走様でした。

味噌煮込みうどんコーチン入り、今、値段は忘れてしまったが
2000円近かったか、決して、安くはない。
しかし、満足度は高い。

そして、この味は、うどんの堅さはともかく、
普遍性があるのではないか、つまり誰が食べても
うまいと感じるのではないかと思っている。

毎度書いているが、東京の例えば、南千住[尾花]のうなぎ蒲焼などと
同様に、私は、名古屋の伝統的食文化として、この[山本屋本店]の
味噌煮込みうどんは、重要無形“食”文化財として
認定してしかるべきと考える。
(ついでに、店は特定しないが、当地のひつまぶしも認定である。)

きっとこの店のこの味、なくならないであろうし、
名古屋(圏)以外にはこの店は出ない、のもまたよいではないか。

 

 

山本屋本店


 




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