断腸亭料理日記2017

浅草・弁天山美家古寿司 その2

2月1日(水)夜

引き続き、浅草の[弁天山美家古寿司]。

つまみは、先付と、海苔の佃煮とマグロ、
赤貝ひものぬた。

おまかせコースは私が頼んだ寿の上に2,000円高い、12,000円の
司というのがあって、これはさらに刺身が付く。

隣の夫婦連れはなんでも、今日が旦那の誕生日のようで、
こちらである。

私の方はここからにぎり。

白身から。

鯛と平目。

左が鯛で右が平目。

平目の方が昆布〆のようである。

濃厚なうまみ、で、ある。

昆布〆の味がわかるようになってきたのは
最近かも知れない。

次は、貝。


ほっき貝と赤貝。

ほっきは茹でることもあるが、これは生。
しかし、酢はくぐらせてある。

赤貝も同様。

今、赤貝は生、ほっきも湯通しすることすら稀(まれ)であろう。
酢をくぐらせるのは、この店ならではの古い江戸前の拵え方。

結局、どちらがうまいのか、ということである。

個人的には、うまい方を選べばよい、と思うのである。
盲目的に、古い江戸前技至上主義というのも間違っていよう。

私の場合、貝類はあまり狙っては食べないので
はっきりいえばどちらでもよい、のだが、
酢を通した方が、雑味やクセがなくなるのは確かであろう。
鮮度にもよるのであろうが、好きな人は、むしろそういうものが
あった方がうまい、というかもしれぬ。

ともあれ、この赤貝はとても肉厚。
よいものであろう。

小肌と海老。

海老は頭の身もつけたさいまき海老。
さいまき海老は小さめの車海老のこと。

茹でてこれはかすかな甘酢に漬けてある。
これも伝統的江戸前仕事。

この、にぎり鮨の海老は、どうであろうか。
最も酷いのは、どこの海老だかわからないものが
開いて茹でて流通しているもの。
パサパサで食えたものではない。

この甘酢に漬けたのもわるくはないのだが、もっともうまいのは、
やはり、茹でたてをちょっと冷ましたところで
にぎったものであろう。

小肌。

これは、むろん酢〆。

小肌は、酢〆以外の食べ方はない。
どこの鮨やでも同じ拵え方の、数少ない種、で、あろう。

小肌は小さいものがよいが、
これは半身のにぎりで、大きめ。

〆加減は特に強いということはなく、
意外にノーマルではなかろうか。

次。

穴子に煮いか。

穴子は色薄くちょっと甘めに煮たさわ煮。

煮いかの方は、普通やりいかのことが多いと思うのだが、
聞けば、するめいかとのこと。

するめいかの場合、煮汁を煮詰めた甘いたれがうまい、
と、若親方。

上に塗ってある、煮汁を甘辛く煮詰めた甘いたれのことである。

(鮨やの符丁でツメといっているもの。毎度書いているが、
お客は店の符丁を使わないのが、マナーであると
思っている。オアイソにしても、店が客にするのでオアイソ、
なのである。お客が使うのは、はなはだ滑稽なことである。
本来符丁というのは、お客にわからないように
使っているという意味も多分にあって、知っていても
使わないのがルールであろう。それで私は、鮨やではもちろん
この日記でも原則使わないことにしているのである。)

これは一般的には今は、穴子の煮汁をこうした煮いかや
下足、煮蛤、などすべてに使う方が多いだろう。

しかし、穴子には穴子、煮いかには煮いかの、煮汁で作ったものを
使うというやり方、で、ある。

だからなのか、わからぬが、特にこのたれがうまい。

最後。

玉子とまぐろヅケ。

これもお約束の昔風の玉子。

その昔、玉子が貴重だった頃、嵩(かさ)を増やすために
魚のすり身などを入れたものであった。
それがこの玉子焼き。

今となっては玉子の方が安く、すり身が入った方がむしろ高級。

ヅケは本来赤身であるが、これはちょっと中トロ方向。
ツケた具合も浅め。

十分にうまい。

ご馳走様でした。

酒も二本。

腹一杯。

満足、満足。




弁天山美家古寿司





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