断腸亭料理日記2017

五反田東口とわんたん麺

1月18日(水)昼

五反田の昼。

ラーメンが食いたくなった。

五反田でラーメンというと、数は多いが
私の好みとしてはここ、という店が、少ない。

駅の向こう側でちょっと遠いのだが[はせべ]に
行こう。
ここは唯一といってよい。

“支那そば”と店名に謳っており、うまい。

東口。
呑みややら、風俗やらの奥。
郵便局の隣。


この界隈、五反田の東口駅前というのは、歩かれた方は
おわかりになろうが、かなり妙である。

道が斜めにつがなり、そこに風俗店やら
呑みややらが密集している。

なぜであろうか。
ちょっとだけ見ておきたい。

以前に西口の旧五反田花柳界のことを書いた。

東口側はどうだったのか。
この妙な盛り場をすぎると、すぐに坂になり、
西は桜田通りから池田山、東は清泉女子大のある島津山でお屋敷町。

まず、江戸の地図。

江戸の頃の五反田駅付近はほぼ田んぼ。
目黒川があって、そこに掛かっているのが
大崎橋。

これは今も同じ名前であって場所は特定できる。
「五反田駅」とマークをつけてあるが、この角から
北はカーブを描いて、雉子宮、品川台町方向へ。
(ここは池波作品「梅安」の舞台である。)
これが今の桜田通りにあたるのであろう。

もう一つ、この地図。

これはいつかというと、昭和16年。
戦前である。都制以前、まだ東京市35区であった頃。

桜田通りはまだ整備されていない。
雉子宮からの通りは曲がりくねっており、
市電も走っている。
桜田通りが整備されたのはいつであろうか。
今、明確にはわからないのだが、戦後なのであろう。

どうでもよいが、西口側“三丁目”と大きく表示が
入っている下に“二業地”と見える。
ちゃんと地図に入っていたのである。
これが明確な範囲はわからないが、五反田花柳界。

池上線(当時は池上電鉄)は五反田駅に入っている。

この当時の広い通りは大崎橋から駅下のガードを
くぐり、右に曲がり、島津山方向に行くもののみか。

郵便局の表示も見えるが、これが今もある
[はせべ]の隣の郵便局であろうか。
この郵便局の通りは、先の駅前から島津山へ向かう
通りと並行している。

これを見る限り妙な斜めの通りは見当たらない。

と、すると、斜めの通りはやはり戦後か。

結局、五反田駅の東口側の生い立ちは
今日の時点ではよくわからない。

五反田は第二次大戦の空襲でほぼ壊滅している。
ここまで見た限りでは、戦後のドサクサあたりが
起源なのではなかろうか。
山手線駅前で、おそらくそう大きくはなかろうが、
東口駅前には闇市ができていたことは予想ができる。
駅前の広東料理[亜細亜]、洋食の[グリルエフ]あたりの
細い路地の入り組み方などをみてもそんなこと
なのではなかろうか。(どちらも戦後すぐの創業である。)
ともあれ、推測の域を出ていない。今後の課題と
させていただく。

毎度のことで与太話が長くなってしまった。

支那そば[はせべ]にきてみると、あれま。

行列。

いつもはこんなことはない。TVにでも出たか。

悔しいが、あきらめて、、[亜細亜]だ。

悔しいので前のものだが[はせべ]のわんたん麺の写真だけ
出しておく。


佐野ラーメンという。

麺を佐野から取り寄せているとのこと。
佐野ラーメン自体食べたことがないので
よくわからない。
しかし、支那そばという名前に合ったさっぱり
したうまいラーメン。わんたんもよい。

そして[亜細亜]。

こちらにも、幸いわんたん麺はあった。

しょうゆ味。
ここは焼売が看板である。中身が同じなのかはわからぬが、
わんたんも肉のうまみたっぷりでうまい。

スープはさすがに伝統ある町中華。
うまみの深い、貝柱や海老も入っているのか、ここの澄んだスープをベースに
しょうゆ味。
完成度は高かろう。

これだけでも独立して[はせべ]のわんたん麺と
十分に競争できると思われる。秀作といってよい。

やはり[亜細亜]の底力であろう。

ご馳走様でした。

しかしわんたん麺、私は好物である。
名のある店で、あれば、必ず頼むことにしている。
ラーメンやでの密かな愉しみ、で、ある。
もっといいろいろなラーメンやでうまいわんたん麺を
出してもらえたら愉しいと思うのだが。




亜細亜
品川区東五反田1-13-9
03-3441-7824





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