断腸亭料理日記2017

そば・室町・砂場

7月4日(火)夜

大阪出張。

台風で大阪は大雨。

帰りの新幹線が心配されたが、雨を追い越したのか、
一応のところ遅れもなしに、18時半頃東京駅到着。

東京駅に降りると、おそろしく蒸し暑い。
雨は、、、、おっと、ポツポツときているようである。

久しぶりに、室町の[砂場]へ行くことにした。

東京駅から室町[砂場]というのはそう離れていない。

傘を差し、日本橋口の方から出て、永代通りを渡り、
日本ビルジングの脇を抜け、常盤橋の通りに出る。

この通りは右へ行くと常盤橋で日銀の角。

目の前に銅像がある。

その向こうには、旧常盤橋が今は修復中。

はて、この銅像、誰であったか。
近寄って、説明の銅板を見てみる。

あれま、青淵 渋沢栄一翁。
ここはなん度も通っているが、明治時代の旧常盤橋と、旧幕時代の
見附の石垣ばかりに目がいって、銅像に目を向けることはなかった。

翁の詳細説明はやめるが、間違いなく、日本の近代経済の父。
それも最も尊敬されるべき人であろう。

正確な言葉は忘れたが、金融は経済の血液である、であったか、
その血液で儲けてはいけない、という趣旨のことを
いわれていたのではなかろうか。
「金で金儲けをしてはいけない」ということ。
「金儲けわるいことですか?」といった人間がいたが、
いけないのである。
少なくとも、そういうことを近代日本経済の大先達が
言っていたことは、覚えておくべきである。
(真実を調べてみると、こういった言葉の出どころの一つは
渋沢家の家訓のようである。翁は子孫に対して投機を戒めている。
あれだけたくさんの会社を興したが渋沢財閥のようなものは
残していない。翁の玄孫で投資ファンド社長の渋沢健氏は
「栄一翁は、「その経営者一人がいかに大富豪になっても、
そのために社会の多数が貧困に陥るようなことでは正常な事業とは
いわれぬ。その人もまたついにその幸福を永続することは
できない」と述べている」(「道経塾 61」 2001)とのこと。
現代のCSR的な考え方で、あたり前といえばあたり前のことでは
ある。いずれにしても法律に違反しなければなんでもありの金儲け
ではいけないのである。)

新常盤橋を渡って常盤公園の脇の細い通りに入り、真っ直ぐ行って
左に折れて室町[砂場]到着。

7時前、なかなかにぎわっている。

「いらっしゃいぃ〜〜〜」の声。
ここもこの古風な出迎えをする。

一人、といって、奥の窓際のテーブルに案内される。

座って、ビール。

肴は、品書きを見て、生海苔と天ぬきを頼んでみる。
ここは小さなかき揚げを浮かべたつゆで、ざるそばをたぐるものを
天ざるといっている。
それですか?、と聞くとそうだ、とのこと。

雨と高温で汗びっしょり。
しばらく、扇子をパタパタ。

隣のテーブルは若いカップル。
男の方はちゃんとしたスーツ姿で上着まで着ている。

男の方は顔が見えないのではっきりわからないが、30ちょいか。
女の子の方は、活発だが美形で育ちがよさそうな雰囲気。
20代前半であろう。
ここだけではないが、最近はこういう老舗そばやにも
こんな若いカップルを見かけることがある。
よいものではなかろうか。

ビールはすぐにくる。

キリンクラシックラガー。ここは大瓶。

お通しが目を引く。
透明な寒天のような、、、。つまんでみると
刺身こんにゃく、である。手作りであろう。甘い白味噌。
入っている青いのは、アオサか。
冷たくて、おつ、で、ある。

生海苔。

鮨やなどで味噌汁に入れて出てくる緑のものではなく、
赤い、文字通り、板海苔にする前の生の海苔であろう。
わさびじょうゆでつまむ。

私は、天ぬき、といったが、天すい、といって
お姐さんが運んできた。

なるほど。

かき揚げは小さいものだが、つゆの方が、ざるそばの
つけ汁ではなく、かけ用のものである。
まあ、あたり前か。いくら濃い味好きとはいえ、つけ汁は
そのままは飲めない。
大阪の肉うどんのうどん抜きを、肉吸い、というが、
天ぷらの吸い物という意味か。
(ちなみに、天吸いは品書きには書いてない。)

かき揚げの下に飾り切りをした蒲鉾が沈んでいる。
天ぬきというよりも天吸いは、乙な響き。

かき揚げもうまい。

さて、そば。

ここは砂場なので、白い更科系もあるが、黒い普通のもの
「もり」を頼む。

きた。

かなり腰がある。

ここのつゆは浅草あたりよりも気持ち薄めで、そばの香りがわかる。

わさびを箸先につまみ、どんどんと、たぐる。

そばの香り、わさびの香り、つゆの香り。
三位一体となり、まさに堪えられない。

うまかった。

帳場でお勘定。

ありがとうぞんじまぁ〜〜〜す。

 


室町砂場
中央区日本橋室町4-1-13
03-3241-4038


 

 

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