断腸亭料理日記2017

鮎飯

6月24日(土)第三食

引き続き、土曜日。

鮎飯、で、ある。

鮎飯というのは、私にとっては、随分と因縁がある。

そもそもは、池波レシピ。

鮎というのは池波先生の好物といってよかったであろう。
いろいろなところで、鮎があれば、しこたま食されていた
ようである。

作品にも多数登場する。
エッセイ、小説。

エッセイではなんといってもこれ、
「よい匂いのする一夜」(講談社文庫)。

埼玉県の寄居町の[京亭]という旅館である。
先生が[忍びの旗]

という作品の舞台である武州鉢形城取材のため、
この地を訪れた時に泊まった旅館。
ここで鮎飯が供された。

また小説では、例えば、鬼平。
14巻「さむらい松五郎」。

吉右衛門版TVシリーズでは「DVDコレクション 4号」

(オリジナルでは第1シリーズ第8話。)

亡くなった三津五郎が、さむらい松五郎で、よい味を出していた。

同心の木村忠吾が、盗賊のさむらい松五郎に似ている
ということで間違われる。
舞台は目黒不動門前の料理や[伊勢虎]。
普段は筍飯が名物なのだが、季節には多摩川から運ばれた
鮎の塩焼やら、鮎飯が出される、という場面。

実際のところ、江戸の頃から多摩川(玉川)は鮎が名物で
川沿いには呼び物にしていたところが多かったようである。

ともあれ。

なぜ、因縁があるのかというと、
まあ、私が間抜けなところから話は始まっている。

作品にも書かれているが、薄味で炊いた飯を蒸らす時に
白焼きにした鮎を入れ、しばらく置き、骨を取り、身をほぐして
混ぜ込む、という。

実際に私は、これで作ってみたのである。
そうすると、どうであろう。
これが、苦い。苦くてとても食べられない。

原因は、腹を出していなかったからなのだが、
これにしばらく気が付かなかったのである。
(作品には頭は取るとあったが、腹を出す、までは残念ながら、
書かれていなかったのである。)

当初、養殖ものだからか、と思い込んで、
天然ものを探して通販で手に入れ、比較してみたり、
悪戦苦闘。

実際には養殖ものと天然ものとはらわたを比較すると、
天然ものの方が苦いといわれているらしい。
(これは実際にはわからなかったが。)

どうも、私には、鮎のハラワタは苦くないという
先入観のようなものがあったようなのである。

鮎など、子供の頃から食べ慣れていたわけではない。
数少ない食べた折に、親に、鮎は苔などを食べる
草食なので、はらわたが苦くないのだと教えられたことが
頭にこびりついていたのであった。
(塩焼の場合ははらわたも食べるのが一般的であろう。)

もちろん、天然ものの方がうまい、のであろうが、
東京では市販はほとんどされていない。
市場からダイレクトに料理やなどに行ってしまうのであろう。
養殖ものと比べられるほどたくさん食べた経験もいまだに
ないまま。

今は、そんなことで、養殖ものを思い出したように
年に1〜2回鮎飯にしている。
養殖ものであれば、今回もそうだが一匹200円はしない。
安ければ、100円程度。
だが、養殖でも、鮎飯は十分にうまいものである。

さて。
昨日書いたように、酒と薄口しょうゆ、水で水加減し
3時間以上浸水。

ここに腹を出して、素焼き(塩をせずに焼いた)の鮎を入れ

そのまま、炊く。
電気炊飯器、で、ある。

炊けたら、

一度取り出し、頭を取り、中骨を抜いて、
身をほぐし、再び飯に混ぜ込む。

できてしまえば、かなり簡単。

もみ海苔をまぶして出来上がり。

今回、二合炊いたが、鮎は三匹。

このくらい入れば、たっぷり入っている感じにはなる。

塩焼よりも手がかからず、失敗もない。

鮎というのは、身の旨みと、香りであろう。
これらを余すところなく、味わい尽くせる。

鮎飯、うまいもの、で、ある。

 



 

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