断腸亭料理日記2017

鶏と大根の鍋

10月19日(木)夜

今日は一日、雨で寒い。

最高気温は12℃。

12月の気温であろう。

寒がりな私は既に、薄めではあるが、
今週はステンカラーのコートを着ている。

アレルギーがあるので、この寒暖差には
からっきしいくじがない。

鍋か。

鍋となると、簡単に「鶏と大根の鍋」にしようか。

これはもちろん、池波レシピ。
仕掛人藤枝梅安シリーズ。

目黒碑文谷に住む、既に引退はしているが元暗黒街の元締め
菅野の亀右衛門が品川台町の梅安の鍼医としての診療所兼
自宅に訪ねてくる。

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 「ま一つ、こんなものでもよければ、いっしょに箸を入れながら、

 話し合いましょう」

 畳に部厚い桜材の板を置き、その上の焜炉(こんろ)に

 土鍋が懸かっている。

 ぶつ切りにした大根と油揚げの細切り。それに鶏の皮と脂身を、

 これも細切りにし、薄目の出汁をたっぷり張った鍋で煮ながら食べる。



池波正太郎著「仕掛人・藤枝梅安 梅安針供養〜あかつきの闇」
講談社文庫から

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菅野の亀右衛門はむろん、梅安に“仕掛”を頼みにきた。

品川台町というのは明治にはなくなっている町名だが
今の私のオフィスのある五反田からも目と鼻の先。
作品には雉子(きじ)の宮というお社(やしろ)がそばにあると
書かれている。

五反田駅の西側のガードが桜田通り。
ガードから北はゆるい坂になっており、しばらく歩いて
右側に今もビルに組み込まれるような恰好でこの界隈の
産土神、雉子神社がある。

品川台町はこのあたりの通り沿い。

この通りというのは、今の桜田通りといってよい。
今の桜田通りは国道一号線なのだが片側4車線の
幅の広い大通り。江戸の頃も海沿いを走る
東海道の脇街道で人や物の往来は多かったようである。

作品では少々の町家と田畑や林が点在する江戸郊外とだけ
描かれているがこの街道のことを考えると、
もう少しにぎやかなところであったようにも思われる。

さて。

帰り道「鶏と大根の鍋」の材料を買い出し。

と、いっても鶏手羽1パックだけ。

作品上は鶏皮と油揚げであるが、
別段油揚げはなくてもよい。

鶏手羽であれば、だしも脂も出るし、
肉も食べられる。
大根は先日の秋刀魚のおろしに使ったものが
冷蔵庫に眠っている。
濡れた新聞紙で巻いてあるが、そろそろ
いけない。

帰宅し、作る。

この鍋の大根は大きめに切った方がうまい。

だが大きく切ると時間がかかる。
それで大きな鍋で下煮。

大根の皮をむき1/4で厚く。

水を張った鍋に大根と手羽を全部入れて煮る。

30分以上であろうか煮立てて、弱火で煮込む。

これも作品では薄目のだし、とあるが、私は
味はなし。

串を刺して、火が通っていることを確認。

土鍋に分けて、カセットコンロ。

お膳に運ぶ。

作品特定されていないが、この場面の酒は
むろん日本酒で、燗酒ではなくおそらく冷(ひや)の
茶碗酒であろう。

私は、やっぱりビール。

大根を小皿に取り、しょうゆだけをかけて食う。

大根というのは、これだけでも、うまい、のである。

特に今日のものは、かなりあぶなかった。
だが、それでも十分にうまく、温まる。
むろん柔らかくなっているので
手羽も食う。

これもまた、うまい。

さて。

残ったつゆは、飯にかけて食い、
鶏と大根は、甘辛く煮ようか。




 


    

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