断腸亭料理日記2017

歌舞伎座・秀山祭九月大歌舞伎

その3

引き続き、歌舞伎座、秀山祭。

昨日は一番目(?)の「ひらかな盛衰記 逆櫓」。
4時半開演で、若干の休みを入れて、1時間半とそこそこ長い。

幕間、30分の休憩。
買ってきた、木挽町[辨松]の弁当である。

今の駅弁などの大きさからすると随分コンパクトである。
おそらく昔のサイズのままなのであろう。

包装紙を取ると、

割り箸の長さよりも短い。

中身は、

こんな感じ。

赤飯のご飯とおかずの二段。

おかずの方は、皆ここの定番。
ちょっと見ずらいが、左上から奈良漬、切りいか。
その下にかぶさって、かじき味噌焼き、うま煮。

うま煮は、里芋、たけのこ、つと麸、ごぼう、椎茸、
きぬさや、揚げボール。
あとは豆きんとんに、蒲鉾、玉子焼き。
葉唐辛子の佃煮。

つと麸というのをご存知のであろうか。

なん度か書いているのでご記憶の方もあるかもしれぬ。
ちょうど真ん中あたりの黒い椎茸の上のもの。
ちょっと、ギザギザのひだのような。

これは生麩、である。

生麩というと京都が思い浮かぶが、これは江戸のもの。
[辧松]のうま煮には必ず入るが、
私はここでしか見たことがない。

なん度か買いに行ったことがある、ご近所台東の[大原本店]
というところで作っている。
([辨松]のものがここのものかは不明。)

生麩などというと京料理で薄味、あるいは味はなし、だが
とんでもはっぷん、つと麸に限らずうま煮すべてだが、
甘辛の江戸前の味付け。それもかなり濃い。

もう一つだけ、書いておきたいのが、
葉唐辛子の佃煮。
これも、東京の味ではなかろうか。
甘味はほとんどなくしょうゆだけで味付けされて
ピッとした風味が私などには、懐かしい味。

今回の木挽町[辨松]は折詰弁当の元祖、日本橋[弁松]の分かれ。
このあたりのこと、かなり詳しく書いている。
(ご興味あれば。)

さて、幕間の休みが終わって、二番目(?)の
「再桜遇清水(さいかいざくらみそめのきよみず)」。

最初に書いたように、清玄・桜姫もの、
と言われている作品群の一つ。

演目と配役に

『「遇曽我中村」より

松 貫四 作 中村吉右衛門 監修

戸部和久 補綴

再桜遇清水(さいかいざくらみそめのきよみず)』

とある。

まず「遇曽我中村(さいかいそがなかむら)」というのが
下敷きになっている作品。

この演目は『寛政5年(1793年)3月、江戸中村座で
曽我物の二番目』として初演されたものという。

清玄・桜姫もの自体は元禄の頃には既にあったよう。
往々にして歌舞伎や人形浄瑠璃のお話は実話が多いのだが
この清玄・桜姫ものは不詳とのことだが、もしやすると
実話だったのではなかろうか。

京都清水寺のお上人様というから高位の坊さん
だったのであろう。その人が身分のあるお姫様、
お公家さん系かもしれぬ、に恋をして、いわゆる
破戒、戒律を破って堕落する、という話し。

江戸の頃にはこの清玄・桜姫ものはいくつもの種類があって、
数多く演られたようであるが、明治以降は次第に
見られなくなったようである。

もう一度、先ほどの演目と配役の部分を見ていただきたい。

「松 貫四 作 中村吉右衛門 監修」の部分。

この作者の松貫四なる人物、
これは吉右衛門その人とのこと。

四国の金丸座の復活公演のために、途絶えていた
「遇曽我中村」という清玄・桜姫ものを書き直して
初演をしたものという。

古い古い、江戸の頃の風情を残した地方の芝居小屋
ということで、この作品を選んだという。

筋立てや演出はなるほど、江戸の頃の芝居を
彷彿とさせる。

三幕三場。

2時間40分とこれも長い。

例によって、筋を書くのはやめよう。

ただ、やっぱり十分にたのしめた。

前半部分はコメディータッチ。
いかにも、庶民が愉しめる。

そして、後半は、怪談で終わる、という。
ちょっと意外な展開にもみえるが、
バラエティーにとみ、エンターテインメント性は
高いと思われる。

おもしろかったのが清玄に仕えている
寺小姓の二人。
破戒をした清玄の夜の相手をしている
という件があるが、これがかなり色っぽい。
前髪の残ったいわゆる、若衆の形で、
オジサンが見ても、ちょっとゾクッとしてしまう。
意識した演出だとは思うのだが、今の歌舞伎芝居では
あまり観られないもので、それこそ古風、かもしれぬが
オジサンにはGood、であった。








豊国画「清玄怨霊」江戸 八代目市川団十
奴淀平 三代目嵐璃寛






    

断腸亭料理日記トップ | 2004リスト1 | 2004リスト2 | 2004リスト3 | 2004リスト4 |2004 リスト5 |

2004 リスト6 |2004 リスト7 | 2004 リスト8 | 2004 リスト9 |2004 リスト10 |

2004 リスト11 | 2004 リスト12 |2005 リスト13 |2005 リスト14 | 2005 リスト15

2005 リスト16 | 2005 リスト17 |2005 リスト18 | 2005 リスト19 | 2005 リスト20 |

2005 リスト21 | 2006 1月 | 2006 2月| 2006 3月 | 2006 4月| 2006 5月| 2006 6月

2006 7月 | 2006 8月 | 2006 9月 | 2006 10月 | 2006 11月 | 2006 12月

2007 1月 | 2007 2月 | 2007 3月 | 2007 4月 | 2007 5月 | 2007 6月 | 2007 7月 |

2007 8月 | 2007 9月 | 2007 10月 | 2007 11月 | 2007 12月 | 2008 1月 | 2008 2月

2008 3月 | 2008 4月 | 2008 5月 | 2008 6月 | 2008 7月 | 2008 8月 | 2008 9月

2008 10月 | 2008 11月 | 2008 12月 | 2009 1月 | 2009 2月 | 2009 3月 | 2009 4月 |

2009 5月 | 2009 6月 | 2009 7月 | 2009 8月 | 2009 9月 | 2009 10月 | 2009 11月 | 2009 12月 |

2010 1月 | 2010 2月 | 2010 3月 | 2010 4月 | 2010 5月 | 2010 6月 | 2010 7月 |

2010 8月 | 2010 9月 | 2010 10月 | 2010 11月 | 2011 12月 | 2011 1月 | 2011 2月 |

2011 3月 | 2011 4月 | 2011 5月 | 2011 6月 | 2011 7月 | 2011 8月 | 2011 9月 |

2011 10月 | 2011 11月 | 2011 12月 | 2012 1月 | 2012 2月 | 2012 3月 | 2012 4月 |

2012 5月 | 2012 6月 | 2012 7月 | 2012 8月 | 2012 9月 | 2012 10月 | 2012 11月 |

2012 12月 | 2013 1月 | 2013 2月 | 2013 3月 | 2013 4月 | 2013 5月 | 2013 6月 |

2013 7月 | 2013 8月 | 2013 9月 | 2013 10月 | 2013 11月 | 2013 12月 | 2014 1月

2014 2月 | 2014 3月| 2014 4月| 2014 5月| 2014 6月| 2014 7月 | 2014 8月 | 2014 9月 |

2014 10月 | 2014 11月 | 2014 12月 | 2015 1月 |2015 2月 | 2015 3月 | 2015 4月 |

2015 5月 | 2015 6月 | 2015 7月 | 2015 8月 | 2015 9月 | 2015 10月 | 2015 11月 |

2015 12月 | 2016 1月 | 2016 2月 | 2016 3月 | 2016 4月 | 2016 5月 | 2016 6月 |

2016 7月 | 2016 8月 | 2016 9月 | 2016 10月 | 2016 11月 | 2016 12月 | 2017 1月 |

2017 2月 | 2017 3月 | 2017 4月 | 2017 5月 | 2017 6月 | 2017 7月 | 2017 8月 | 2017 9月 |


BACK | NEXT |

(C)DANCHOUTEI 2017