断腸亭料理日記2018

天ぷら・蔵前いせや

8月4日(土)夜

8月になった。

土曜日。

相変わらずの猛暑。

夜は、内儀(かみ)さんがの希望で蔵前[いせや]に
なった。

蔵前[いせや]は、そう、先週の花火大会に
買った、天サンドの天ぷらやさんである。

拙亭ご近所。
春日通り沿い、新堀通り(合羽橋道具街の南)の
ちょい先。
蔵前四丁目だが我々と同じ鳥越神社の氏子で、ここは三桂町会。
(旧町名は桂町でよいのか。)

創業は直接うかがったわけではないが
食べログでは1972年(昭和47年)になっている。

吉原大門前、日本堤の創業1889年(明治22年)の
名物天ぷらや、土手の[伊勢屋]の暖簾分け。

土手の[伊勢屋]の三代目が三兄弟で、千束と
ここに店を開いたといわれている。

随分前に私、断腸亭錠志の最初の拙い落語会をこの
二階でやらせていただいてもいる。

その頃のご主人からは代替わりをされており
今のご主人は私よりは若い、40代くらいであろうか。
店の中もきれいになっている。

ここは出前もされており、時々お世話にも
なっている。

今日も暑いので、私は取ろうよ、といったのだが
届けて下さる大女将(先代のお内儀さん?)に申し訳ないと
うちの内儀さんがいうので、出かけることにした
のである。

予約はなし。18時頃、下駄履きで出掛ける。

元浅草七軒町の拙亭からは10分もかからない。

小さな店。なぜかエメラルドグリーンに近い
水色に塗られている。これは以前からだが。

丸に天の字を染め抜いた紺の暖簾を分けて入る。

中はもちろん、冷房がよく効いている。
下がカウンター席で、二階は座敷。
いつ内装を変えたのであろうか、出前ばかりで店に
入るのは久しぶり。カウンターなどまだ真新しい。

ビールをもらう。

お新香と天つゆ、枝豆も。

注文はなにがよかろう。

ここは古いスタイルというのか、正しい江戸前天ぷら。

お塩でどうぞといった、今の東京の天ぷら専門店では主流の
軽く仕上げたものではなく、たっぷりの衣で
しっかりと揚げたもの。

丼つゆにたっぷりひたした天丼にする天ぷら
といえばわかりやすいか。
あるいは、そばやの天ぷらもそうかもしれない。

こういう天ぷらなので、天丼、天重がどうしてもうまい。

天ぷらに天丼付きのセットがあったので
私はそれにしてみる。Bセット1800円也。
内儀さんは天重。

天ぷらから。

大きな穴子天一本と、海老、それから蓮根。

海老はいわゆるさいまき海老で、二本を
くっつけて揚げてあるもの。

お塩でどうぞ、の今時の天ぷらやでも
穴子だけは、半生なんという揚げ方はしない。
これが正しい姿。

ほくほくでうまい。

丼。

このかき揚げは、いか。
なす天が添えられている。

味噌汁は豆腐で出汁が濃厚。

天丼の付いたセットは、この組み合わせと、もう一つ、
かき揚げ丼のかき揚げが小柱と小海老で、
天ぷらの穴子がきすになっているものとがある。

穴子で、天丼は小柱、というのが、最強になると
思うが、そういう組み合わせのセットはない。
まあ、頼めば作ってもらえるのであろうが。

ともあれ。
やはり、ここの天ぷらは丼ご飯にベストであろう。

うまい、うまい。

しかし、ちょっと考えてしまった。
この店もそうだが、少し前に書いたが元浅草だが稲荷町交差点に近い
[天三]などもこの天丼好適系のしっかり揚げたもの。

あるいは、浅草の老舗[中清][葵丸進][三定]などもそちらか。

これに対して、お塩でどうぞは、お世話になっている同じく近所の
三筋[みやこし]その他、有名店はむろんたくさんある。
[みやこし]のご主人は湯島[天庄]の出身。
まあ[天庄]も、お塩でどうぞ、ではある。
[天庄]でいえば、創業は明治42年の老舗。

これはどういうことであろうか。
浅草だけ、昔のスタイルが残ったのか。

同じ天ぷらであるが、お塩でどうぞ系と、天丼好適系は
似て非なるもの。別なものとして考えた方がよいと思われる。
私自身はどちらも好きだが。

いつ頃、どんな風に出てきて、変わっていったのか。
鮨の歴史は注目していたが、天ぷらは考えたことがなかった。
私の宿題としよう。

ご馳走様でした。








台東区蔵前4丁目37-9
03-3866-5870


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