断腸亭料理日記2018

鯵 刺身〜

7月27日(金)夜〜

金曜、帰り道、吉池に寄る。

新いかがある。

新いかというのは東京の、特に鮨やで使われている名前。
夏場に出てくるコウイカ、東京でいうスミイカの
子供のこと。

この上なく柔らかく、うまい、のであるが、

全体で3〜4cmほど。

これはいかにも小さい。
小肌の子供、新子(シンコ)もこの時期だが、
やはり珍重されて、めだかのような大きさのものが
出されることがある。こんなものは〆れば酢の味
しかしない。

この新いかもさばいたら、なくなってしまうであろう。
プロはピンセットで拵えたりする。
その技は素晴らしいが、やはりこんな大きさのものは
獲って食べるべきではなかろう。

まったくもって、日本人の初物好きは江戸の頃からの
ものであるが、あまり賢いこととは思えない。

ともあれ。

売り場を見てまわる。

鰹の半身。

半額にもなっているが、鰹を魚やで買うのは
やめることにしている。
やはり鮨やでプロの拵えたものがよろしかろう。

穴子もあるが、いつも通り高い。

う〜ん。

夏枯れ?、台風の影響が出始めているのか。

なんとなくピンとくるものがない。

閉店にはまだ多少時間はあるが、品数も
少ないのではなかろうか。

こんな時には、無難なもの。

安くなっている、鯵。

そこそこ大きなもの。
「山口萩、瀬付き」と書かれているもの。
一匹200円。

萩の鯵は、そこそこ有名か。

買ってみよう。

二匹。

帰宅。

こんな感じ。

見た目にはよさそう。

鮮度もわるくないか。

やはり刺身であろう。

三枚におろし、皮を引く。

おろすとわかるのだが、脂ののりは
さほどでもない。

どう切るか。

一口程度にザクザク切ろうか。

生姜もおろす。

盛り付け。

うまいが、やはりそこまで脂はない。

本来鯵というのは、回遊魚で、一か所に住み着く
というものではないのだが、まれに、住み着いている
のがおり、瀬付き、あるいは根付きなどと呼ばれる。

よく黄金鯵、などといわれるが、
金色に輝いて、脂があるというのが売り。

東京湾の出口である三浦、横須賀、対岸の富津、
金谷あたりでのものが有名である。

ということなのだが、、、。

それで安かったか。

まあ、鮮度がよかったので、よしとしよう。

もう一匹は翌日。

これであれば、煮びたしであろう。

鯵の場合、私は塩焼きよりは煮びたしである。

鯵の煮びたしは、池波レシピ。

鬼平である。季節は夏、まさに今。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

おまさが、本所・相生町の家へ帰ったのは夕暮れになってからである。

大滝の五郎蔵は、夜になってから帰って来た。

今日も五郎蔵は、暑熱の日中を変装して江戸中を歩きまわり、

「怪しい奴・・・・・・」

に目をつけていたのであろう。

おまさは、五郎蔵が好物の紫蘇の葉をきざみこんだ瓜揉みと、

白焼きにした鯵を煮びたしにしたものを膳に乗せ、これも

五郎蔵の好みで、冷酒を茶わんに酌(く)んで出した。

(池波正太郎・鬼平犯科帳10「むかしなじみ」文春文庫)


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

もう一つ、ここには「紫蘇の葉を刻み込んだ瓜揉み」
というのも出てくるが、これも気になる。

池波先生は瓜揉み、さらに、雷干しが大好きで、
よく書かれていた。

このところやっていなかった。
雷干しは手間が掛かるので、瓜揉みでもやってみるか。
水分の多いきゅうり揉みとはまったく違って、
乙なものである。



つづく





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