断腸亭料理日記2019

かんだ やぶそば

引き続き、1月6日。

国立の芝居がはねて、さて、どこへ行こう。

神田須田町あたり。

タクシーで内濠通りから靖国通り。
神保町をすぎて、[まつや]の手前で降りる。

着物を着ているのでやっぱり和食系がよい。
それも、老舗。

と、すると須田町界隈。

戦前以前からの老舗が残っているこの一角は
老舗でも選択肢が広い。

[まつや]は日曜休み。

靖国通りから[まつや]の手前を左に入る。
鳥鍋の[ぼたん]が手前にあって、その向こうが
あんこう鍋の[いせ源]。

[ぼたん]も日曜休みだが[いせ源]は冬は休みなしで
やっている。

あんこう鍋はちょっと重いか。

[やぶそば]。

[やぶそば]は日曜もやっている。

大晦日に[まつや]に年越しそばを買いにきた。
[まつや]も[やぶそば]も長い行列であった。

正月6日の日曜のこの時刻であれば、大丈夫であろう。

ここ、五叉路。斜め右に曲がり[やぶそば]。
営業もしているし、行列もなし。

門を入る。

建物に入り、左。

「いらっしゃい〜〜」。

二人、と指を出す。

お座敷でも、テーブルでも。

テーブル席に。

座って、お酒、お燗。

熱燗ですか?
いや、熱くしないで。

ここでも毎度お馴染みのやり取り。
この店もこうか。
[かんだやぶ]が知らないわけはない。
やはり、お客の問題なのであろう。

ちょっと考えてほしい。
湯気が出るほど熱くしたのを熱燗というのである。
それが呑みたいのか?。
ほんとうに熱燗を呑みたい人に物申すつもりはない。

ただ、馬鹿の一つ覚えのように、なにも考えずに、
燗酒といえば、熱燗というのは
やめていただけなかろうか。迷惑である。

熱燗は燗酒の代名詞ではない。

毎度書いているが、熱燗は最良の呑み方ではない。
熱くもない、ぬるくもない、適温=上燗というものが
あるのである。
湯気が出るほど熱くすれば、お燗用の酒でも風味は飛ぶ。※

「お酒、お燗」といえばよいのである。

お店もお燗とだけいわれれば、適温、
上燗を出せばよい。

皆様、ご協力をいただけまいか。
“アツカン”撲滅運動。

ともあれ。

きた。

ちょっと熱め。

ここのそば味噌は、ゆずが入っているのか、
うまい。

肴は鴨と、天のぬき。

鴨。

添えられている、溶きがらしがよい。

天ぬき。

品書きに書いていないそばやがほとんどだと思うが、
ここは、鴨ぬき、天ぬきが品書きに載っている。

藪系は、芝海老かき揚げが天ぷらそばなので
天のそば“ぬき”は、かき揚げ。

車海老など一本の大きな海老天を天ぷらそばにしている
ところは、それになる。

天ぬきは酒の肴。
上品ではないが、衣がつゆにふやけたものが
うまい酒の肴になる、のである。
衣が割合が多い、かき揚げの方が、天ぬきには
ベターであろう。

お酒をもう一本。

そばも頼む。
私は、せいろ。

途中、ちょいと席を立っている間に、きていた。

こんなふたがあったのか。
細かい配慮である。

藪系は緑色が強いと昔からいわれているが、
ここは特にその傾向が強い。
浅草並木はここまではなかったと思う。

ともあれ、うまいそば。

今年の、そば初め、であった。

ご馳走様でした。

 


かんだやぶそば

 

菊政宗

熱燗〇ではあるが、◎ではない。

蛇足だが。
言葉そのものが変わってきたのであろうか。
アツカンという言葉がノーマルな燗酒を指すのであれば、
店も、アツカンといわれて、上燗を出している?。
いや、まだそこまでではないと思うが。
とにかく。
湯気が出るまで熱くするのは、うまい呑み方ではない。
言葉と実体が混乱しているのかもしれぬ。

 

 

 

 

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