断腸亭料理日記2021

路麺・仲御徒町・かめや〜“御”問題

3848号

4月30日(金)第一食

仲御徒町の昭和通り沿いの路麺[かめや]。
存在は知っていたのだが、最近になって入ってみた
わけであるが、どうしてどうして、なかなかよい。

今は私しか使っていないと思うが、個人経営の
町の立ち喰いそば店を、路麺と呼んでいる。
アパレルブランドなどの商業施設ではなく独立して
店を構えているのを路面店というが、そのもじり。

路麺は大手チェーンにはない味がある。
区別したいのである。

[かめや]は前に書いた通り、池之端の高級割烹
[亀屋一睡亭]の経営で数軒あり、正確には
個人経営とは言えないのであろうが、大手ほどには
大規模ではなく、実質は路麺に近いと考え、
路麺と呼びたい。

また、ここを仲御徒町と書いているのは、日比谷線の
仲御徒町駅が最寄りだから。

明治30年の地図。

だが、旧町名は正確には、ここは御徒町二丁目。
昭和通りは関東大震災後の復興事業でできている
わけだが、それ以前、江戸期からここは昭和通りの
前身といえる、和泉橋通りという名前で存在していた。

仲御徒町はこの和泉橋通りの西側で、東側が御徒町
であったのである。
JR(当時鉄道省)の駅名はそういう意味では、
町名を正確に反映していない。
後からできた日比谷線の駅名は区別するためか、
日比谷線の駅の西側の仲御徒町を名乗った。

さて、この地図には御徒町に“御”を付けていない。
これ、なぜであろうか。

この“御”は江戸期の習慣であるが、幕府関係の
ものには“御”を付けていたというのは皆様お聞きに
なったことはあるかもしれぬ。

御徒町は、この周辺に幕府の下級家来である徒組の
組屋敷があって、彼らのことを尊称の御を付けて御徒組。
長谷川平蔵の先手組も御先手組。
御徒の住むこの界隈も武家地なので、正式な町名は
ないが、一般に御徒町といっていたのである。

この“御”の問題である。
湾岸、フジテレビのある台場も、御台場。
蔵前も、幕府の米蔵なので、御蔵前がもともと。

御徒町は、よく調べると、明治の町名の表記は
台東区史などを見ても実はちゃんと御はついている。
おそらく間違いなかろう。明治政府が旧幕府憎さに
取っ払ったのではなさそうである。
だが、この御のつかない、徒町表記はこの地図だけでなく
少なくないのである。これで、おを付けて読んでいたのか。
不思議である。
(その後、御徒町も仲御徒町も正式町名からは
消えてなくなっているが。)

一方、蔵前。正式町名にはこちらも御蔵前片町と、
御を付けていた。してみると、やはり新政府は
旧幕府関係のものから“御”を取ったわけではなかった。

だが、蔵前はその後、御は取れて正式町名は蔵前。
これは関東大震災後。もはや旧幕府の尊称はいらない
という世論になってきたのか。元来は文字通り浅草御蔵の
前の町なので、御蔵前片町で狭い町であったが、
蔵前という名が広い地域にこの時付けられている。
どういう経緯だったのか。既に明治からこの界隈は
蔵前と呼ばれていたのか。

一方、御台場はどうか。
長らく、海の上であまり人々とは関係はなかったが
戦後もずっと経って、埋め立てが御台場まで及び、
ビルが建つ地域になり、今は正式町名が台場。
この町名が付いたのは1995年(平成7年)のようだが
なぜ取ったのかというのも多少気になる。
だが、今、一般にはお台場という人の方が多い
かもしれない。
お台場という言葉が、江戸からフリーズにしていた
のかもしれぬ。百年たって解凍されたようである。

これ、御が付くかつかないか。蔵前はちと謎が
残っているが、どうも通称は御を残す。
正式町名は御を取る、ということになっているように
見える。御徒町も駅名に残り、町名は消えたが、
地域名は残っている。

与太話が長くなってしまった。

路麺[かめや]であった。

この日は、ノーマルな天ぷらそば。

かき揚げのものを、ここでは天ぷらそば
と呼んでいる。これは駅そばと同じであろう。
海老天、いか天などもあるこれが天ぷらそば。

なかなかさっくり揚がっている。

そして。

5月6日(木)第一食

暑くなってきたので、冷たいもの。

ここには通年冷たいぶっかけもあり、せいろもある。
路麺では珍しい。

私は初めだが、天玉せいろ。

玉子は、温泉玉子。
そばつゆに落とされている。
かき揚げは、包丁が入り1/4になっている。
ちょっと無理矢理感がなくもないか。

欲を言うと、もう少しそばつゆが濃いとよいが、
生麺ゆで立てなので、十分にうまい。

仲御徒町・路麺[かめや]
このところなかなか気に入っている。

 

03-3833-1380
台東区台東3-41-4 加藤ビル 1F

 

 

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