断腸亭料理日記2021

白魚・秋

3960号

10月27日(水)第二食〜

さて、前号につづいている。
白魚。

最初に生にぽん酢しょうゆで食べた。
早く食べなければ。

やっぱり、天ぷら、である。

パックから洗って移しておいた。


パックの写真をもう一度。

380円は安かろう。

秋に、こんなに出回っていたのか。
気が付かなかっただけかもしれぬ。

白魚といえば、寒い頃。
1月、2月。

広重 江戸土産 佃白魚網夜景

江戸前、隅田川河口、今の中央区新川、
あるいは湊(みなと)。
湊というのは、文字通り、あそこが江戸のみなと(湊)
江戸湊であったので町名に残っている。

あの付近でも、四手網で夜、篝火を焚いて、
佃島の漁師によって白魚漁が行われていた。

湊というが、江戸期長い間に土砂がどんどんたまり、
浚渫(しゅんせつ)技術がなく、遠浅が進んだ。
大型の船はここまで入ってこれなくなり、
品川沖に停泊し、荷は小舟に移し掘割を通り
日本橋をはじめ江戸市中各地に運んでいた。

そのおかげで、ずっと白魚がこのあたりでも
獲れたのであろう。

黙阿弥先生の歌舞伎「三人吉三廓初買
(さんにんきっさくるわのはつかい)」
「大川端庚申塚の場」。

かの有名な「月もおぼろに白魚の篝も霞む春の宵・・・」の
名台詞。
舞台上この日は節分。やっぱり今の2月。
初春を告げる江戸の風物詩であった。

この時期は白魚の産卵期で海から川へ向かう。
これを目掛けた漁なのであろう。

ともかくも、白魚は秋にも獲れる。

作る。

最初に大根をおろしておく。

天ぷら油を揚げ鍋に用意。
これは、胡麻油ベースでストックしてあるもの。
余熱をしておく。

白魚に粉をまぶす。

粉はすべて、天ぷら粉。
もうこれ一本。

ボールに全卵一個、冷水、氷2個。
よく溶きほぐす。
ここに粉。堅くもなく柔らかくもないところを
目指す。

ここの粉をまぶした白魚。
軽く混ぜて、180℃に上げた油へ投入。
どうもかなりの確率で入れすぎてしまう。
注意。

揚げる形は、かき揚げよりも、ちょっとバラケル
感じを目指す。
かき揚げを揚げるのは、実際には火を通すのが
難しというのが理由ではあるのだが。
食べるにしても、ばらけていた方がうまかろう。

白い紙を皿にのせ、ここにのせる。
天つゆは、いつもの桃屋のつゆ。
ただ最近、スーパーで見つけた無添加「特選」というやつ。

大根おろしは絞らない。
桃屋のつゆは2倍なので、ちょうどよくなる。

白魚というのは、天ぷらにすると、正直のところ
ほぼ味はわからない。まあ、縁起物の域を出ないか。
淡泊な魚なのである。ほぼ衣と天つゆ、おろしの味。
「特選桃屋のつゆ」はなるほど出汁感が強いよう。

なぜこんなに白魚が珍重されたのか。家康の好物で、
その後代々将軍家へ佃の漁師によって毎年献上されていた。
つまり将軍家の魚であったから。
また、先に書いたように江戸の風物詩であったから、
このあたりが理由ではなかろうか。

さて、翌日。
大量にできたので、冷蔵庫へ入れてあった。
乾麺でぶっかけそばにした。

つゆも同じ、大根おろしも。
冷蔵庫に入れた揚げ置きの天ぷらは、オーブントースターで
一度熱くする。どうせ冷やすのだが、でんぷん質の食品は
温めた方が圧倒的にうまい。

そして、まだ、残っていた生のもの。
夜中、玉子とじにした。

白魚は玉子とじも定番であろう。
淡泊なので少しのしょうゆと、塩はちょっと強め。
出汁は夜中なので、ほんだし。
青みは、細かく切った大根の葉っぱ。

よい酒の肴、で、ある。

 

 

 

※お願い
メッセージ、コメントはFacebook へ節度を持ってお願いいたします。
匿名でのメールはお断りいたします。
また、プロフィール非公開の場合、簡単な自己紹介をお願いいたしております。
匿名はお控えください。

 

断腸亭料理日記トップ | 2004リスト1 | 2004リスト2 | 2004リスト3 | 2004リスト4 |2004 リスト5|

2004 リスト6 |2004 リスト7 | 2004 リスト8 | 2004 リスト9 |2004 リスト10 |

2004 リスト11 | 2004 リスト12 |2005 リスト13 |2005 リスト14 | 2005 リスト15

2005 リスト16 | 2005 リスト17 |2005 リスト18 | 2005 リスト19 | 2005 リスト20 |

2005 リスト21 | 2006 1月 | 2006 2月| 2006 3月 | 2006 4月| 2006 5月| 2006 6月

2006 7月 | 2006 8月 | 2006 9月 | 2006 10月 | 2006 11月 | 2006 12月

2007 1月 | 2007 2月 | 2007 3月 | 2007 4月 | 2007 5月 | 2007 6月 | 2007 7月 |

2007 8月 | 2007 9月 | 2007 10月 | 2007 11月 | 2007 12月 | 2008 1月 | 2008 2月

2008 3月 | 2008 4月 | 2008 5月 | 2008 6月 | 2008 7月 | 2008 8月 | 2008 9月

2008 10月 | 2008 11月 | 2008 12月 | 2009 1月 | 2009 2月 | 2009 3月 | 2009 4月 |

2009 5月 | 2009 6月 | 2009 7月 | 2009 8月 | 2009 9月 | 2009 10月 | 2009 11月 | 2009 12月 |

2010 1月 | 2010 2月 | 2010 3月 | 2010 4月 | 2010 5月 | 2010 6月 | 2010 7月 |

2010 8月 | 2010 9月 | 2010 10月 | 2010 11月 | 2011 12月 | 2011 1月 | 2011 2月 |

2011 3月 | 2011 4月 | 2011 5月 | 2011 6月 | 2011 7月 | 2011 8月 | 2011 9月 |

2011 10月 | 2011 11月 | 2011 12月 | 2012 1月 | 2012 2月 | 2012 3月 | 2012 4月 |

2012 5月 | 2012 6月 | 2012 7月 | 2012 8月 | 2012 9月 | 2012 10月 | 2012 11月 |

2012 12月 | 2013 1月 | 2013 2月 | 2013 3月 | 2013 4月 | 2013 5月 | 2013 6月 |

2013 7月 | 2013 8月 | 2013 9月 | 2013 10月 | 2013 11月 | 2013 12月 | 2014 1月

2014 2月 | 2014 3月| 2014 4月| 2014 5月| 2014 6月| 2014 7月 | 2014 8月 | 2014 9月 |

2014 10月 | 2014 11月 | 2014 12月 | 2015 1月 |2015 2月 | 2015 3月 | 2015 4月 |

2015 5月 | 2015 6月 | 2015 7月 | 2015 8月 | 2015 9月 | 2015 10月 | 2015 11月 |

2015 12月 | 2016 1月 | 2016 2月 | 2016 3月 | 2016 4月 | 2016 5月 | 2016 6月 |

2016 7月 | 2016 8月 | 2016 9月 | 2016 10月 | 2016 11月 | 2016 12月 | 2017 1月 |

2017 2月 | 2017 3月 | 2017 4月 | 2017 5月 | 2017 6月 | 2017 7月 | 2017 8月 | 2017 9月 |

2017 10月 | 2017 11月 | 2017 12月 | 2018 1月|2018 2月| 2018 3月|2018 4月 |

2018 5月 | 2018 6月| 2018 7月| 2018 8月| 2018 9月| 2018 10月| 2018 11月| 2018 12月|

2019 1月| 2019 2月| 2019 3月 | 2019 4月| 2019 5月 | 2019 6月 | 2019 7月| 2019 8月

2019 9月 | 2019 10月 | 2019 11月 | 2019 12月 | 2020 1月 | 2020 2月 | 2020 3月 |

2020 4月 | 2020 5月 | 2020 6月 | 2020 7月 | 2020 8月 | 2020 9月 | 2020 10月 | 2020 11月 |

2020 12月 | 2021 1月 | 2021 2月 | 2021 3月 | 2021 4月 | 2021 5月 | 2021 6月 | 2021 7月

2021 8月 | 2021 9月 | 2021 10月 |

BACK | NEXT

(C)DANCHOUTEI 2021