断腸亭料理日記2022

三筋・天ぷら・みやこし

4033号

2月12日(土)夜

さて、今日は三筋の天ぷら[みやこし]。
ご近所の名店といってよいだろう。

天ぷらの季節。
と、いうとなんであるかお分かりになろうか。

そう!。
白魚、で、ある。

今は、秋にも獲れるようだが、江戸前の白魚は
初春のものであった。
もちろん、今は獲れなかろうが。

毎度書いているが、大川・隅田川の河口で
佃島の漁師が獲り、将軍家に届けていた。

黙阿弥の歌舞伎「三人吉三廓初買」大川端の場。
節分で大晦日。
有名な「月も朧に 白魚の 篝も霞む 春の宵…」
で始まる名台詞。

夜中、篝火(かがりび)を焚いて、
四つ手網で獲っていた。

これは江戸名所図会 1巻「佃島 白魚網」天保5〜7年
(1834年〜1836年)。
舟の舳先に篝火が見える。
昼間のように描いているが、むろん夜。

昼、予約のTELを入れ、17時。
やっぱり、ぶらぶら歩いて出掛ける。
春日通りを渡ってまあ、5〜6分である。

入り、ご主人に挨拶。
また、一番乗り。

カウンター、出入り口側に掛ける。

ビールと6000円の定食。

お通しはもずく酢。

こんな時期の土曜の夜、だからか、他にお客がなく静か。
ご主人も、柔和だが口数は少ない。
こういうのもよいものである。

いつもの通り、海老から。

さいまき海老、あるいは、まき海老。
小型の車海老。
これももちろん、江戸前でたくさん獲れた。
江戸湊(みなと)といっていた、古い江戸港。
霊岸島といっていた今の新川の突端あたりの
砂洲でも芝海老と共に獲れたよう。
(今はもちろん、隅田川は浚渫されているが、
遠浅の江戸湾、江戸期でも大型船はとても
付けられない湊であった。)

最初は塩で。

口開けでもあってか、油が軽く、うまい。

二本目は天つゆで。

ご主人は湯島の[天庄]で修行された方。
この近所でも[いせや]だったり、天丼に向く
古い江戸前天ぷらやは、天つゆももう少し甘い。
ここの天つゆは、東京らしく甘さとしょうゆは強いが、
濃くすぎもせず、薄くもなく、標準という感じであろうか。

海老の頭。

誰がどこで、いつ、始めたのであろうか。
頭の揚げたものが東京の天ぷらやでは必ず出る。

次は、いか。

もちろん、すみいか。
気持ち、厚いか。

きす。

昨年は不漁であったのか、大きいものを
吉池でもあまり見かけなかった。
これはちょうどよい大きさ。

そして、いよいよ、真打、登場。
白魚。

そして、右下はふきのとう。

自分で揚げてみるとわかるが、一匹ずつ、
こうして、真っ直ぐにして揚げるのは、
難しい。いや、面倒。
数匹、テキトウに油に入れると、いろんな
形になってしまうのである。
技術、で、ある。

白魚や 椀の中にも 角田川 子規

白魚は、火を通すと淡泊で白いので椀物、
玉子とじなどによくされた。
やってみたが、淡泊すぎて、味がしない。
今であれば、生で鮨、軍艦巻が一番うまかろう。

穴子。

揚げ鍋がよい位置に見えたので、ご主人が
揚げるのをよく見ていたのだが、薄く煙の上がるほどの
高温のようであった。
自分で揚げる時には、火をよく通すために、
170℃程度に下げて長めに揚げていた。
なるほど、今度やってみよう。

野菜。

左が蓮根、右が椎茸、上が小玉ねぎ。

玉ねぎの天ぷらというのは、あまく、ほくほくで
うまいものである。
ノーマルな玉ねぎでもむろんよいのだろうが、
揚げにくいし、食べにくい。
さりとて、小玉ねぎ、ペコロスは買おうとすると
意外に安くない。

最後は、天丼にしてもらった。

小柱かき揚げだが、そのまま、天丼、天茶、から選べる。
蜆の赤だし。

ここまで。
ご馳走様でした。
今日もおいしかったです。

 


みやこし

台東区三筋2-5-10 宮腰ビル1F
03-3864-7374

 

 

 

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