断腸亭料理日記

日本橋高島屋 うなぎ野田岩

9月4日(土)
今週は、帰京。

名古屋にいる、ウイークデーから、
今週は日本橋高島屋のうなぎ屋「野田岩」へ行ってみたい、と考えていた。

ここは、先日読んでいた、池波正太郎「銀座日記」にたびたび登場していた。

東京のうなぎ屋といえば、数々あるが、
南千住「尾花」、神田明神下「神田川」、麻布「野田岩」が三本指、といわれている。

「尾花」は比較的、近所でもあり、よく行っている。
活気のある、板の間の入れ込みで、江戸郊外のうなぎ屋の風情を残す。
客の注文が入ってから、蒸しにかかるのも昔のうなぎ屋。

「神田川」は神田明神の下、乙な、料亭風で、建物も古い。すべて、個室。
老舗にありがちな、敷居の高さもなく、中居さんの客あしらいも、いい。
値段もびっくりするほど、高くはない。
住まいが近かったこともあり、落語家・先代の桂文楽師の行きつけであったという。
落語「素人鰻」のモデルとも。
味付けは、しょうゆが濃い。

さて、「野田岩」である。
こちらは、縁が無く、まったく行ったこともなかった。

買い物がてら、妻とともに、日本橋へ。
デパートのうなぎ屋である。テナントである、と勝手に思い込んでいた。
来てみてわかったのだが、新館の4階、特別食堂、という、いわゆる、和洋料理のある、
昔ながらの、デパートの大食堂であった。

しかし、「特別」とついている。
出てくる物は、「野田岩」と「帝国ホテル」と、もう一軒懐石料理店
(店名は忘れた)の料理が食べられる。

ウエイター、ウエイトレスもちょっと、ホテルのようである。
日本橋高島屋にはこんなところが、残っていたのである。知らなかった。
客は、60歳以上の人品のいい、夫婦連れがほとんど。

いかにも、池波正太郎が、独りで、座っていそうな、たたずまいである。

うな重・竹、とビール。

食べる

柔らかく、「天然」であるのは、もちろん。
非常に上品な味付けである。
麻布の本店もこの味であろうか。

「神田川」が、江戸、下町の粋で乙な味。
「尾花」が小千住の意気のいい、元気な味。

これらに対して、ここは、繊細な山手の味、というのであろうか。
かといって、気取ったもの、ではない。
飯には、しっかりした、たれの濃さもある。
また、御新香のうまさも、うなぎ屋の看板である。

ちょっと、唸って、しまった。

なるほど、池波正太郎の味とは、これであったか。

遠いが、一度本店にも行ってみたい。

※平均点 2.742?? 合計? 31人

参考

野田岩・麻布(2006) 野田岩2005 野田岩2004 竹葉亭京橋店 尾花 色川 やしま



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