断腸亭料理日記2005

羊肉串

7月17日(日)夜

神田鍛冶町の中国北方菜の店、味坊

ここで、先日、店の看板でもある、羊の水餃子を作って食べる
特別な宴会があった。
この時、出た、羊肉の串焼き。これが滅法うまかった。

これの再現を思い立ったのである。

中国語では羊肉串(ヤン・ロウ・チュアン)というらしい。
(串という字は、“峠”のように、日本製の漢字、
いわゆる国字かと思っていたのであるが、
“中国製”の、立派な漢字のようである。クシの形そのまま。)

中国北方菜とは、中国東北部、いわゆる、満州族の料理。
満州族は、中国最後の王朝、清朝の出身民族でもある。
また、彼らは、騎馬民族の末裔でもあり、民族的には朝鮮族、モンゴル族、
さらには、日本民族も含めて、いわゆる、蒙古班のある同じ仲間である。

そして、この、羊肉串は、満州、モンゴル(蒙古)、
新疆(しんきょう)ウイグル、を越えて中央アジア、遠く、トルコ、
ペルシャ、アラブまで、文字通り、シルクロードを越え、
そしてさらに、南下し、インドまで、各地で微妙に違うが、
共通のメニューとして、存在している。

最近の秋葉原名物、夜店にも出る、トルコのケバブ。
インド料理では、カバブ。アラブ料理でもケーバブ。
(カバブは、先日、ジャイヒンドで食べた。

これは、いわゆる、挽肉で作った、つくね、である。)

なかなか、これは凄い料理である。
もっとも、串に刺して、焼いただけの簡単なものであるから
料理とはいえるかどうかは、怪しいものでは、あるが。

ともあれ、ユーラシア大陸を横断する、
シルクロードの食い物であることは、間違いない。

そんな、ロマンあふれる、羊肉の串焼きである。

さて、東京で羊肉を買おうとすると、どうすればよいのであろうか。
ハナマサから、アメ横の地下まで捜してみたが

ジンギスカン用の円形のスライスか、スライスする前の円柱状のもの、
もしくは、ラムチョップしかない。

串に刺せるような形の肉(塊)は見あたらない。

一計を案じる。

スライスする前の円柱、これは大抵、冷凍されている。
これを、そのまま、解凍すれば、塊が出てこないだろうか?

結局、円柱、1.5kgのものをハナマサで購入。

解凍してみる。

予想的中。これは、そこそこ大きな塊を
まとめてあるだけのものであった。
(一つの不安は、いわゆる、成型肉、
くず肉を固めたもの、かも知れぬと、いうことであった。)

串に刺せる程度の大きさに切り、下ごしらえとして、
塩胡椒、クミン、玉ねぎスライス、にんにくスライスを入れ
もみ込んでおく。(30分ほど。)
(ここは、ちょっと、自己流。ちゃんと聞いて置けばよかった、、。)

串に刺す。

焼くのは、いうまでもなく、七輪と炭である。
炭は備長炭、などというような高価なものではなく、
拙亭で、冬、火鉢に使う、岩手の木炭である。

火熾(ひおこ)しに2〜3個炭を入れ、ガスで熾し、七輪に移し、さらに、熾す。
場所は、ベランダである。(ちなみに、マンションである。)
団扇(うちわ)であおぐのは面倒なので、七輪に扇風機をあてる。
数分あてていると、簡単にカンカンに熾きてくる。
これはラクチンである。

七輪の上に、網を載せ、焼く。

以前に、焼鳥を焼いたのをこの日記に書いたことがあるが、
鶏皮なんぞを焼こうものなら、モウモウと煙が上がり、困ったことがあった。

羊肉は、煙は上がるが、たいしたことはない。
また、タレを付けることもなく、焼くだけであるため、
焼鳥よりは、かなり簡単である。


焼けた。

塩をもう一度振り、仕上げに、すり鉢で粉にしたクミンと、
赤唐辛子をかけ、完成。


これは、なんといっても、ポイントは、クミンである。
クミンというと、カレーに使うものと思っていたが、
羊肉串にも、欠かせないものであるようだ。
意図は、当然、くさみ消しであるが、さわやかな香りが食欲を誘う。

ビールとともに、喰う。
シルクロードのロマンあふれる「羊肉串」。
素朴なものであるが、うまい、うまい。


北海道人の妻などは、「羊欲」が満たされた、と、満足していた。

(北海道人は、幼少の頃より、なにかというと、ジンギスカンで
羊を食べているため、時折、羊が無性に食べたくなるようである。)




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