断腸亭料理日記2005

湯島天神下・鮨・一心

7月13日(水)夜

さて。
天神下の鮨、一心。

どうしても、月に一度は来たい。

前回、6月10日であった。

20時前。
カウンターに少し、空席がある。

ビール。

お通し。

珍しい。
今日は煮だこ、がお通し、に入っている。
それから、小鯵の南蛮漬け、白身魚のつけ焼き。

最初っから、自慢の佐島のたこが出てきてしまうのは、
どうにも、うれしい。
甘だれがかかり、柔らかく、かみしめると、うまみが
口中にじんわりと、広がる。

まったくもって、これだけでも、ここへ来る、甲斐(かい)がある、
と、いうものである。

さて、例の、経木(きょうぎ)に書かれた、お品書きをみると、
先月と大きくかわってはいないようである。

まずは、白身から。

まこがれいと金目。
どちらも、昆布〆。かれいは常磐、金目は銚子。

どちらも、格別。

かれいは、しこしこ、とした歯応えと、上品な旨み。
金目は、とろっとした脂と、濃厚な、あまみ、である。

それから、いか。

今日のものは、あかいか、と、いうことである。
表面に細かい格子状の包丁目が入れてあり、肉厚で、
柔らかく、あまい。
これは、神津島(伊豆七島)、で、あるという。

次は、光物。

春子(かすご)がある。
それと、今年の初物、秋刀魚(さんま)と、鯵(あじ)。

春子とは小鯛のこと。光物に入る。
〆てある。ちょっと生臭いかも知れぬが、それがまた、
春子独特のうまさ、でも、ある。

秋刀魚。
初物を有難がるのは、悪い癖、なのかも知れぬが、
やはり、うまいものは、うまい。

秋刀魚は、あまりにもポピュラーな魚である。
しかし、獲れる場所や、時期によって随分と味が違う。

また、光物は足が速い、と、いうことであろう。
獲れてから、口に入るまでの間の保存方法、扱い方によっても、
味がまったく、かわってしまうものであるという。
当然、生臭くなりやすい。
かといって、生臭さが、まったくないのも、
光物らしい、旨みが、ない、ということでもある。
また、食感も大事である。
水っぽいものや、反対に、堅過ぎる、というのも、
最良とは、いえないのであろう。
そんな、バランスをきれいにクリアしたものが、
うまい光物、と、いえよう。

そんなバランスを考えて、魚の目利きから、処理、
客の口に入ったときに、最もうまい状態にする、のは
他の魚以上に、難しく、寿司職人の技と腕がものをいうもの。

ゴタクが長くなってしまったが、今日の秋刀魚、は、まさに
プリっとした、食感。光物らしい、ちょうどいいうまみ、脂の加減。
絶妙な塩梅であった。

鯵は、生と、〆たものがあり、おすすめの、〆た方をもらった。
これは、とろとろの脂。
生では、脂が生臭すぎるのであろう。
これも、よい塩梅、という、ものである。

次は、あわび、はまぐり、穴子。
甘だれ、系である。

あわびは、運良く今日は塩蒸し、が、あった。

海苔で巻かれ、甘だれがかけられ、
ちょうど、海苔の上、中央に肝がのせられている。

毎度書いているが、これはもう、筆舌に尽くしがたい。
柔らかく、「滋味」というような表現が、決して言い過ぎではない。
かみしめると、うまみが、まさに、口の中に広がり、とけるよう。

幸せである。

はまぐりは、いわゆる、煮はま、であるが、煮てはいない。
ふっくらと、柔らかい。

穴子。これも、ここの店長の自慢。
一心は温めないが、常温で置かれているのか、冷たくはなく、
今の脂を充分に含んだ穴子が、柔らかく、格別である。

最後に、今日、おすすめで、食べ残したもの、、、と、いうことで。

小鰯(こいわし)と、鰹をもらう。

頭をおとした小さい鰯を、そのまま一匹、握っている。
これはすごい。完成度は先の、鯵と、秋刀魚を越えていよう。
堪能した。

やはり、この季節は、光物。
また、それを生かし、最良のものにする、すばらしい、技、である。

(すべて、一個ずつ。ビール1本。お会計、今日は、金8500円也)






住所 東京都文京区湯島3-43-12 太田ビル 1F
電話 03-3835-4922




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