断腸亭料理日記2006

(オタフク)ソース、のこと

1月22日(日)第一食

朝起きた。

雪の朝(あした)。
いい天気になったが、寒い。

寒いことと、なんな関係もないが、
お好み焼き、で、ある。

2、3日前に、妻が“広島風お好み焼き”を食べてきた、
と、いう話を聞いて、なにか、食べたくなっていたのである。

冷凍庫に豚肉はあったが、キャベツ、卵がない。
お好み焼きに、キャベツはあったほうがよいであろう。
自転車で、買いに出る。

雪かきがされていない路地や歩道は、つるつるに凍り
自転車を降りなければ、危ない。

このところ、キャベツは高騰中。
ハナマサではなんと、1個¥400。
こんなときには、¥100コンビニ。(ショップ99)
どうせ、たいした量は使わない。
小さいものの半分で充分である。
ついでに、焼きそば、も買う。卵はハナマサ。

帰宅。

豚肉を解凍。キャベツをざくざく切る。
お椀に豚肉、キャベツ、生卵、小麦粉、水を
適当に入れ、かき混ぜる。

筆者、東京者であるため、お好み焼きのレシピには
まったく思い入れはない。

テフロンのフライパンに油を敷き、
たねを広げる。
表面が乾いてきたら、引っくり返す。
軽く焦げ目がつくまで。

完成。

皿に移し、ソース(オタフク)、前に買った桃屋の青海苔、
そして、キューピーのマヨネーズを線状にきれいに
飾ってみる。

よいかな。

ちょっと、よい感じである。
朝、であるが、お好み焼きには、やはり、ビール。

たまに食べると、けっこううまいものである。

前記したように、筆者にとってはお好み焼きは、
はっきりいって、どうでもよい、メニューである。
では、なぜ、こうして書いているのか。
表題にもしたように、ソースについて、書きたかったのである。

先日は、散々、しょうゆ、について書いたが、
ソースについても、考えてみたかった。

拙亭に常備してあるソースは3種類。
ブルドックのとんかつソース、同じくウスターソース、
そして、オタフクのお好みソース、で、ある。

東京者にとっては、子供の頃からソースといえば、
ブルドック。
とんかつなどフライものには、とんかつソース。
ウスターは筆者は欧風カレーなどの料理用に。
妻は、目玉焼きにかける。どちらも、ブルドック、で、ある。
そしてお好み焼き用に、オタフクソースで、ある。

子供の頃から、お好み焼きにも東京者は
ブルドックを使ってきた。
東京には、ブルドックソースしか、売っていなかったからである。

今でも、別段、ブルドックのとんかつソースでも
お好み焼きなど、一向に問題はない。

では、なぜ拙亭に、オタフクソースがあるのか。
前にも書いたが、仕事であったから、である。

さて、またまた、ちょっと調べてみた。
あるPOSデータで売れ筋を見てみると
ソースでNo.1は、「オタフクお好みソース本格」、で、ある。
2位は「ブルドック中濃」3位は「カゴメとんかつ」。
若干のかたよりのあるデータだが、
No.1がオタフク、というのは、正直のところ、驚いた。

オタフクソースは、東京者の味覚では、甘い。
そして、薄い。

ブルドックは、濃く、辛い。

しかし、広島では、(焼き方等は別にして)上のように、
マヨネーズをかけたり、ケチャップをかけたりも、する。
こうして、いろんなものをかけると、
ちょうどいい、感じになる。

しょうゆ、の項でも書いたが、日本全国、地域によって
好まれる味覚には、特徴がある。

広島、岡山など中国地方のこのあたりは、
ソース、マヨネーズ、ケチャプ
文化圏、といってよいと、筆者は思っている。

そして、今日のテーマは、もう一つ。
先ほどのソースの売れ筋のNo.3カゴメのことである。

カゴメは、今、全国的にはケチャップや、トマトジュースの会社であるが、
地域によっては、ソースのメーカーでもある。
その地域とは、名古屋圏なのである。名古屋のスーパーには
たくさんのカゴメブランドのソースが並んでいる。
そしてなんと、名古屋は、カゴメの発祥の地でもある。

なにか、オタフクソースを生んだ広島・岡山地方と、
カゴメを生んだ、名古屋地方は、ひょっとして、味覚的に
近いのではないか、と、思っているのである。
名古屋人も、ケチャップやマヨネーズも好きである。
定食屋のミックスフライには、ソースの他に、どちらも出てきたりする。

しろしょうゆなど、甘めの味覚を好む、名古屋圏。
甘めのオタフクソースを生んだ、広島・岡山圏。

これは実は、筆者の、あてずっぽう、では、ない。
日本民俗学では、方言周圏論といって、京都から同程度離れているところに
同じ言葉が、残っている、という論がある。
これが、広島・岡山圏と、名古屋圏。
つまり、この二つの地域に、似たような文化がある、
という筆者の仮説である。

だから、なんだ?、といわれると、困ってしまうが、
筆者には、ちょっとした、発見であった。

ともあれ、今は慣れているが、こいくちしょうゆ、の味覚文化からすると、
甘めのケチャップ、ソース、マヨネーズ文化は、やはり、異文化、である。

それにしても、広島風お好み焼き、と、いう
メニュー一点に的を絞り、異文化の味覚を持つ全国に、お好みソースを広め、
No.1になった、オタフクソースの戦略、どうしてどうして
たいしたものである。



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