断腸亭料理日記2006

断腸亭の年越し・その3

さて、もう一日、年越し。

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1/1、4時に寝て、起きたのは、11時前。

雑煮、で、ある。

まずは、炭を熾さねばならない。
火鉢で餅を焼くため、で、ある。

火熾しに、炭を2〜3個入れ、ガスに掛け、
換気扇を回し、加熱、5分程度で、あろうか。

もう火鉢を使い始めて、10年以上になる。
毎度書いているが、暖房用、と、いうこともあるが、
燗をつけたり、鍋をしたり、そして、正月は、
こうして、餅を焼く。

余談だが、炭は、こうして長年使っていると、
ものによって、品質が違うことを発見する。
焼くことが目的ではないため、
備長炭などどいう、高い物を使うわけではない。
クラフトの紙の袋に入った、「岩手切炭」6kg、¥2000超、
で、ある。ほとんど、同じ物を買っているが、時によって
においのきついもの、そうでないもの、とがある。

炭は、熾し始めには、不完全燃焼しているからか、どうかわからぬが、
炭ではなく、薪を燃やした時に出るにおい、を出す。
よいものは、一度熾きると、このにおいは、出なくなる。
悪い、ものは、熾きてからも、このにおいが出続けるのである。
これは、炭の品質、と、いってよいのだろう。
木が生なのか、炭に、なりきっていないのか、、。
原因はわからぬが、あまりに、においが、ひどいものは、
頭が痛くなり、とても部屋の中では使えない。
たまたまであるが、この正月用に買ったものは
いつもの、「岩手切炭」ではなく、においが酷く、
換気扇を回しっぱなし、で、ある。

閑話休題。

ともあれ、餅を焼く。

雑煮は、基本的には、妻が用意する。
結婚した最初の正月には、たいへんであったが、
さすがに、20年近く経つと、なんの問題もなく、
作れるようになっている。

鶏がらで出汁を取り、これは、大きな寸胴に入れて、
置いておく。
入るものは、鶏肉、小松菜、里芋、三つ葉。
拙亭の雑煮は、これだけ、である。

三つ葉以外は、すべて、茹でて、冷蔵庫に入れておく。

元朝は、取った出汁に、しょうゆを入れ、
煮立て、具材を合わせる。
餅は、焼き上がったものを、入れるだけ。
間違っても、煮ない。
ついでに、具材も、煮てはいけない。
温めるだけ。

結婚した当初、北海道出身の妻に、材料と準備の仕方を
教え、雑煮が出来上がるものと思っていたら、
できて、びっくり、それは、けんちん汁であった。

つまり、材料はいった通りだが、具沢山で、
おまけに、煮込んでいたのであった。
むずかしいもの、である。

父親、などの好みもあったのであろうが、
具は、少なくてよい。
そして、味が染み込むほど煮てはいけない。
どちらかというと、餅を食う、と、いう雑煮、なのであろう。
焼いた餅は、煮ない。餅の食感が、大切なのである。

この日記を書き始めた年の、正月の回にも、
同じ事を書いていた。

我ながら、進歩していない。
(妻は進歩しているが、、、。)

もう40年同じ雑煮を食べており、今さら、びっくりする、
ということも、もちろんない。
また、父のように、大好物、というほどではないが、
やはり、この雑煮だけは正月には欠かせない。
また、自分の家の雑煮は、うまい、と、思う。

そして、むろんのこと、
これがないと、正月元旦が来た気がしない。

「雑煮を祝う」、という言い方をする。

雑煮に箸をつける瞬間は、なにか、やはり、あらたまって、
一年が始まる、瞬間のような気がし、
少し、背筋を伸ばさねばならないような、思い、にもなる。

雑煮は、民俗学では儀礼食と呼ばれている。
どんなに時代が変わろうとも、これだけは、変わらない日本人の
食文化なのではなかろうか。

雑煮をまったく食べない、という家も今はあろうか、、。

地域ごと、家ごとに違った形を持つが、多くの家庭で、
背筋を伸ばす食事、であることは変わっていないのでは、なかろうか。

皆様のお宅はどうであろうか。


さて、大晦日から、元朝まで、筆者の年越しを書いてきたが、
今年の正月三ケ日の東京は、曇り、雨、曇り、と
あまりよい天気ではなかった。
筆者自身は、毎年のように、ご多分に漏れず、昼間っから、
呑んで、寝正月、であった。

筆者の今年の目標は、、と、あらたまって、書くべきかどうか、
迷うのだが、少なくとも、この日記を書き続けること。

そして、前にも書いたが、断腸亭、として、落語も含め、
もう少し、別の展開を考え、実行すること。
よく考えると、そんな余裕があるかどうか、はなはだ疑問である
ようにも思うが、
それでも。なんとかしたい、2006年、で、ある。

そして、皆様にも、ご健勝でよい一年になりますよう、
お祈り申し上げる。



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