断腸亭料理日記2006

考察・お店の許可を得るべきかどうか・

筆者のスタンス

昨日、拙亭とも目と鼻の先、台東区小島町のうなぎや、やしまさんのこと
を書きながら、筆者が書くこの日記とお店との関係について
少し考えてみた。

今回の、やしま、のご主人との出会いは、
お互いに面識はなく、筆者はお客の一人として通い、ネット上の日記に書いた。
ご主人は、なにかのはずみで、筆者のこのページを見つけられた。
そして、ご主人が、落語会に来ていただいて、
初めて、お顔を合わせて、話をすることができた、
そういうことであった。

リアル→ネット→リアル
という順番で、何回かに分けて、出会っているのである。
一度リアルで筆者はお店も、また、ご主人の作品である、
蒲焼も、食べて、出会った。(この時点ではご主人は知らない。)
そして、ご主人は、ネットで、筆者の書いた文章を通して、
出会っている。(これを筆者は知らない。)
最後に、リアルで出会った。
三度出会うという、不思議な出会い方をしている。

あらかじめお店のことを、ネット上に書くことの許可を得る
と、いうことを、筆者は基本的にしていない。

まずこのあたから考えてみたい。

初回の店で、説明するのも、たいへんだし、
いいずらい、ということもあるのだが、
あえていえば、スタンスとして、許可を得ない、ということ。

東京グルメなどを中心にして、お店紹介を主なテーマにして
ブログを書かれている方は多い。
その中には、必ず、身分を明かし、許可を得るべきである、という人もいる。
特に、写真を撮る場合は必要である、と。

そもそも筆者は、ブログなどができる以前、1998年から、
この日記を書き始めている。
(東京グルメがいつできたのかは、わからないが、
当時、あったとしても、今ほどの影響力はなかったと思われる。)

基本的には、日記という形の筆者の表現作品であること。
筆者の場合、お店紹介、というスタンスで書いていないこと。
(そういう意味では雑誌の取材とも違う。
ある種、お店紹介ブログは、雑誌に近かろう。
また、そんなスタンスの違いに気付き、最近は、東京グルメには
書かない、トラックバックもしない、ことにしている。)

だからといって、何でも書いてよい、と思っているのではない。
当然であるが、筆者の場合、読者の皆様に、伝えたいことがある時だけ
書いている。この伝えたいこととは、むろん、よいことを、である。
(今まで、ネガティブなことをまったく書いていないか、
といわれると、皆無ではないが、けなす、文句をいう、ことを
目的に書いたことは、ない、と、思う。)

もう少し、細かく説明すると、ある種、自分の中の基準、
それは、味、技、材料、コスト、店の雰囲気、
ご店主や店の方々のキャラクター、接客スタイル、場所、
そんなこともろもろを考えて、
筆者・断腸亭の指向にあっているのかどうか。
(作品たりえるのかどうか。)
自分が、また来たい店であるか否か。
これらを基準にしている。
前にどなたかに、聞かれて書いたことがあるが、
五つ星が満点であれば、少なくとも、四つ以上の場合のみに、
書いている。(二つ、三つは書かない。)

あるいは、一度行っただけでは、書かない場合も少なくない。
一度だけでは、その店を理解することはできない。
そう思ったときには、二回行ってみて、書くかどうか決める。
したがって、結果として、書かない場合もある。

また、読者諸兄はお気付きの通り、筆者はなぜそこへ行こうと思ったのか、
どこをどう歩いて、たどり着いたのか、から書くようにしている。
(その方が、説得力があるからである。)
そういう意味で、ある種、筆者個人を主人公にした、
ドキュメンタリー作品なのである。

こうした背景もあり、身分を明かし、説明をして
許可を得る、ということが、なかなか筆者のスタンスには
馴染めないのである。

次に、写真について。
写真は、ブログ全盛の今、ことに料理について書く場合には、
なくてはならないものになってきている。
しかし、ラーメン屋や、路麺は別にして
(いや、こうした店でも、ネットに公開する以上、本質的には、同じ。
店の許可を得るべきである、という意見の人もいる。)
雰囲気のあるレストランや、老舗の鮨屋さん、
などなど、とても写真を撮る雰囲気でないところも多い。
そうした場所で、初めて来て、なんの前触れもなく、
いきなり、フラッシュを光らせ、携帯の音を出して
写真を撮るのは、店にも、他のお客さんに対してもマナー違反。

筆者が写真を撮る場合、店の雰囲気を考え、音や、フラッシュなど、
他のお客さんの迷惑にならない。
これは、最低限、必要であるとは、思ってきた。
(したがって、撮っていない店もある。)

(もう一つ。蛇足だが、筆者は携帯のテキストメモ機能を使って、
メモを取っている。食べながら、携帯を打っているのだが、
これも、あまり行儀のいいものではない、と、いうことは
自覚はしている。むしろ箸袋でも、なにか、紙に書いた方が
まだ、よいかも知れぬ。)

筆者の場合、写真は先の作品、という意味では
なくてもよい、むしろ、ない方がよい、かも知れぬ、
と、今は思うようになってきた。
もともと写真なしで、書き始めたのである。
池波先生は、文章だけでうまそう、と、思わせるものを
書かれてきた。それを目指して、書き始めた筆者である。
その初心に帰るべきかもしれぬ、と。

読者の方々からは写真があった方が、やっぱり、いい。
という声が多いことも事実である。

悩ましい問題だが、しばらくは、理解が得られているところ以外、
ことに、初回の店では写真はなし、で
いってみようかと思っている。ご理解をたまわりたい。
(自作の場合は入れるが。)

やしまのご店主の話題から始まったが、
長くなってしまった。
もう少し、お店との関係で、書きたいこともあったのだが、
またの機会にして、今日は、この辺で。



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