断腸亭料理日記2006

鴨飯に根深汁

5月27日(日)第一食

さて、今日も昨日の撮影のものを食べなくてはいけない。

と、いうわけで、第一食から鴨飯、で、ある。
そして、根深汁。

鴨飯も何度も作っている。

鴨飯は、むろんのこと、鴨鍋とセットである。
段取りは、事前に飯の方を仕込んでおき、鍋が終わって、
仕上げに炊き上がった飯を食う、ということになる。

鴨肉のうまさは二つ。
肉と脂。

持論であるが、これは料理として、あるいは、調理の仕方として、
二つにきちんと分けて考える必要がある。
つまり、鴨の料理でも肉を楽しむのか、
脂を楽しむのか、どちらなのか、はっきり分けなければならない。

鴨飯の場合は、まず、鴨肉から脂身を外し、これだけで煮出す。
この脂の出たつゆと、酒、しょうゆ、で水加減し、飯を炊く。

鴨の脂は鶏や豚、牛、などの他の肉と違う。
もちろんそれぞれ違う。
しかし、鴨だけ特別に、うまい、ように思うのである。
なにが、というのがうまく説明できないのであるが、
敢えていうと、上品、というのであろうか。
他の肉と比べて、くさみのようなものがない、というのか、
あと味がよいように思うのである。
そして、しょうゆ、との相性がとてもよい。

鴨の脂としょうゆで炊いた飯、というのは、具などなくとも
特別にうまい、と、思う。
筆者が作る場合は、飯の上に脂身を取った残りの肉を
さっと、しょうゆと酒、砂糖、の甘辛で照り煮にしたものを載せる。
ポイントは、肉は、とにかく、火を通し過ぎないこと。
鴨肉は加熱すればするほど、あっという間に、硬くなり、
その上、どんどん縮んで行く。鴨肉のうまさは、レアの血の味。
血の味を楽しむくらいの気持ちでよいと、思われる。
そして、最後に、芹のみじん切りをまぶす。

さて、根深汁、で、ある。

根深汁、などという名前だが、ようは、ねぎのみ、の、味噌汁である。
今では、さすがにねぎのみ、というのは、
どこの家庭でもあまりなかろう。
まったく、シンプル、何の変哲もない、さっぱりし過ぎ、の
味噌汁である。
昔、江戸・東京の庶民が、貧乏であった頃。
味噌汁にねぎでも入れば、御の字。
そうである。たらちね、という落語にも、ねぎのみの味噌汁は
新婚家庭の最初の朝飯として登場していた。
剣客商売では、大治郎の簡素な朝飯である。

今回、この取材用に、だしは、煮干で取ってみた。
庶民のものであるから、お安い煮干が合っていよう、という
ところからである。
さて、煮干のだしの取り方であるが、今回はちょっと調べて、
正しく、取ってみた。
まずは、頭と腹をとる。
その取ったものを500ccの水に対して、20g。
小さい煮干だと、20g、頭と腹を取るのは、
けっこうたいへんな作業である。
そして、これを水に、30分浸けておく。
(今回は一晩浸けた。)
すると、薄く色が付くくらいになる。
そして、加熱、沸騰してから、弱火で4〜5分。
そして、煮干は、漉し取る。
ここにザクザク切った、ねぎを入れ、火が通るとすぐ火を止める。
味噌を溶き入れ、軽く温め、完成。

今日は、味噌汁になって一晩たっている根深汁であり、
出来立てには遠く及ばないが、それでも
煮干でもだしをきちんと取ると、うまみは、濃い。
ついでに、味噌も、やはり、少し濃い目がよい。

鴨飯も温め直しだが、うまかった。

何度食べても、鴨飯は、よい。



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