断腸亭料理日記2006

味噌煮込みうどん・

山本家総本家・浅草雷門店

11月28日(火)夜

今日はだいぶ寒くなった。
東京の最高気温は14℃であったようだ。

なにを食べようかと考えていると、どうしても、
今日も、温かいもの、鍋、、の、ようなものに
いきついてしまう。

そこで思い付いたのが、味噌煮込みうどん、で、ある。

ご存知の通り、味噌煮込みうどんは、名古屋地方の名物である。
そして、筆者はその名古屋に97年から2年半ほど転勤で住んでいた。
(この日記もその頃、単身赴任生活時から始めたわけであった。)

名古屋というところ、東京人が住むにはとても住みにくい。
味付けや、人気(じんき)などなど。
また、仕事もしずらい。
これは昔からいわれ尽くされている。
随分前だが、タモリなんぞにも、散々揶揄されたところでもあった。

味付けは、濃く、甘い。
あんこをはさんだ、バターたっぷりのトースト。
こんなものが、喫茶店の定番メニューだったり、、。
(そうであった、喫茶店も名古屋名物である。)
鮨の酢飯も甘い。
(ちなみに、名古屋では、鮨に、鮓、という字を当てる。
なにか、すっぱそう、である。)

人気(じんき)は、一言でいうと、身内(みうち)社会。
名古屋地方では、友達のことを、ツレ、というが、
ツレ社会である。
つまり、仲間同士で、「ナーナー」で、やる。
オフィシャルもなにも、ツレ社会。
ナーナーなのである。
これは仕事がしずらいこと、おびただしい。
仲間に入らないと、仕事にならないし、
入ったら入ったで、完全に、ナーナー。
「まあ、いいじゃないか」で、けじめもなく、ずるずる、なのである。

東京人の感覚としては、
ちゃんとしてくれよ!、と、いいたくなる。

当時は相当に、ギャップを感じたのであった。
そんな、筆者の名古屋時代であるが、味付けが合わないながら、
それでも、うまいものも、いくつかあった。

一つが、鰻。ひつまぶし、で、ある。

(今、この店はもうないようである。
安くて、うまかったのだが、残念である。)

ご存知のように腹開きで、蒸さずにそのまま焼く、
関西式だが、東京人の味覚でも、十二分に、うまいのである。
(むろん、店によって、うまいまずいは、ある。)

そして、もう一つが、今日の味噌煮込みうどん、で、ある。

名古屋地方で味噌煮込みうどんは、とてもポピュラーな
メニューで、ある。
家庭料理でもあるし、町のうどんやにもあるし、
(ちなみに名古屋地方は、そば食文化圏ではない。
うどん食文化圏で、ある。)
名古屋地場の即席麺メーカー、寿がきや、では、
インスタントの袋麺も出している。

名古屋圏名物の赤味噌(八丁味噌)で味付けをした
鍋焼きうどん、で、ある。

同じ、赤味噌の名物で、味噌カツ、というのも名古屋地方にはあるが、
これはだめであった。甘すぎる。
しかし、味噌煮込みの方は、甘くはなく、
味に馴染み、自作もするようになった。

自作

そして、名古屋圏には、そこそこ高級な味噌煮込み
うどんを看板にした、山本家、というチェーンが二つある。
チェーンという言い方は、馴染まぬかもしれない。
昔風に暖簾(のれん)、といった方がよかろう。
(いかにもマニュアル化された、チェーンではない、
という意味である。)

同じ名前で、どちらも味噌煮込みうどん。
元は関係があったのかもしれない。

山本家総本家と、山本家本店。
かなり紛らわしい。

名古屋時代、筆者は、山本家本店の方を贔屓にしていた。

山本家本店

比べると「本店」の方が、うまみがより濃いように
思われたのである。

そして、東京に進出してきたのが、「総本家」の方。

一昨年であったか、秋葉原、神田和泉町、凸版印刷のそばの
路地裏という妙な場所にできた。

山本家総本家神田和泉町店

そして、昨年であったか、なぜか、東京二号店が、
浅草は雷門通りにできていたのであった。

さて、田原町で銀座線を降り、てくてく歩く。

ちょうど、天丼で有名な、そばや、尾張家の前あたりであろうか。

いや、そこまではいかない。

国際通りと雷門通りのT字路(旧仁丹塔の交差点)からすぐ。
雷門方向に向かって右側、で、ある。

20時過ぎ、店に入ると、結構繁盛しているようである。

お、そうであった、今日は、お酉様。
三の酉である。
それで、浅草の街も人が出ていたし、
店のお客にも、飾りの付いた熊手を持っている人もいる。
なるほど。

ひとまず、お酒を燗でもらい、つまみに、つくねを頼む。
混んでいそうなので、味噌煮込みも
親子、という、玉子と鶏肉の入ったものを頼む。
一半(イチハン)といって、いわゆる、1.5人前のものや
ご飯を付ける、というのもここでは一般的であるが、
やめておく。

文庫本(荷風先生の日和下駄)を読みながら、
つくねを食いつつ、お銚子二本。

そこそこ待ったが、きたきた。


こんな感じである。

ふたは、穴が開いておらず、ここに取って食べる。

そうである。
この味噌煮込みは、うどんであるが、
つゆの味が濃いので、ご飯も食えるが、つまみ、にもなるのである。

残っていた、酒も呑みながら、うどんをすすり、をつゆを飲む。

赤味噌の濃い味とまた、玉子が合う。
玉子なしのものもあるが、鶏肉はなくてもよいが、
玉子だけは、欠かせない。
半熟の黄身が溶け出し、格別にうまい。

そして、うどんは、とにかく腰が強い。
むしろ堅い、といった方がよいくらいである。
これはどちらの山本家も同様である。
地元名古屋でも、堅過ぎる、という人もいるくらいである。
まあ、好みであろうが、ここのものは、こういうもの、
と、いうことである。

二合呑んで、うどんも食って、満足、で、ある。

ぶらぶら歩いて、帰宅。


山本家総本家



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