断腸亭料理日記2007

お富士さんの植木市

−欅の盆栽、のこと。

7月1日(日)

昨日も色々作って、四食も食べてしまった。
少し、運動を兼ねて、落語でもしながら歩こうか。

なんの理由もなく、ただ歩くのも、ばかばかしい。
一応の理由は、言問橋の西詰め、旧猿若町あたりの熱帯魚屋まで、
めだかを買いに行く、で、ある。
(飼っている、めだかが、少しずつ死んで、少なくなって
きてしまっていたのである。)

下駄を履いて、出る。

天気はいいが、今日は少し涼しい。

またまた、少しブランクが開いてしまった、落語。
すぐには調子は出ないが、気にせず、今日は、軽く口ずさむ。

元浅草から、新堀通りを渡り、路地を抜け、北上。
赤札堂の前で、浅草通りを渡り、さらに北上。
どぜうの飯田屋に突き当たり、右に曲がり、国際通り。

このあたりまできて、思い出した。
今日は、7/1。5月と、6月の月末の土日は、観音裏、
富士神社の、植木市、で、あった。
(自分で書いていたのを、思い出したのである。)

植木市にも、めだかは売っている。
まわって見てみよう。

7/1だが、今日は、やっているかもしれない。
六区を抜け、花やしきの脇を通り、5656(ゴロゴロ)会館前に出る。

と、案の定、植木市は、やっていた。

ここ、5656会館の脇の道、柳通り。


突き当たり右側が、富士神社、お富士さん、なのであるが、
そこまで、道の両脇に、ずっと、植木屋が店を出している。

植木といっても、東京のことである。いわゆる、庭に植える植木は
多少ある程度で、ほとんどが、鉢物で、ある。

花もあれば、草木もあり、また、盆栽もある。
(そして、目的の、めだか屋も、ある。)

今日は、ちょっと、盆栽も見てみようか、と、思っていたのである。
盆栽、というのは、筆者、少し、思うところ、があった。

元来、盆栽は、子供の頃から、好き、で、あったのである。

子供のクセに、好き、というのも、ヘンなのであるが、
一緒に住んでいた祖父、が好きで、たくさん、様々な、鉢があった。

そして、祖父は、盆栽以外にも、鉢植えの菊やら、
十姉妹といった、小鳥。
そんなものにも趣味があった。
特段、高価なものがあったわけではないが、それでも、
江戸東京の庶民の爺さんの趣味としては、
普通のものだったのだろう。

そんな祖父は、筆者が小学校3年生の頃に亡くなったが、
それを受け継いでか、父も正月前には、松竹梅の寄せ植え、
なんぞを用意し、正月に梅が咲くように、丹精していたものであった。

子供の頃好きだった、と、いうのは、
父の影響、というよりも、いつも家にいた祖父の影響、
といった方がよいかもしれない。
小さな子供であった筆者も、真似をして、水をやったり、
箱庭、の、ようなものを作ってみたり、、。

成人し、三十を過ぎ、落語、江戸趣味、池波正太郎、、という周辺には、
盆栽、というのが、必然的に、まあ、あった、わけである。
しかし、ある理由で、盆栽には、手を出すまい、と、決めていたのである。

それは、池波先生、である。

鬼平であったかと思う。

今、どの巻の、どこであったか、覚えていないが、
確か、本所弥勒寺門前の茶店、お熊婆さんが、平蔵に、
「男も、骨董や、植木に凝(こ)るようになったら、おしまいだよ」
と、いうようなことをいっていた、からなのである。

まあ、これは、なんとなく、おわかりになろう。
そういうものに凝る、というのは、男も“枯れている”ということ。
そんなことなのであろう。

それで、あえて、盆栽は、見ないようにしていた、のである。
(ついでながら、欲しいのであるが、長火鉢、も、
買わないようにしている。)

盆栽はいけなかろうが、それでも植物は好きなので、
草花ならよかろうと、拙亭のベランダには、花菖蒲がいくつもある。

ともあれ、もうそろそろ、よいか。
安い小さいものでも、買おうか、と、思っていた今日この頃、
で、あったのである。

目当ては、欅(けやき)。

欅の盆栽は、子供の頃、家にもあった。
しかし、盆栽といえば、松や梅、楓、、あるいは、凝れば、皐月。
これらはみな、家にあった。
しかし、なぜだか、盆栽の中でも
筆者は、子供の頃から、欅が好きであった。

欅、というのは、江戸、東京近郊、武蔵野を代表する木、で、ある。
武蔵野の神社の森や、屋敷林といって、古い大きな百姓家には
大きな欅が、欠かせないものであった。
そういう記憶があり、身近に感じていたのであろうか。

ともあれ、安い、小さい欅を探す。

なん本か買って、寄せ植えにする、というのも
考えたのだが、¥1500ほどの、一本のもの、
まあまあ、よさそうな、小さな鉢を一つ買う。

それから、本来の目的の、めだかも、買う。

植木市を離れ、観音裏をぶらぶら歩きながら、
葉唐辛子の佃煮が切れていたことを思い出し、
オレンジ通りあたりの鮒金の出店をまわり、帰宅。




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