断腸亭料理日記2008

鱸(すずき)

11月22日(土)夜

木金と休んだわけだが、
どこか、旅行へいくといった、特段の予定もなく、
だらだらと、土曜日。

午後、毎度のことになっているが、
アメ横の魚やへ、いく。

実をいうと、今日も着物を着ているわけであるが、
吉池を覗いて、今一つピンとくるものがなく、
アメ横へまわってきた。
(なにも、アメ横へいくのに、着物を着ることもないのだが、、、)

別段、今日に限ったことではなく、割にいつもあるのだが、

鱸。

30〜40cmの比較的鱸にしては小さいものだが、
二本で、500円。

今日はこれにしようか。

季節的にいえば、晩秋の今、脂のある落ち鱸、
なんだろうが、小さいものでは、
さほどの脂も期待できない、かもしれない。

帰宅。

こんな感じである。


鱸とすれば小さいが、俎板の上に載せると、
やはり存在感はある。

今、鱸で鮨やなどで使われるのは、常磐だったり、
三陸だったりするのだろうか。
東京湾ではない。
池波先生を例に引くまでもなく、

昔から、鱸といえば、江戸前を代表する魚、ではあろう。

今、東京湾では鱸は多くいて、よく獲れている。
ご存じのように、東京湾は以前の、魚が住めなくなった状態から
そうとうに、回復し、穴子だの小肌、すみいか、
貝類だの、まさか、白魚はいないが、昔からの
江戸前の魚も獲れるようになっている。
中でも、鱸は、少し前にNHKで水中取材をしたものをやっていたが、
大繁殖といってよいほどに数が増えているようである。
(なんでも、工場などの排水。今は水はきれいらしいが、
水温が高いらしい。それで、プランクトンにも魚にも
住みやすいことになっている、といっていたように思う。)

今日買ったものは、安いので、東京湾産、なのか、、。

ともあれ。

まずは、鱗を落とす。
鱸というのは、鱗のある魚ではあるが、
例えば、鯛のように、びっしりとはついていないようである。

シンクの洗い桶に俎板をのせ、その上で、水をちょろちょろ
かけながら、鱗取りで、取る。
鱗取りは、鉄製、プラスチック製、形もいろいろ、
様々なものが出回っている。
今、私が使っているのは、セラミック製のもの。
以前は、包丁でやっていたが、やはり、専用のものを買った方が
楽に落とせる。

頭を落とす。
これも焼けるであろう。
出刃で、半分に割っておく。

ここから、三枚。
特段、難しいことはない。
二枚におろし、ハラスの部分の骨は後から切り取る。

半身だけ、まずは、刺身で食おう。
皮は尻尾から包丁を入れながら、取る。
この皮も焼いて、食べよう。塩をしておく。

刺身包丁で切る。
盛り付け。


この前、駒形の前川で食べた、辛子茄子がうまかったので
銀座のまつやで京漬物の辛子茄子を見つけ買っておいたもの。
それから、木曜日に買った、近所の豆腐屋の木綿。
これは奴で、そのまま。

ビールを抜いて、食う。

鱸の刺身。
これは、予想通り、脂はさほどではないが、味はよい。
鮮度もまあまあであったのだろう。
鱸という魚は、やはり、香りのもの、であろう。
白身であるが、いわゆる淡泊な白身ではなく
独特の香りとあまみがある。

豆腐の奴。
これは、ちょっと驚いた。
ほんとに、ほんの近所の豆腐屋さんで、ある。
(名前は、小松屋さん、という。元浅草四丁目、菊谷橋の交差点そばの
路地を入ったところで、ある。)
しかし、こんな場所で商売を続けているというのは、
やはり、そうとうの覚悟があって続けているのであろう、
ということが想像できる。
私の好きな、根岸笹乃雪の500円豆腐

これは、かなり、濃くあまみがあるのだが、
それと同程度のものであろうと思われる。
しょうゆをかけただけだが、抜群にうまかった。
むろん値段も100円ちょい、で、あった。
(やっぱり、豆腐は、どんなにうまくとも、このくらいの
値段が本当のように思う。しかし、なかなか、ここが開いている時間に
これないように思うが、また是非、買わねばならなかろう。)

一通り、刺身を食い終わり、頭を塩焼き、にする。
(鰭に飾り塩を、一応してみる。)


鱸というのは、刺身でよし、焼いてもなおよし。
やっぱり、香り。
これだけ小さいと、そうそう食べるところは多くはないが、
それでも、うまい。

深夜。もう半身、バターでソテーにしてみた。


味は、塩胡椒に、気持ち、タイム。
皮目から焼いたのだが、やはり、きれいに焼くのは、
至難、で、ある。
プロが焼くと、なんであんなにうまくいくのであろうか。
(それをプロというのか。)
幸い、皮がくっついて、メチャクチャ、にはなる、までは
いかなかったが、それでも、パリッともいかず、
また、大きく、皮がはがれてしまった。

それでも、味はよい。

もう一つ。
これは、翌日の夜。

ちり蒸し。
やはり、甘鯛、鱸、といったところが一般的なのであろう。


甘鯛

出汁を張った器に魚や、野菜を入れ、蒸すだけ。
見た目に豪華そうな感じに仕上がる割に簡単である。

今回の出汁は、鱸をおろした、中骨から取った。
(鱸はよいだしも出る。)
ここに気持ち、酒と、薄口しょうゆ。

鱸の切り身の頭の方を使う。
(ここを使うと、見た目がよろしい。)
塩をしておく。

野菜は、蒸し物なので、今日は小蕪。
(冬になり、蕪の季節になってきた。)
皮をむいて、火が通りやすいように、半分に切る。
青味は、蕪の葉っぱ。
茎の部分を切り身の下に置き、かさ上げに、する。

それから、きのこなどもあると、よいかと、
安いので、ぶなしめじ。
これは入れるだけ。

最後に、ひたひたに出汁を張る。

蒸気を上げた状態で、蒸し器に入れる。

蕪に火が通るのに、やはり、ある程度時間がかかる。
15分程度か。

完成。


やっぱり鱸。
蒸してもうまい、のである。

これから、寒くなる季節。
そこそこの白身が手に入れば、ちり蒸し、は、
簡単で、うまい料理、で、ある。
むろん、これで、酒も呑める。

鱸という魚、これだけ使えば、恩の字、で、あろう。
500円は、安かろう。






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