断腸亭料理日記2009

穴子とすみいか その1

12月6日(日)

さて、日曜日。

昨夜は柳橋の馥香から帰り、早くに
寝てしまった。

第一食は、冷蔵庫の冷飯を温めて、冷凍庫にあった
塩鮭を焼いて。

昼過ぎ、いつものように、アメ横に出る。
昨日の冷たい雨から、打って変わって、
肌寒いが、よい天気。

そろそろ、暮も近づいている。

アメ横、上野界隈の人出も、心なしか増えているか。
また、アメ横というところは、東京の人間には、
少し意外なことでもあるが、国内、海外(アジア)からの
観光客と見られる人々も少なくない。
こういう人は、生モノの買い物、よりは、アメ横、
上野界隈そのものの見物、なのであろう。

いつもの魚やへきてみると、先週、心魅かれた、
すみいか、が、今週もある。
迷わず、それ。

と、みると、やはりここでは珍しいが、穴子。
5〜6本あろうか。

すみいかも、穴子も、500円。

両方合わせて、
いつものおじさんから、購入。

これから。
ちょいと腹が減っているので、
なにか食べようか、と、思い、すこしぶらつく。
昨日食べ損ねた、カツカレーが頭にあったのだが、
結局、これ、というものにもたどり着かず、今日も帰りは、
春日通りからバスで。
(どうもいけない。歩かねば、と、思うのだが、
バスが見えると、乗ってしまう、のである。)

帰宅し、まずは、穴子。



やはり、5〜6本ある。
これで、500円は格安、であろう。

真ん中から半分、半身に切り、さらに鍋に入りやすいように、
1/2の長さに切る。

冷蔵庫からストックしてある、穴子の煮汁を煮詰めたもの、
いわゆる、ツメ、を、出し、レンジで軽く温める。

これを鍋にあけて、水、酒、砂糖も加え、
穴子を投入、加熱。


穴子の身から、脂が浮いてくる。
季節とすれば、穴子は、やはり、夏前あたりが、
脂がのってうまくなる、というが、今日のものは、
どこで獲れたものか、わからぬが、そこそこ太いものもあり、
わるくなさそうである。

煮立ってきたら、アルミホイルで落としぶた。
柔らかく煮る。

煮ている間に、すみいかにかかる。


穴子もそうだが、すみいか、と、いうのは、ご存じの通り、
江戸前の鮨や天ぷらでは、定番のたね、で、ある。

だが、今、東京湾産のものは、復活してきているとはいえ、
一般の魚やではみない。

東京では、すみいか、と、いうが、一般には、
コウイカ、と、呼ばれている。

関西などでは、きれいに墨を洗って流通されているが、
どうしたわけか、東京では、名前の通り、
墨が付いたままで、店頭に並べられる。
なぜであろうか。東京でも、他のいかはみな、
きれいに洗われているのに。
まあ、きれいにしてしまうと、すみいか、っぽくない、
ことは確かではある。

コウイカの類はいくつかいて、モンゴウイカ、
コブシメなんというのもある。
モンゴウイカは、紋甲いか、で、ある。
もともと、特に西日本では、天ぷらといえば、モンゴイウカ、
であったのだが、最近は数が少なくなり、輸入ものが
ほとんど。例のモロッコからいかが多く輸入されているが、
その多くは、モンゴウイカのようである。

また、コブシメというのは、沖縄などの南の島にいる種類。
私はダイビングをするので、実際に生きて泳いでいるのを
見たことがある。沖縄の海に潜ると、30cmを越える大きなものが、
ゆらゆら、ふわふわ、と、色を変えながら、泳いでいるのを
見ることができる。(沖縄ではクブジメ(ミ)などと発音する。)

コウイカの類は、同じいかといいながら、ヤリイカや
スルメイカのような、筒型をしたいかとは、
随分と形が違っているものである。

甲いか、というくらいで、背中側に濃い模様があり、
こちら側に、さばいてみるとわかるが、文字通り、
薄っぺらく、石灰質のような白く、少し軽い、
細長い楕円形の“甲”が、ある。
いかの類が、貝から進化した名残であろう、
これは、やはり、貝殻のようである。
(そういえば、南の島へいくと、オウムガイもダイビングで
見ることができる。化石生物のアンモナイトに近く、今の
イカ、タコの祖先にあたるのであろう。かたつむりを
ひっくり返したような格好で泳いでいる、あれ、である。)

と、すると、すみいか、など、甲いかの類は、
胴の形をしたいか、よりも、古い種類、なのかもしれぬ。

ともあれ。

すみいかを、さばく。
まずは、普通のいかのように、同から足とはらわたを
引き抜く。
次に、さっきの甲を身からはずす。
この甲は、今回手を切ってしまったのが、薄く、
けっこう尖っている。いや、鋭利、といってもよかろう。
気をつけなくてはいけない。

甲をはずしたら、わずかにあるエンペラから、
表裏の皮をむく。
きっかけを失うと、なかなか、薄皮はむきにくくなる。
薄皮は、できるだけむいた方が食感も柔らかくなり、
よいのだが、面倒なので、適当でやめる。

さて、煮穴子。
こちらは、だいぶ柔らかくなった。
その上、煮汁もだいぶ煮詰まって、濃くなっている。
濃すぎるか、、、。

いかは一杯だけ、刺身に切って、穴子も煮上がり、温かいうちが
うまい、さっそく食べる。




すみいかは、身が厚い。

私など、これほど、うまい、いか、というのは、
なかろうかと思われる。
あまく、うまみ、に、あふれている。

煮穴子。
よい色に煮上がった。
うまい、のであるが、、、。
後で煮汁をもう一度煮詰めることを
考えて、砂糖を足しているのだが、その量が
少し多かったか。ちょっと、あまめに仕上がってしまった。

すみいかも、穴子も、まだ残してある。
むろん、あとは天ぷら、で、ある。

どちらも、江戸前の種として、
鮨でも天ぷらでも、真打、で、あろう。

これが両方合わせて、1000円。
安かろう、うまかろう、で、ある。


明日は、天ぷら。



※お詫び※
昨日は、12/8は、会社の忘年会。
メルマガまでは配信したのですが、酔っぱらいのため、更新をせずに、寝てしまいました。
まあ、私の長い「断腸亭料理日記」生活、ですが、そんなこともあろう、と、自分としては思われますが
読者各位様に、一言、お詫びを申し上げます。
また、今後とも、断腸亭料理日記をよろしくお願い申し上げます。


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