断腸亭料理日記2009

隅田川花火と蔵前いせやの天サンド

7月25日(土)夜

今日は、隅田川の花火大会。
テレビ中継もされるので、皆さん、ご存知ではあろう。

浅草に住み始めて、なん年経ったのだろうか。
7年、8年、か。

もうあたり前になってしまっている。
浅草の夏といえば、隅田川の花火大会。

浅草界隈、あるいは川を渡った、墨田区でも、
マンションも花火の見える隅田川側から売れる。

浅草ビューホテルも建った時に話題になったが、
花火の音が聞こえるように、窓が開く、と、いう。
(今でもそうであろうか。)

歴史をさかのぼれば、両国の川開き。

従って、場所も、今は、浅草の厩橋付近と、桜橋付近の
二か所であげられているが、以前は、両国橋であった。

落語では、たがや、で、あろう。

橋の上 玉屋玉屋の声ばかり なぜに鍵屋といわぬ錠なし

たがやの枕では、談志家元は、こんな狂歌も出していた。

私の子供の頃は、花火といえば、「た〜〜〜〜まや〜〜〜〜〜、、、」
と、声をかけて、褒める、というのは、
それこそ、子供でも知っていることであった。
今、これを知っている人も、特に若い世代では、
少ないのかもしれない。

たがや、という噺は、なかなか、おもしろい。

そもそも、たが、の、説明からしなくてはならない。
たが、とは、(箍、と、書く。)木の桶や樽、を〆ていた、
竹を細く裂いたもの。
たがやは、桶、樽の修理に、その、たが、を替える職人で、
町々を回っていた。
(そういえば、桶、樽というものは、バケツなどなかった頃、
漬けものを漬けるにしても、洗い物をするにしても、
みな、使っていた。従って、どの家庭にもある
必需品であったのである。)

たががゆるむ、なんという慣用句も今や、わからなく
なってきているのだろう。

ともあれ。

その、たがや、が、両国の川開きの日、本所深川への帰り道を急き
花火を見ようと、群衆でごった返す、両国橋にさしかかった。
すると、反対の本所側から、馬に乗った旗本が同じく、群衆を
分けながらやってきた。

人に押され、たがやの持っていた、丸く束ねてあった、
竹のたがが弾け、ツ、ツ、ツッ、、と、
長く伸びて、馬上の旗本のかぶっていた笠にあたり、
笠を飛ばしてしまう。

旗本は、無礼であると、切り捨てようとする。
たがやは、平謝りなのだが、どうしても、許してくれない。
群衆は、遠巻きに見ている。むろん、たがやの味方。
刀を抜いた旗本。逃げるたがや。
もみ合いになり、はずみで、たがやは、旗本の刀を
取って、旗本の首を飛ばしてしまう。

その首が、高く上がり、群衆が、

た〜〜〜〜が、や〜〜〜〜〜。

という噺、で、ある。

いや、一般には、こういうふうに下げる。

だが、毎度のことであるが、談志家元は、別の解釈をしている。
この噺が旧幕時代にできたのであれば、為政者である、武士、
旗本の首を飛ばす、というのは、ありえない。
首が飛ぶのはたがやの方。
それで、家元は、たがやの首を飛ばしていた。

真偽のほどはわからないが、この説には説得力はある。
いかに判官贔屓、庶民の味方の落語であっても、安易に
ありえない結末にするよりは、群衆を味方に付けた、たがやが、
大奮戦をしながらも、所詮は変わりようがない、
盛り上げておいて、落とす、方が、作品としては、
上ではなかろうか、と、思う。

ともあれ、そんなこんなの、
毎年恒例、隅田川の花火大会。

「中トロ穴子ちらし」のあと、昼寝。

今年は、どうしたわけか、内儀(かみ)さんが、
この花火に合わせ、ご近所、天ぷらの、蔵前いせやの名物、
天サンドを予約をしていた。

なんでも、店の前を通りかかったら、
花火用、天サンド予約承ります、なる、貼り紙があり、
なんとも魅力を感じ、予約をした、ということなのである。

蔵前いせやさん、は、私の、断腸亭落語会第一回を
催させて頂いたところで、吉原大門前の老舗、土手の伊勢屋からの、暖簾分け
(ご兄弟)で、ある。

天ぷらをはさんだ天サンドなるものが、名物なのだが、
予約でしか食べられない。

天ぷらをパンではさんだサンドイッチ。
ちょいと、妙な食い物。
いくら名物とはいえ、わざわざ、予約までして、と
誰しも思うだろう。
そんなことで、私も食べたことはなかった。

なぜ、花火用の天サンド、なのか、それも、よくわからないが、
気は心(?)、なぁ〜んとなく、わかるような、気もする。
こんな機会でなければ、食べられないので、楽しみにしていた。

寝ていても、パンパーンと、花火の音がし始めると、
耳に入ってきた、、、。

始まったよ〜〜、と、内儀(かみ)さんに起こされた。

起きると、花火の用意ができていた。
用意というのは、その、天サンドを2パック。
その他に、鶏のから揚げやら、枝豆やら。

天サンド


開けるとこんな感じ。


なるほど、海老天がはさまった、サンドイッチ、で、ある。
真ん中は、いかの入った、かき揚げ。

TVでは、テレビ東京の花火大会の中継が映っている。

私達の住む、元浅草の南のあたりは、厩橋の第二会場の
ほぼ真西にあたり、こちらが直近で、見える。
見えるといっても、残念ながら、我が家は西南向きで、
窓から身を乗り出せば見えるが、基本的には、
毎年、下に降りて、道から見る。

天サンドや、枝豆をつまみながら、先に始まった、
第一会場の花火をTVで、視る。

天サンドの味、で、あるが、
思ったほど、ヘン、ではない。
ヘンではないが、なにも無理して、パンにはさまなくとも
よいではないか、というのが、正直な感想で、ある。
やっぱり、天ぷらは、飯の方が合うことは間違いない。
(天ぷらをワンハンドで食べたい、ということであれば、
結局、天むす、ということになるのか。
そういえば、あれ、一時は、東京でも出回っていたが、
最近は見ないような?。どこへいったのだろうか。)

開始から、30分程度すぎてからであろうか、
第二会場からも打ち上げが、始まる。

始まると、浴衣(ゆかた)に着替え、缶ビールとパックの天サンド持って、
下駄を履いて、下へ降りる。

やっぱり近所の皆さんも、三々五々出てきて、道に立ったり
座ったりしながら、ビルの間から、2/3ほどは見えている花火見物。

我々も、路地に座り、見る。
完全ではないが、それでも大きく見え、
ドーンと、大きな音も聞こえる花火は、よいもの、で、ある。





(デジカメの花火モードで撮ってみたが、なかなか、むずかしい、
ものである。三脚でも立てないといけなかったようである。)

見ながら、コンビニに缶ビールを買い足しにいったりし、
よいかんじの隅田川花火見物。

今年も終了、で、ある。



蔵前いせや


TEL:03-3866-5870
住所:東京都台東区蔵前4-37-9





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