断腸亭料理日記2009

浅草観音裏・鮨・久いち

6月22日(月)夜

鮨が食いたくなった。

仕事は8時前まではかかりそう。
どこがよかろうか。

帰宅に便利は、やはり、浅草。

先日いった、観音裏の久いち

ここは、そこそこ遅くまで、やっているようである。

この日記を見返してみると、いったのは、ちょうど一か月前。
いや、久いち、だけでなく、この間、他の鮨やにもいっていない。
お祭りがあったりしたせいだろうか。

ともあれ。

8時前にオフィスを出て、牛込神楽坂駅に急ぐ。

大江戸線に乗って、新御徒町。
あそこに直行するのであれば、TXの浅草駅からが
最も近い。

念のため、TXに乗り換える前に、
店にTELを入れてみる。
入れるよう。
10分、15分後、と、伝える。

大江戸線も深いが、TXの浅草駅というのも、
随分と地下深い。
改札階まで長いエスカレーターを上がり、
久いち、は北側なので、改札を出て右側、
こちら側の出口から出るのは初めて。

自転車置き場があり、そこを経由して、地上に出る。
ちょうど米久へ入る路地のあたり。

路地に入り、ひさご通りを左に曲がって突き抜けて、
言問通りを渡り、さらに路地を左に入り、到着。

既にネクタイはしていないが、そうとうに
汗をかいてしまった。

アールのついたちょっとかわった格子を開けて入る。

お!。

親方の顔が見え、
貸し切りになっちゃいました、と。

時間が八時半すぎ。
このくらいの時間で浅草あたり、それも
駅から遠いこのあたりでは、こうであろうか。

真ん中に座る。

親方は、うちは11時くらいまではやってるんですよ、
と、いう。
だけども、ネットに、9時半とか書かれちゃって、、
と。

なるほど。

私も、それを見ていたが、某グルメ投稿サイトに
そう書いてあった。

前回も書いたが、久兵衛出身である、という肩書で
ネットで話題になっており、そのあたりからの
お客が多いのであろう。(私もその一人だが。)
ネットの功罪、と、いうもの、で、あろう。

むろん人によるだろうが、おおかたの鮨職人でネットを
綿密にチェックされている人、などは、私が知っている
範囲でもまずいない。
(あんまり、毎日ネットをチェックする鮨やの親方の
にぎる鮨を、食べたいものでもないが。)

こういう投稿サイトは、利用をする方とすれば、
初めていく店など、評判がわかり、便利である。
しかし、営業時間などを含めて、店の基本情報も
許可を得ているものではなく、サイト運営側でこまめに
チェックしているわけでもなく、一般ユーザーの投稿で
書かれているだけ。
評判については、まあ、大幅にへんなものは、見受けないが、
営業時間などが間違っているだけで、お客の入りが
左右されてしまう、というのは、やはり、問題であろう。

グルメ系の投稿サイト、は、本来はアメリカから入ってきた
仕組み、で、あろう。アメリカなどであれば、店側でも
チェックをすべきである、という文化がありそうだし、
また、実際にしていそう、で、ある。
しかし、日本のそれも伝統的鮨職人、鮨やの親方に、
それを要求するのは違ってようし、また先にも書いたが、
お客としてもあまりしてほしくない、とも思ってしまう。

日本でも、長く営業をしており、
既に評価が定まった店では、ネット情報の方が
むしろ、偏った情報であることがある。
しかし、ここ、久いちのような開店して、さ程経っていなかったり、
小さな店では、ネットに書かれた内容の、影響は大きい。

私自身もこういった文章をネットに書いている。
私の基本的なスタンスは、公平な案内や情報を
書いているつもりはない、と、いうものである。
あくまでも、個人的な日記、で、ある。
(お気付きだとは思うが、食べているものや、いった飲食店の、
すべてを書いているわけではない。一般には有名なところで、
店にはいっても、書いていないところは、たくさんある。
それは、当然、断腸亭料理日記として、筆者である私が
書くべきものとそうでないものを取捨選択している、からである。
また、その上で、書くのであれば、ネガティブなことは、
極力書かないように努めてもいる。)

また、以前には、そうした投稿サイトに書いていたこともあるが、
先のような理由や、その他もろもろのことで、
最近は、努めて自分自身のページ以外には、書かないように
している。

しかし、この日記も、ネット上にある以上、
公平な案内情報として読まれる可能性は否定できず、
その責任は免れないことは承知してはいる。

食い物のブログや、投稿を趣味のようにしている方。
自戒も含めてだが、このあたり、慎重すぎるくらい、
慎重になってしかるべきであろうと考える。

ともあれ。

9時前の、久いち。
親方と、指し、で、ある。

ビールをもらい、前回同様、お通しを三種から選ぶ。

なかで、養老豆腐、と、いうもの。
聞いてみると、山芋で作った豆腐のようなもの、らしい。
もらってみる。

白いフワフワした豆腐状のもので、甘酢が掛けまわしてあり、
夏らしく、さっぱりして、よい。

そして、つまみは、と。
鰹をもらってみた。

たたきで、二切れほど出てきた。

今年は、自分でもなん回かさばいて食べているが、
この時期にしては、脂がある。

つまみは、これだけで、にぎってもらう。

一個ずつ。

光りものから、

鯖。

この時期、鯖は珍しいですね、というと、
夏は日本海、です、という。

それから、小肌。

なのだが、親方は、メダカのような、新子を、
見せてくれた。

ほー、もう出てきたか、てなもの、で、ある。

開いて、拵えてしまうと、2cmほどであろうか。
十枚づけにするといっていた。

私もこの頃のものを、食べたことがあるが、
味などせず、まあ、初物、縁起もの、の、域は出ない。
少なくとも、この二倍くらいにはならないと、
いけなかろう。

小肌の子供、新子、というのは、
小肌らしい、デリケート香りが強く、うまい。
夏の鮨やの風物詩として、江戸前鮨好きの間では、
昔から、待っているもの、で、ある。

そんなことで、出てきてすぐの、こんなメダカでも
高値で売れる。

で、むろん、それはやめて、
普通の小肌もあるようなので、そっちをもらう。

それから、春子。

次は、白身。

こち。

歯応えがあり、香り、ほんのりとした、あまみ。
なかなか、うまい。

鯛昆布〆
これも、あまく、うまい。

いわれて、頼んでおいた、マグロヅケ。

それから、いか。

これは、すみいか。
まだあったのか、というものか。

蛤。
(もう産卵期?)

あわび。

柔らかく、滋味があり、うまい。

またまた、しつこく、聞いてしまった。
(美家古、鶴八の系統で)塩むし、と、いっているが、
違うのか?という疑問。

結論からいうと、同じ、であるようだ。
久兵衛でも、塩むし、と、いっていたと、いう。

結局、違うのは、それぞれの店の、拵え方の微妙な差異、
であろう。結果として、美家古系統は、比較的
硬めで、久兵衛にしても、吉野の系統にしても
柔らかめを追及していった、ということではなかろうか。

海老。

茹で立て、小さめの、さいまき海老。

色もよく、先日は、はらわた、が、残ったのか、
ちょっと、苦味があったが
今日は、そんなこともなく、十分に、うまい。

最後に、穴子。

例の、半分に切って、塩とたれ。

うまいのだが、前にも書いているが、ここはにぎりが
小さく、それをさらに半分にしてしまうので、
ぼやりしていると、味がわからない、
ということになってしまう。

さて。

ビールから、冷酒にかえて、一合。

うまかった。

勘定は、11000円。

やはり、安かろう。


親方と指しなので、いろいろと
話を聞いた。

年齢は、正確には、三十代ではなく、今年四十になるとのこと。
また、ここの生まれ育ちで、
この店の上に一人で住まわれている、と、いう。

夜遅い、と、いうのはうれしい。

また、帰りに、寄ろう。

帰りは、歩こう、かとも思ったが、

あまりに暑く、国際通りで、タクシーを拾い、
帰宅。





TEL 03-3874-2921
住所 東京都台東区浅草3丁目18−8











断腸亭料理日記トップ | 2004リスト1 | 2004リスト2 | 2004リスト3 | 2004リスト4 |2004 リスト5 |

2004 リスト6 |2004 リスト7 | 2004 リスト8 | 2004 リスト9 |2004 リスト10 |

2004 リスト11 | 2004 リスト12 |2005 リスト13 |2005 リスト14 | 2005 リスト15

2005 リスト16 | 2005 リスト17 |2005 リスト18 | 2005 リスト19 | 2005 リスト20 |

2005 リスト21 | 2006 1月 | 2006 2月| 2006 3月 | 2006 4月| 2006 5月| 2006 6月

2006 7月 | 2006 8月 | 2006 9月 | 2006 10月 | 2006 11月 | 2006 12月

2007 1月 | 2007 2月 | 2007 3月 | 2007 4月 | 2007 5月 | 2007 6月 | 2007 7月

2007 8月 | 2007 9月 | 2007 10月 | 2007 11月 | 2007 12月 | 2008 1月 | 2008 2月

2008 3月 | 2008 4月 | 2008 5月 | 2008 6月 | 2008 7月 | 2008 8月 | 2008 9月

2008 10月 | 2008 11月 | 2008 12月 | 2009 1月 | 2009 2月 | 2009 3月 | 2009 4月

2009 5月 | 2009 6月 |



BACK | NEXT |

(C)DANCHOUTEI 2009