断腸亭料理日記2009

柳橋・美家古鮨・浅草橋支店

3月9日(月)夜

先日の、ベスター先生の『築地』の記事を書いていたら、
鮨が食いたくなった。
(実は、今日から、三日間鮨やが続く。)

この前、柳橋の美家古鮨本店へいったが、

この時、先にいこうと思った、浅草橋店。

先日、立ち喰い、と、書いたが、これは私の勘違いであった。
立ち喰い店は別で、総武線の高架下にある。
従って、この浅草橋、柳橋界隈に、美家古鮨は
本店も含めて、都合三軒ある、と、いうわけである。

見たところ、安そうであったので、
浅草橋回りで帰り、寄ってみようか、と、思ったのである。

牛込市谷のオフィスを出て、JRの市ヶ谷駅へ。
総武線に乗って、浅草橋まで。

以前に、葛飾の四つ木に住んでいた頃は、このルートで
浅草橋からは都営浅草線で会社まで、通っていた。

そのため、浅草橋駅界隈は、そこそこ歩きまわっていたのだが、
この美家古鮨の浅草橋店には入ったことがなかった。

浅草橋の千葉寄りの改札から出る。
出たところが、蔵前通り。

(なん度か書いているが、今はこの通りは、江戸通りといっている。
しかし、私は、蔵前通りと書くようにしている。
これは、池波先生の書かれていたこと。
江戸の昔から、浅草御蔵の前を通る、この通りは、
蔵前通りと、決まっている、と。
おそらくは、蔵前橋ができ、蔵前“橋”通りを作った際に、こちらの名前を
混乱しないようにと、無造作に変えてしまったのだろう。

だいたいにおいて、江戸通りとは、なんたる名前、で、あろうか。
なにをもって“江戸”なのか、江戸ならば、東京都心部至るところ、
江戸ではないか。
そう。そういう意味では、大江戸線はまだわかる。
そんなわけで、蔵前通り、と、書くことにしているのである。)

駅の階段を降りて、すぐに右、また、右。
総武線の脇、北側の路地に回り込む。
そして、すぐにまた右の路地に曲がる。

先日出したが、もう一度、江戸の地図。


神田川に架かる今の浅草橋。
江戸の頃は、浅草御門。
神田川は江戸城の外濠の役割もはたしており、
その、外濠の城門という意味があり、ここに
浅草御門があった。

そして、ここから先が古くは、奥州日光街道。
(今の日光街道は、上野から昭和通りだが、以前は
ここから浅草、山谷、小千住(現南千住)が本道だった。)

上の地図、その奥州街道=蔵前通りの西側には、
茅(かや)町、瓦町という町名が見える。
これは、江戸初期、このあたりがまだ、さほど開けておらず、
茅があったり、瓦を焼いていた、とのこと。

そして、その裏側は福井町。
できたのは、江戸も少し下った、享保の頃という。
この福井の名の由来は、福井藩の藩邸であったということ。

そして、今の美家古鮨の少し先に銀杏岡八幡という神社がある。
この神社も歴史は古いよう。八幡というくらいで、源氏、
源頼義、義家に縁がある。
奥州征伐の折、この地を通りかかり、
大川の川上から流れてきた銀杏の枝を挿したものが
根付き、戦いが終わり、帰りにこの地を再び通りかかり、
根付いた銀杏を見て、ここに八幡社を勧請したという。
そんな伝説もあるようである。
江戸の頃は、大銀杏があり、名物であったという。
(今も銀杏はあるが、一度、文化年間に火災で燃え、
後に植えたものという。)
そういえば、見にきたことはないが、
この神社のお祭りは、氏子町内とすれば、
私の住む鳥越神社の南隣りになると思うが、
祭の日は、六月の第一週で、鳥越祭りの前の週だそうな。

ともあれ。

美家古鮨浅草橋店。

店前に立ち、暖簾から、ちょっと店の中を覗いてみる。
お客がいた。(あたりまえか。)ちょっと、恐る恐る、
格子を開けてみる。
(なぜ恐る恐るなの。皆さんもいかれてみればわかると思うが、
この店、なぁ〜んとなく、入りずらい雰囲気を
醸し出している、のである。)

狭い店内。
くの字のカウンター。

先客は若い一組のカップル。

この店は、角地に建っているので、
両側が出入り口、で、ある。

テレビでは野球(WBC)がかかっている。

手前のカウンターに座る。

カウンターの向こう側は、ご主人一人。
白髪混じりの角刈。

だが。
外からの雰囲気ほど、どう、ということはない。
新しくもなく、(さりとて、ここの本店のように、
時代がついている、ということでもないが、、)
あるいは、飾り立ててもいない。
しかし、むろん小ぎれいに掃除が行き届き、
落ち着ける。

ここには冷蔵ケースはあるのだが、その冷蔵ケースの
切れた部分、つけ台だけのところに、座る。
(そこが、ご主人の前であった。)

おしぼりと、箸が置かれる。


十字にクロスさせてある。
箸袋は、柳ばし代地 美家古鮨本店、の、名前。
同じものを使っているのだろう。

お酒、お燗で、頼む。


大関の一合徳利のガラス瓶。
お通しは、いかの塩辛。

まずは、小肌。


やはり美家古鮨、酢飯が大きめ。
にきりを塗って、つけ台に直に置かれる。

切れ目が入り、蝶のようできれい。

味は?
いや、十二分にうまい。

いか。


続いて、たこ。


たこがうまい。
きちんとした仕事がしてあるのではなかろうか。

鯵。


大葉をはさんでいる。

続いて、鰯。


軽く〆ているか。

どちらもうまい。

最後に、穴子。


炙って、出てきた。
見た目もよい。
立派な穴子。

とろけるようである。

二個(カン)ずつで大きさも大きいので、このくらいで
腹一杯。
(聞いたわけではないが、一個ずつは出さないか。)

お勘定。
(3000円ちょい。)

柳橋美家古鮨、浅草橋支店。
値段は本店よりは、安め、に、している、のだろう。
ねたも、いわゆる高級なものも置いていない。
しかし、特に江戸前仕事のねた、穴子、小肌、たこ、など、
ちゃんとしている、ように思う。

むろん、回っている鮨やとは、比べるまでもない。
あるいは、上野あたりの、このくらいの値段設定の
チェーンと比べても、上だろう。

うまかった、うまかった。

いい気分で、ぶらぶら歩いて、帰宅。
(15分ほど。)

店に入るまでは、ちょっと、恐る恐る、ではあったが、、
よく考えたら、浅草橋もご近所である。
ちょいと寄るにはよいだろう。






美家古鮨・浅草橋支店
TEL:03-3861-4672
住所:〒111-0053 東京都台東区浅草橋1丁目19−9



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