断腸亭料理日記2009

柳橋・美家古鮨・立喰処

3月14日(土)第二食

さて。

鮨や、連続三回シリーズ、
三回目。

今日は、表題の、柳橋美家古鮨の立喰。

3/9の月曜、美家古鮨の浅草橋店
と、いうのへ、会社帰りに寄ってみた。
この時も書いたのだが、柳橋美家古鮨の名前を冠するのは、
柳橋の本店と、浅草橋店に加えて、もう一軒あった。

実のところ、浅草橋店は知ってはいたが、
私はこの、立喰、は、存在すら知らなかった。

これは、そうとうに、我ながら、不思議なことである。
浅草橋の駅のまわりは、いや、というほど、ウロウロしている。
なのに、で、ある。

本店、浅草橋店ときたら、この、立喰、にもいってみなくては
なるまい、ということになる。

昨夜は、天神下の一心へいったところであるが、
こうなったら、一気に、ここにもいってみよう。

そもそも(あんなに狭い区域であるのに)、
具体的にどこにあるのか、すら、知らない。
電話帳(インターネットタウンページ)で調べると
駅の直下(ちょっか)。
総武線の、ガード下というのか、
高架下、のようである。
高架下もうろうろしているが、
そんなものがあったっけ?で、ある。

ともあれ、高架下といっても、そう広い区域ではない。
いけばわかるか、で、ある。

お昼からの営業のようなので、11時半前、出る。

今日は、春の嵐か、朝から雨風が強い。
一部、電車も止まっているところもあるよう。

自転車のつもりだったが、車。

先に、床屋。
御徒町、昭和通りのQB。
すぐ近くの100円パーキングに停め、髪を切る。
(こんな天気だからか、客もおらず、待たずにできた。)

浅草橋にまわり、また、コインパーキングへ。

高架下へきてみた。
が、やっぱり、見つからない。
総武線の高架下は、東と西の改札の間、
さらに、その先、両側と、実際には、
随分と長い区間に、飲食店やら、店舗、
倉庫、などなど、色々ある。

先の電話帳によれば、東口、蔵前通りのすぐそば。
(後から考えると、今まで気が付いていなかったのだから、
その場所が、頭の中で、空白、であったのである。
だから、改めて探しても、空白、を、思い込んでいるので
見つからない、のである。)

結局、総武線の南側の高架下。
ほぼ、蔵前通りに接しているところ。
ここに、見つかった。


見たところの間口は広い。
しかし、高架下である。
反対側にも店舗(和菓子や)があるので、
奥行きは、ほとんどない。

12時前。
先客はいない。

なんとなく、やはり、少し勇気がいる。
ガラス戸を開け、入る。

中は、ご主人一人。
眼鏡をかけ、角刈り。
(ちょっと小太り。)

ここはちょっと変わったシステム(設備)である。

普通の冷蔵ケースがあり、客側、そのすぐ下につけ台にあたる
平らなスペースがあり、さらに、その下が流しになっている。
そして、その流しのところどころに、水道の蛇口。
これらが、すべて、ステンレス製。
しょうゆや、小皿は、その蛇口の付近に置かれている。

箸も置かれているが、手でつまみ、自ら蛇口で手を洗う。
そういうやり方、で、ある。

立喰い鮨、格安鮨というのは、昔から東京にはある。
浅草花川戸の魚がし寿司
などはやはり、古いのだろう。
だが、客用の蛇口がある鮨やというのは私は他には知らない。
(昔は、よくあったシステムであろうか。)

お茶が出る。

なんとなく、初めてのところで、ご主人とサシ、
というのは、気後れ、するが、気にせず、
頼むことにする。

まぐろ、いか、小肌。
まとめて、三種。

まぐろ。


赤身。
冷凍かも知れぬが、なかなか、うまい。

やはり、ここも、二個ずつ。
そして、美家古のもはや、アイデンティティーだろう、
酢飯が大きい。

いかと、小肌。


小肌は、浅草橋店や、昨日の一心とは切り方が違うが、
包丁目は入っている。

味は。
普通にうまい。

次は、
鯖と鰯。


鰯は、浅草橋店で食べたものに、似ている。
これも、軽く〆ているよう。

穴子。


これは、びっくり。
柔らかく煮てあり、とろけるようで、うまい。

昨日の一心でも食べたが、
こんなものまであるのか、と、
あわび、塩むし。

「甘いたれ、ツメ、つけますか?」と、聞かれ、
お願いします、と答えた。


うまい、のだが、
たれをつけた、せいもあろう、
随分と甘い。
(もともと甘いのだろうか?)

あれ。
と、はたと気が付いた。
鮨やで、あわび、というのは、なん度も食べているが、
実際のところ、煮ているのか、蒸しているのか、
それぞれどういう味なのか、昨日も書いたが、
あまり意識していなかった。
(蒸す、と、いっても、つゆに入れて、蒸すのであろうし、、。)

つまり、どういう仕方で、どういう味付けで、
口に入る時に、どういう味になるのかを、
意識してこなかった。
(鶏皮を入れる、とも、聞いていたりするが、
それも、蒸すんだっけ、煮るんだっけ、、そういえば、
自信がない。
塩むしと、いっている、美家古系の仕事と、
私の知っている太助、松波(これは似た方向かもしれない。)
に分かれるのか?)
結局、わからない、ので、宿題にさせていただこう。

ともあれ。
今日の、美家古鮨立喰と、昨日の一心の塩むしは、
同じ系列であるし、まあ、同じ方向、なのであろう。
(今度、ここで、たれをつけないで食べてみよう。)

さて。
最後に、たこ。


ふむふむ。
なかなか、うまいぞ。

なぜ、たこを頼んだのか。

これも『神田鶴八鮨ばなし』が出所(でどころ)、で、ある。
この親方が書かれているのは、たこ、と、いうのは、
生で買い、本来、鮨やで茹でていた。
あがった産地で茹でたものもむろん売っている
(むしろ、今はそちらの方が多いのか)。
しかし、やはり、自分で茹でたい、と。

鮨やのたこには、煮だこ、と茹でだこが、ある。
例えば、昨日の、一心、のものは、煮だこ。
桜煮、と、いってもよいのだろう。
これは、自分でもやってみている。

桜“煮”といっているが、実際には、蒸す。
ポイントは、番茶で霜降りをする。
香りと、ホロッと、した食感が、うまい、のである。
茹でだこでも番茶を入れる、というやり方もあるらしい。

鮨やのたこ、というのは、子供の頃から、
確かに、あまりうまい、と、思ったことはなかった。
それが、ちゃんとした仕事をしている
(東京のそこそこ以上の)鮨やで食べて、うまいもの
で、あることが、わかってきた。

また、これは、海老、も、同様である。
茹でた、サイマキ海老(にぎり鮨に使う小さめの車海老)
は、松波、一新、先日の新橋しみづ、などでは
出す時間を見計らって、茹でてにぎる。
よく、出前の鮨に入っているが、茹で冷(ざ)まし、
あるいは、既に茹でたものを買ってきたもの(?)
では、まるっきり味が違う。
(ご経験があろうが、ひどいものは、パサパサ。)

ともあれ。
そんなことで、たこも、頼んでみた。 

煮だこではなく、茹でだこではあろう。
写真を見てもおわかりになるかも知れぬが、
みずみずしい。
なかなか、うまいたこ、で、ある。

八種、十六個、こんなところで、お勘定。

1800円(で、あったか、
1300円であったか、、、
よく覚えていない、のである。)

ともあれ。
ご主人の、ありがとうございます、
の声に送られて出る。

食べている間に、常連らしい人が、お昼に
数人入ってきていた。

近くの商店に勤めているらしき男性。
そして、話を聞いていると、毎週、土曜日のお昼に
きている、という老夫婦。
(総武線でこられているらしく、風雨で電車が止まったので、
今週はこれないかなぁ〜などと、男性とご主人で話していた。)

そんな雰囲気。

さて、東京で、鮨やといえば、先日、ベスター先生の
『築地』でもみたように、日本中、世界中から、
最上の魚を集めている。
(昨日の、一心も安くはないが、それ以上の鮨やも
松波、すきやばし次郎、水谷、、むろん、ある。)

一方、東京に昔からある、立喰い鮨、格安鮨。
高価な魚はむろん、置いていない。
鮨やの発祥が、屋台であったことを考えると、
伝統の業態なのかもしれない。
(そういう意味では、柳橋美家古鮨、としても、
創業の業態、で、あろう。)

比較対象とすれば、回っている寿司屋、
で、あろう。

どちらがよいか、どちらが好きか。
むろん人それぞれの好みであるが、
私は、チェーンの立喰いそばよりは、
個人営業の路麺を贔屓にするのと同様、
今日の、美家古鮨の立喰、の、ような店を
よしとする。
(正直のところ、回転寿司には、ここなん年も入ったことがない。
むろん過去に入ったことは、ないわけではない。
あるいは、最近東京にできている、チェーンの立喰いも
回転寿司と同様、で、ある。)

なにが違うのか。
むろんそれぞれ、回転でも立喰いでも、
店によっても違うだろうし、一長一短、で、あろう。

しかし、どうしたって、個人営業の立喰い鮨は、
一つ一つのにぎりへの、心のこもり方が、違う、のである。
それが取りも直さず、お客としての満足度の違いになる、
と、思うのである。




TEL:03-3861-4481
住所:〒111-0053 東京都台東区浅草橋1丁目17−1



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