断腸亭料理日記2009

駒形・どぜう

10月22日(木)夜

さて。

皆さんは、千住ねぎ、というものをご存知であろうか。

江戸の頃から東京近郊で栽培されていた、野菜は
いろいろあるのだが、今でも名前が残り、実際に生産されているものは、
小松川の菜っ葉である、小松菜、あるいは、多摩で作られている、
白いうど、くらいかもしれぬ。
この他、今はその地では作られていない、
亀戸大根、練馬大根、滝野川ごぼう、あるいは谷中生姜、
など地名の入った野菜は、いくつもある。

なかで、千住ねぎ。

これも名前としては、残っており、北千住には、千住市場のそばに、
千住ねぎ専用の市場があり、品物が集められ、取引がされている。
しかし、北千住、あるいは、足立区で今、千住ねぎは
ほとんど作られてはいないのであろう。
ここに集められて、売られる千住ねぎ(市場のブランドとしては
“千寿葱”)は、埼玉方面で、作られているものらしい。

と、いったことは、よくマスコミでも取り上げられているので、
皆さんもご存知かもしれない。

会社の隣の部署の者から、千住ねぎが食えるところを
教えてくれないか、というお題をもらった。
そこのボスが好きで、食べたい、ということらしい。

千住ねぎというのは、私も過去に意識して食べたことがある。

浅草界隈には、千住ねぎ、を使ってます、という
店、が、まま、ある。
少し前の話しなので、今もメニューあるかはわからないが、
国際通り、西浅草の中華料理店、龍圓という店で
まこも茸と炒めたものを食べたことがあった。

実際に、メニューなどに、千住ねぎ、をうたって、
出していないところでも、東京のそばや、焼鳥や、などに
千住ねぎは出回っているらしいので、おそらく、
他にもどこかで食べたことはあるのだろう。

千住ねぎが、普通に出回っている、長ねぎ(根深ねぎ)と、
どのくらい違うものなのかは、実際に並べて食べ比べたことがある
わけではないので、よくはわからぬが、
ブランドをつけて売っているくらいであるから、
同じ長ねぎでも、吟味をして栽培され、選ばれたもの、
なのではあろう。

少し調べると、メニューにうたっているところも、
知っているところ以外にも、多少は見つかったのだが、
この千住ねぎを食わせるところを探してくれ、
というお題で、思い付いたのが、駒形のどぜう、で、あった。

08年


09年

どぜうの丸鍋には、ねぎは欠かせない。
木箱などに入って、しこたま出てくる。
駒形は、千住ねぎを使っている、と、
どこかに書いてあったような気がしたのである。

で、さっそく、会社帰りに寄ってみることにした。
(実際には、千住ねぎ、の、こともあるが、
駒形どぜうを思い出し、食いたくなったから、
というのが、本当のところではある。
お、そういえば、昨日は、うなぎであった。)

大江戸線をいつもは、新御徒町が最寄だが、一つ先の
蔵前で下車。

地上に出て、蔵前通りを北へ歩き、バンダイのビルの
隣が、駒形どぜう。

着いたのは、8時過ぎ。
(ここは9時まで、で、ある。)

土日は、はとバスのお客さんで列をなすが、
ウイークデーのこの時間は、まあ、すいたもの。
一番奥の壁際の板に案内される。

(ここは、大広間の入れ込みの座敷で、お膳やテーブルはなく、
畳の上に、桜の長い板が奥から順々に並べられ、その上に、
小さな焜炉(こんろ)を置いて、鍋からそのまま食べる。)

ビールをもらって、迷わず、丸鍋。
ここでは、これしかなかろう。

丸鍋、というのは、あらかじめ下拵えされた
丸のままのどぜうを、平らな小鍋にきれいに並べ、
からめのつゆが張られているもの。

開いたもの、あるいは、ごぼうとの玉子とじ、
ご存知、柳川、などもあるが、やっぱり、丸鍋がうまい。



丸鍋が運ばれ、焜炉の上に置かれる。
ここで、ねぎをしこたま、上にのせる。

どぜうには、火は通っているので、
温まれば、食べられる。


で、今日の、お題のねぎ、で、ある。
ねぎは、そばの薬味のように、木口切りに
薄く切られているので、これもすぐに煮える。

どぜうもうまいが、ねぎもうまい。

今日は、いつも出てくる木箱ではなく、
皿に盛られて出てきた。
これを、煮えたら足し、煮えたら足し、
煮詰まってきたら、つゆも足し、
どぜうとともに、どんどん食べる。

ねぎ自体は、太めのもののようではあるが、
普通の長ねぎで、特段変わったねぎではない。

丸鍋は一枚では、足らない。
もう一枚、追加。

ねぎも、どぜうも、どんどん、食べる。

丸鍋二枚。
ねぎは、一皿、どのくらいあったのだろうか。
3〜4本ではないだろう、5〜6本はあったのかもしれぬ。
全部食べてしまった。

で、ここのねぎは、千住ねぎだったのか?

メニューにも、店のどこにも(ホームページにも)
書いていない。

私の記憶違いであったか、、。

勘定をし、出る。

千住ねぎ、は、ともかく、ねぎも、どぜうも、うまかった。

元浅草まで、ぶらぶら歩いて、帰宅。

昔、お金のない若い噺家などは、ねぎはただなので、
一つの鍋だけ頼み、ねぎばかり食べていた、
というような話しも残っている。

今日は、家に帰ると、内儀(かみ)さんに、
ねぎクサイ、と、いわれた。
なるほど、自分でもわかるほど、スーツからなにから、
身体中からねぎのにおいが、発散されていた。

しかし、推薦できる、千住ねぎの食える店。
お題は依然として、解決できていない。





駒形どぜう





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