断腸亭料理日記2009

生ハムのパスタ

9月5日(土)夜

さて。

今週末は、家で、仕事。

9月というのは、半期の終わり。

弊社では、いろいろなものを半期で〆る。
弊社に限らず、どこでも、そうかもしれない。

今期どうであったか、これからどうしていくのか。
それらを総括する。

「じゃ、来週まで!」
と上司にいわれ。
「はい、じゃあ、土日に考えます。」

ということで、今週末は、いつもの魚やへもいかず、
家にこもって、パソコンに向かう。

朝からやって、第一食は、飯を炊いて、
この前書いた、ラフティー丼。

第二食は、そのへんにあった、カップヌードル。

5時半、75%、終わった。

内儀(かみ)さんは、ずいぶん前に、
呑み会だとかで、出かけていって、いない。

朝からやって、もうだめ。
明日だ。

テレビをつける。

と、なにかわからぬが、生ハムのクリームパスタを
作っているのが、映っていた。

レシピが映って、番組はすぐに終わった。
NHK、で、ある。


あー、、、うまそうだったなぁー。

作ろうかなぁー、、。

あ、レシピ、、、。
視ただけで、読んでなかった、、。

調べてみる。

『グランド・グルメ ヨーロッパ食材紀行
「霧がはぐくむハムの王様〜イタリア」』と、いう番組だったよう。

ははー。

内容は「イタリアのロマーニャ地方は、ポー川から発生する霧が
生ハムの熟成にちょうど良い湿度を生み、高級ハムの産地として
知られる。伝統のハム作りを描きながら、ロマーニャ地方の人々の
暮らしを紹介する。」

と、いうことで、NHKのwebには、これ以上の説明や、
レシピなどもない。30分の、短編番組であったようである。

なにか、無性に、食いたくなった。

パルマ、なんという地名も、聞こえてきた。
パルマ、と、いえば、パルマ豚。
イタリアでは銘柄豚、いや、日本の、昨日今日できぼしの
銘柄豚とはわけが違うののだろう、伝統ある豚肉であろう。

それで、で、あろう。
その、パルマ豚を使った、生ハムの産地、というわけか。

そして、そのパスタ、というのが、
フェットチーネよりも、さらに平たい、幅広のフェデリーニ、
と、いうものであった。

平たいのは、クリームがからみやすい、ということ。

関係ありそうな、レシピも探してみる。
生ハムのクリーム、というのは、やっぱり、
ある、ようである。

また、番組のレシピで、かろうじて憶えているのが、
パルミジェーノ・レッジャー。

イタリアンでは多用する。

ついでに、パルミジャーノも調べてみた。

と、驚いた。
パルミジェーノ・レッジャーノも、パルマが
原産らしい。パルミジャーノ、は、パルマの、
ということであろうか。

ここまで調べて、DOPというキーワードが出てきた。

ウィキペディアによれば

「デノミナツィオーネ・ディ・オリージネ・プロテッタ
(イタリア語:Denominazione di Origine Protetta)は、
イタリアにおける原産地名称保護制度。 DOP、D.O.P.と
略表記される(ディ・オ・ピーと読まれる)。
イタリアワイン、チーズなどの伝統的食材に対し、
品質管理と産品保護のため地域を指定した上、基準をみたすものにのみ
特定原産地の名称を付して販売することを許可する制度。」

ということらしい。

パルミジャーノ・レッジャーノも、このエミリア・ロマーニャ地方で
作られて、認証を受けたものしか、名乗れない、と、いう。

シャンパンが、フランスのシャンパーニュ地方で作られたものしか
名乗れず、その他はスパークリングワイン、というのと、同じであろう。

さすがにヨーロッパ、で、ある。
前にも書いたが、自分達の地域とそこに根付いてきた生活、食文化を
アイデンティティーとして、とても大切にしている、と、いうこと。

まったくもって、我々日本人も、この根本の思想から、
学ばなければ、ならなかろう。

またまた、余談になるが、書かせていただきたい。

食、というのは、その地域の土壌、気候、海、山、その他、
様々なものと密接に関わってでき上がっている。
(特に、野菜などは、同じ種でも、植える土を変えるだけで、
違ったものが育つ、ということは、よくいわれている。)

最近、京都の京野菜なども、京都以外で採れたものは
京野菜とは名乗れない、というのを徹底してきているのは、
聞いたことがある。

これは、単なる、採(獲)れた地域を指示す、あるいは、
マーケティング上の商標として名前、の、問題ではない。

伝統的なその地域に根差した食文化、生活文化が存在し、
それを大切にしたいというその地域に住む人々の気持ち、
考えがあり、その象徴として、名前を冠する、という
ステータス、資格を得る、ということであろう。
これがなくては、単なる売らんかなの、名前だけでは、
なんの意味もない。

つまり、我々は、我々の先祖から受け継いだ
生活文化がそもそもあるのか、そして、
それらををどれだけ大切にしているのか、
ということに、考えを巡らせなければならないと
思うのである。

京都は京都でよいのだが、私などは、やっぱり、
東京はどうなのか、と、思ってしまう。
(え?東京にそんなのあるんですか?と、いう人も
悲しいかな、少なくなかろう。)

江戸生まれの世界に冠たる、鮨の文化。
これはよいであろう。

しかし、そのたね、で、ある、江戸前の魚。
東京湾もだいぶ回復はしているようで、
穴子や鱸(すずき)、あるいは、バカガイ(青柳、小柱)、
あさりなどはまだある程度、獲れているものもあるようだ。
しかし、水中写真家の中村征夫さんが追いかけておられる、
東京湾のすみいか。あるいは、小肌?、赤貝、蝦蛄、蛤、などなど、
希少、さらには、まったく獲れなくなってしまったものも、
少なくなかろう。

あるいは、野菜。
毎度書いているが、小松川の菜っ葉こと、小松菜。
今の小松川には作る畑はないが、葛飾の水元などでは、
まだまだ作られている。

もっとも、関東ローム層、赤土で栄養分が少ない江戸近郊の
土で育つ、野菜の味は京阪神には及ばず、その代わり、野田、銚子など
利根川などの水運の発達で生まれた、濃口しょうゆ。
これも世界に冠たるブランドになっているが、キッコーマンの
しょうゆ。皆さん、そうは思われていないかもしれぬが、
この濃口しょうゆも、江戸東京の大切なアイデンティティーともいえる、
食文化の主役である。

昨日の尾花ではないが、うなぎの蒲焼もそうだし、
甘辛の濃い天つゆで食べる、天ぷら、天丼も然り。
みな、大切な我々東京の食文化で、ある。

しょうゆにしても、鮨にしても、こういったものは、
とてもわかりやすい例だが、それゆえ、あたり前すぎて、
興味すらいかない人々も多かろうが、
我々は、これらを江戸東京の食のアイデンティティーとして、
もっと誇りを持ち、大切にしてしかるべきではなかろうか、
と、思うのである。

東京都議会は、築地の豊洲移転を議論するのもよいのだが、
江戸東京の伝統食文化をどう考えるのか、
あるいは、江戸前の魚をどう考えるのか。
(東京湾も今となっては、東京都だけでも完結しなかろうが。)
むろん都議会だけでなく、
我々都民がもっと考えるべきではなかろうか。

やっぱり、東京都で、尾花を無形遺産に指定すべきではなかろうか。
むろん、これは、象徴的なことだが。
フランスのサルコジ大統領が、フランス料理を世界遺産に、と、
いっているとも聞く。あまりにも、不遜で、いかにもフランス人らしい
と、思われるが、それだけの確固たる誇りを持っている、
のである。

また、誇りを持つ、ということは、私はなにも、昔のままを
守ろう、といっているのではない。鮨だって、グローバル時代に
合わせて変わっていってよいだろう。
しかし、発祥の街として、鮨とはなんたるか、に関して
確固たる考えを持ち、その行く末に責任を持つ、ことも
誇りを持つ者の役割であり、矜持(きょうじ)、と
いうものだと思う。

イタリアのDOP制度というようなものを聞くと、
日本、東京のあり様を振り返り、いつものことだが、
考えさせられることが多い。

ともあれ。

そうとうに、話が飛んでしまった。

生ハムのクリームパスタであった。

で、もう一つだけ。
その生ハム、パルミジャーノ・レッジャーノの産地、パルマのある
エミリア・ロマーニャ州といえば、ボローニャという都市。
この州の州都は、ボローニャであるようだ。
ボローニャといえば、日本ではミートソースといわれている、
ボローニャソースの故郷。
やはり、この地域は、イタリアンでも、肉、なのであろう。
うまそうである。

なにか、この地方、いってみたくなるではないか。

そんなこんな。買い物に出る。

生ハム。
これは、ハナマサにあった。
それから、幅広パスタの、フェデリーニ。
これは、百貨店か、合羽橋(プロパック)か、
と、思ったが、ハナマサに、生のフェットチーネがあった。
フェデリーニではないが、これで御の字、で、あろう。
それから、生クリーム。
これは、できるだけ、脂肪分が多いのものが、
うまいであろう。
これもハナマサにある。
パルミジャーノ・レッジャーノもある。

結局、全部ハナマサで済んだ。

いくつかのレシピを参考にし、作る。

生パスタは、500gあるが、
一人前、100g、量る。

茹で時間は早そうなので、湯だけ先に沸かしておく。

ソース。

フライパンに、バター。
ここに、にんにく、一かけら、スライスを炒める。

ここに、ブランデーを入れてみる。
これはどこにも書いていなかったが、
思い付いてやってみた。

フランベして、飛ばし、
生クリーム。
黒胡椒を挽き入れる。

このあたりで、パスタを茹で始める。

パルミジャーノ・レッジャーノは包丁で、薄く削り、
入れる。

加熱すると、チーズは溶け、そうとうな
とろみ、に、なる。
パスタの茹で汁を、少し、入れてみる。

と、パスタの茹で具合をみると、だいぶよいようだ。

ソースに生ハムを加え、軽く和え、
パスタをあげ、湯を切って、フライパンに。

火は弱火で、和える。

味見。

どこかに書いてあったが、生ハムは塩気が強いので、
注意が必要とあったが、なるほど、そうである。
バター、パルメジャーノと、塩分は入っているので、
塩は入れずによさそう。

胡椒だけ、追加し、
仕上げにもう一度、薄く切った
パルメジャーノを1〜2かけら。

OK。

盛り付け。


よくよく考えると、そうとうなカロリー、
で、あるが、うまいものができたぞ。

結局、生ハムはほとんど、生、で、和えただけ。
「生」がうまく、料理するもの、ではないのだろう。

ちゃんとした材料を使うと、
簡単だが、そうとうにうまいものができる。

そうである。
これならば、さらに贅沢だが、ソースにポルチーニ
を入れたら、べら棒に、うまそう、で、ある。










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